このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

日本のITと農業がタッグを組めば、TPPは怖くない!

IT農業の推進者が語る「本質はセンサーとカメラじゃない!」

2014年09月24日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

9月6日に仙台で開催されたJAWS FESTA Tohoku 2014において、農業×ITというテーマで講演したのが、アグリフューチャー 代表取締役の女川源(おながわはじめ)氏だ。自身が農家でもある女川氏は、ユニークな語り口調で農業の現状とITのミスマッチについて講演した。

震災で復活するより多くの耕作地が捨てられる

 女川氏は、震災前にIT企業から農家になったという経歴の持ち主で、震災後に有限会社アグリフューチャーを設立。コミュニティやメーカーと共に、安価な農業用システムの開発やセンサーデータの活用など、自らIT農業を推進している。

アグリフューチャー 代表取締役の女川源氏

 昨年の日経ビジネスでは「農業とITの『通訳者』」と紹介されており、トレードマークのテンガロンハットをかぶり、さまざまなイベントで登壇している。「農家のコミュニティに入る時、テンガロンハットの人として印象が付けられたので、すんなり入っていけた」(女川氏)。今回はIT系の強いJAWS Festa Tohokuということで、農家から見た農業生産法人の課題と、それに対応するシステムをいかに売っていけばよいかを講演した。

 講演の冒頭、女川氏は農業の現状を示すいくつかの数字を披露する。たとえば、1965年(昭和40年)に73%だった食糧自給率は2011年(平成23年)に39%に低下し、日本の就農者の平均年齢(2010年)は66.1歳に達した。「毎年リタイヤする人が9万人くらいいるので、平均年齢は毎年1年ずつ増えていく」(女川氏)とのことで、もうすぐ70歳になる。

低下の一途をたどる食糧自給率と就農者の平均年齢

 全国の耕作地も1950年に609万ヘクタールだった全国の耕作地も、2010年には450万ヘクタールに減少し、不耕作地は39万6000ヘクタールに上る。震災に関していうと、1年で8280ヘクタールが耕作地としてよみがえったにもかかわらず、全国では1万2000ヘクタールが不耕作地化される。「みなさんの税金でせっせと農地を復活させる一方で、それよりはるか多くの農地が捨てられている。これが現状」と女川氏は指摘する。本来は震災でなくした農地を復活させるのではなく、不耕作地化した複数の土地をまとめて、再利用した方が安価で効率的だが、農業にはそのためのシステムがないため難しいという。

不耕作地化の方が大きな問題

農業生産法人の増加で変わる農業とその課題

 一方で、農家の高齢化が進み、農地が減っているにもかかわらず、生産量はそれほど落ちていないというファクトもある。これは個人の農家が減って、農業生産法人が増えているからだ。「宮城県の場合、農業生産品の6~7割を3%の農業生産法人が担っている。事業の多角化を進めているため、売上も上がっている」(女川氏)。単に農作物を育てるだけではなく、加工や製造、直営店、飲食店の運営、仕入れ販売などを展開しているのだ。そのため、「農業のITというと、センサーで温度や湿度をとったり、Webカメラで映像を見たりというところに目がいきがちだが、求められているのはそこではないかもしれない。多角化しているところは、むしろレストラン経営のシステムが欲しいはずだ」と女川氏は指摘する。

農業法人は事業の多角化を進めている

 農家と一蓮托生だったJAとの関係も変わってきており、農業生産法人にとっては、あくまで取引先の1つとなりつつある。資金の借り入れも、日本政策公庫に依存度が移ってきており、農業生産法人のJA離れが顕著になっているのが現状。しかし、JAを介さない市場内流通は流通・小売り業者との契約をベースにするため、「今日とれなかったから明日はホウレンソウありませんということは、ありえない。だから生産管理が必要になるんです」と女川氏は語る。

 女川氏によると、農業生産法人も課題が山積しているという。そもそも農業生産法人は、家族労働で進めてきた農家が経営規模の拡大と共に集約してできることが多いため、家族労働の延長でしかコストを考えていない。原価管理や減価償却の概念がないため、「規模が10倍になって、売上が10倍になって、支出も10倍になって、赤字も10倍に拡大する」(女川氏)。

事業の拡大で顕在化してきた農業法人の課題

 また、効率性を高めたり、組織体制の強化や新技術を導入するような人材も不足しており、経営規模にあわせた設備投資も難しい。「ベンツと同じくらいの値段のコンバインも、1年で1ヶ月半だけしか使われない。田植機に至っては1ヶ月も使わない。でも春先の田植え時期をずらせないので、買わなければならない」と女川氏は嘆く。

(次ページ、農業×ITは必ずしもセンサーやカメラではない)


 

前へ 1 2 次へ

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

ピックアップ