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デジタルマーケティング、2014年の新潮流

2014年11月04日 11時00分更新

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 今年を振り返ってみると、

  • ブランド・商品のコミュニケーションの在り方を変えなきゃいけない
  • 5年先、10年先を見据え生活者に選ばれる商品・ブランドとして残っていけるのか

こうした課題に向き合う企業が増えつつある。成熟したマーケットにおいてこれからに向けた生き残りをかけた戦いが始まっているのである。

 マーケティング施策を展開していく上で、すでにデジタルは必要不可欠になっている。環境変化でデジタルにあまり積極的でなかった企業が、デジタルを活用して積極的な顧客開拓をするようになってきた。

コードアワード受賞作品から見る「再ブランディング」

 「コードアワード 2014」の受賞作品の傾向を見ると、企業のデジタルを活用した「再ブランディング」とも捉えられる取組みが目立ち始めている。

●エバラ食品工業

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グランプリ「おくちの中の遊園地」

●雪印メグミルク

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ベスト・ブランディング「オレたちのゆきこたんプロジェクト」

●Z会

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グッド・ブランディング「超難問コロシアム[Z1]」

 これらのケースは生活者の心の中にどのように印象付け、その人の心の中にいかにあり続けるかが重要なのだ。

 エバラ食品はロングセラー商品である「浅漬けのもと」への認知が低い若年層の主婦に狙いを定めた。彼女らが直面する「子供に野菜をもっと食べさせたい」という共通の悩みをフックに、子供たちに野菜を食べるきっかけづくりを目論み、親目線に立ったインサイトをうまくコミュニケーションに置き換えた。そして、ターゲットの若年層の母親たちに、「浅漬けにすると、楽しく子供が野菜を食べてくれる」という成功体験を通じて、企業としての思いやりを伝え、好感を持たせるのに成功したのだ。

 エバラ食品のように、情緒的感情を喚起することで、将来購入の選択肢に常に残り続けられる。また、そのようなパーソナルで情緒的なリアル体験(私の子供が野菜を食べられるようになった、という感動)はソーシャルで拡散されやすい。そこで新たな顧客を創出する。

マーケティングの新潮流

 情緒的価値をデジタルでどのようにアプローチしていくのかという点では、アドテック東京2014で「モーメント」「リアルタイムマーケティング」というキーワードがトレンドになっていた。以下の記事が参考になるだろう。

 マーケティングの新潮流を一言でいうと、生活者にとって最適なタイミングでコミュニケーションを取るということだ。

 例えば、花王は梅雨入りのまさにその日に梅雨対策のできる動画広告を配信し、県別に広告メッセージを生活者に送る。梅雨の時期を意識し始めた生活者において抜群の効果を出すことに成功した。

 アドテクの進化によって、性・年齢・場所・時間などがコントロール可能になり、効果的なコミュニケーションが実現できるようになった。また、モーメントを意識したコミュニケーションのためには、24時間、30cm以内にあるスマートフォン用のコンテンツは重要なコンタクトポイントと考えていくべきだろう。今までのようなPCを軸としたオウンドメディア構築からスマートフォンにオウンドメディアの軸を変えていく必要がある。軸を変えるのであれば、今までのようなコンテンツ構成やページ数が本当に必要なのか、生活者からブランドサイトに求められることは何なのか根底から考え直さなければならない

 オウンドメディアが変化していくことで、トリプルメディアの活用もより柔軟に変化していくことを求められるようになる。質の高い潜在顧客を獲得できそうなメディアに対して、モーメントを意識した良質なコンテンツアプローチをしていくことで、アーンドメディア・ペイドメディアをオウンド化していく。その時、リアル体験やモーメントによる情緒的感情を創出することで情報拡散を促し、自分に必要な商品・ブランドである空気感を醸成していく。

 これらの施策を数値で把握しながらPDCAを回し、短期的成果と中長期顧客育成の同時並行で精度を上げていく。その積み重ねが、5年10年先も選ばれる商品・ブランドになっていく。

 今回のコラムを通じて、ますますマーケティングが難しくなるなぁと思いつつ、短期成果と中長期成果、インプットとアウトプットを全て両立させなくてはならない。なんだか、中長期を見据えて蓄えるアリと、今を楽しく生きるキリギリス(その時に最適化)が一緒になった感じである。だが、これらを同時並行できることこそが、まさにデジタルマーケティングの醍醐味なのであろう。

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