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Windows Info 第40回

Windows 8のネットワーク自動接続機能の仕組みを詳しく見る

2015年01月22日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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優先度によるネットワークの決定

 WCMは、以下の優先度で接続先ネットワークを決定する。

1. 有線LAN
2. ユーザーが手動で指定したネットワーク
3. インターネットとドメインネットワークの接続可能なネットワーク(ドメイン運用時)
4. 現在接続している無線LANネットワークの信号強度
5. 優先ネットワークリストの順位

 有線LANでネットワーク接続が可能な場合には必ず有線LANが選ばれる。有線LANがない場合、ユーザーがアクセスポイントを指定して接続したような場合には、それが選択される。ドメイン運用している場合には、インターネットとドメインコントローラーに接続可能なネットワークが選択される。

 次に考慮されるのは、現在接続している無線LANネットワークの信号強度だ。十分な信号強度があるなら、そのネットワークに接続し続けるが、信号強度が低い場合や無線LANネットワークに接続していない場合には、「優先ネットワークリスト」からネットワークが選択される。

 優先ネットワークリストは、過去に接続した無線LANやモバイルブロードバンドのプロファイルを記録したものだ。Windows 7では、この「優先ネットワークリスト」を手動で編集することができたが、Windows 8からは編集のためのGUIは廃止され、Windowsが自動的に優先ネットワークリストを変更するようになった。

 優先ネットワークリストは、以下のように作られていく。

1. 新しい無線LANのプロファイル(接続先。アクセスポイント)が作られると優先ネットワークリストの先頭に置かれる
2. 新しいモバイルブロードバンドネットワークに接続すると、優先ネットワークリストの一番最後に置かれる
3. ユーザーが手動で「接続」を指定した無線LANのアクセスポイントは優先ネットワークリストの先頭に置かれる
4. ユーザーが手動で「切断」を指定した無線LANのアクセスポイントは、優先ネットワークリストで低い優先順位に置かれる

 WindowsのGUIでは、ユーザーが新しく登録した無線LANネットワーク(アクセスポイント)にすぐに接続を開始し、手動で接続を指定したのと同じことになるため、新規登録の無線LANネットワークは優先ネットワークリストの先頭に置かれる。

 既存の無線LANネットワークのうち、ユーザーが手動で接続したものも同様にリストの先頭に来る。モバイルブロードバンドネットワークは、Windows 8からはWCMが自動接続ができるようになったが、優先度としては低く、新規登録時にはリストの最後に置かれる。また、手動で接続を指定しても、優先ネットワークリストの中では位置が動かない。このため、基本的にはモバイルブロードバンドは、常に優先ネットワークリストの中の最も低い優先順位に留まる。

 ユーザーが切断を指定したネットワークは、優先ネットワークリストでは、低い優先順位に置かれるが、優先ネットワークリストからは削除されない。しかし、ユーザーが削除(接続情報の削除)を行うと、自動接続ができなくなるため、優先ネットワークリストからは外れる。

 また、無線LANのプロファイルには、自動スキャンの有無を設定できる。これは、接続中により条件のよい(信号強度の強い)ネットワークに対して接続を変更するかどうかの指定だ。これは、接続中に「ワイヤレスのプロパティ」で設定できる。これを使うと、無線LANで接続中に、他の接続可能な信号強度の強いネットワークが存在した場合、切り替えが行われる。

「コントロールパネル」→「ネットワークと共有センター」→「アダプタ設定の変更」で無線LANインターフェースを選択し、これを開くとインターフェースの「状態」ダイアログ(画面左)が開き、ここから「ワイヤレスのプロパティ」を開く。ここに「このネットワークが接続した状態で別のワイヤレスネットワークを探す」という項目があり、オンにすると接続中でも他の接続可能な信号強度の強いネットワークを探す

 なお、モバイルブロードバンドネットワークに対して、事業者が優先順位などを指定した「メタデータ」を配布することがある。これは、事業者が配布しているプロファイル、ドライバなどと共にインストールされ、モバイルブロードバンドネットワークや事業者が運営する公衆無線LANサービスなどのプロファイルの優先順位を指定することがある。このような場合、特定の無線LANネットワークなどが優先ネットワークリストの上位に置かれることがありえる。

Windows Connection Managerの動作の実際

 システム起動直後のネットワークの選択などではWCMがネットワークを指定するが、有線LANや前回接続していた無線LANアクセスポイントが優先度が高くなるため、ユーザーにとってそれほど不自然な接続にはならない。単純に電源オフの前に復帰したように見える。

 しかし、利用中にネットワークが切り替わったとき、たとえば、イーサーネットケーブルの接続、取り外しがあった場合、WCMが新しいネットワークへの切り替えを行うが、それまで接続していたネットワークの切断がなされない場合もあるようだ。

 特に無線LANやモバイルブロードバンドを利用していて、そこに有線LAN(イーサーネット)を接続した場合、WCMの動作としては、無線LANやモバイルブロードバンドはソフト切断を経て切断状態になるはずだが、実際のところ、イーサーネットを接続したとき、無線LANやモバイルブロードバンドは、通信量は減るものの、切断状態にならないことがある。

無線LAN(点線)で接続したあと、有線LAN(実線)を接続したときのパフォーマンスモニタによる転送量のグラフ。有線LANに転送のほとんどが切り替わっても、一部の通信は無線LANに残ったままになっている。グラフの折れ線が範囲内に収まるようにスケールは個別に設定してある

 このとき、netstatコマンドなどで通信の様子を見ると、ネットワークが切り替わったにもかかわらず、新しいネットワークに切り替えを行わず、最初に得たIPアドレスのまま通信を続けるアプリがあるようだ。Skype.exeやLiveComm.exeなどのMicrosoftの関連アプリケーションでも、無線LANから有線LANに切り替わったあとでも、無線LANのときに得たIPアドレスで通信を続ける。ただし、これは、有線LANにも無線LANに接続可能な状態が続く自宅やオフィスのような環境での動作であり特に実害はないだろう。

 注意すべきは、モバイルブロードバンドのほうだ。手元にある機材でためしてみたところ、標準状態では、「切断」状態から自動接続するようなことはなく、逆に一回接続状態とすると、イーサーネットなどに切り替わったあと「切断」状態に移行するようなことはなかった。イーサーネットに切り替わったあと2日間放置してみたが、わずかな量のパケットが送信されていた。

 Windows 8になり、Windows 7にあった無線LANネットワークの優先付けの機能がなくなったが、実際のところWCMはうまく動作しており、基本的には特に設定を行なう必要もない。Windows 8で無線LANの接続先優先順位指定がなくなったのは、このGUIを使わないユーザーが大多数だったからだという。

 ただ、残念なことに、BluetoothやUSB接続などがまだ未対応であること、モバイルブロードバンドに対して手動によるオン/オフが必要なことを考えるとまだ改良の余地はあると言える。

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