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イーロン・マスク:テスラを導いた天才経営者の過去

2014年09月09日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 Forbesによれば、個人資産は2014年7月時点で110億ドルにのぼる。

 8日、電気自動車会社テスラモーターズ共同創業者のイーロン・マスクCEO(マスク)が来日。日本初上陸となるセダンタイプの乗用車「テスラ モデルS」について、「バッテリーはすべて日本製だ」といい、日本市場だけでなく日本企業がいかに重要かを語った(週アスPLUS)。

 例えばパートナー企業のパナソニックは同社にバッテリー技術を提供するだけではない。テスラがネバダ州に建設を予定している巨大リチウムイオンバッテリー工場「ギガファクトリー」建設計画で総投資額40〜50億ドルの3〜4割を拠出する「素晴らしい企業」(マスク)だ。

 トヨタについては日本における大口の株主で、「素晴らしい関係を築いてきた」と話す。「トヨタから学べるものは学びつくしたのでは」という質問には「今後2〜3年で、大型の共同プロジェクトが出てきてもおかしくない。まだまだトヨタからは学びたいことがある」と応じた。

 また、テスラは所有する特許をオープン化しているが、理由について「電気自動車市場の発展に貢献したいため」と説明する。「結局、誰が特許をとるかという争いは誰が優秀な弁護士を抱えているかに落ち着くものだ。そういうところでイノベーションのスピードをゆるめたくはない」


南アフリカ生まれの天才

 イノベーションの申し子と言うべきマスクは1971年、南アフリカ生まれ。エンジニアの父、栄養学者の母を持つ。ペンシルバニア大学で経済学と物理学の学士号を取得後、スタンフォード大学に入ったが、わずか2日でドロップアウトした。

 マスクの起業家人生が始まったのはここからだ。

 初めに立ち上げたZip2 Corporationは、ニューヨークタイムズやシカゴ・トリビューンを顧客に抱えるオンラインニュース企業。投資家から360万ドルの資金を獲得して成長させ、コンパック社に3億ドルで売却したのは、まだマスクが28歳のときだった。1999年、売却で得た資金をもとにマスクは金融サービスX.comを立ち上げる。X.comは翌年にConfinityと合併し、よく知られたPayPalへと社名を変えた。

 PayPalをeBayに15億ドルで売却したあと、イーロンはテスラモーターズへの投資を始めた。

 マスクが挑んできたのは、新聞・銀行・自動車といった、いずれも伝統的でしがらみの多い業界だ。マスクによれば「退屈」で「非効率的」な事業へのアンチとしてスタートアップを作り、成功させてきた。

 昨年には超音速列車「ハイパーループ」構想を発表。チューブ状の構造体を採用することで、カリフォルニア州で計画されている約700億ドルの高速鉄道計画が約100億ドルの低予算で実現できるという見積もりを示している。これは伝統的な鉄道業界へのアンチテーゼということだろう。

 まさに天才経営者を絵に描いたようなマスクにはファンも多い。「イーロン・マスクの野望 未来を変える天才経営者」(朝日新聞出版)といった書籍を始め、ネット上には数々の「名言集」も散見される(内容の真偽は不明だが)。

 そんな名言の1つに、彼のリーダーシップについてよく分かる言葉がある。

 「未来の私たちの進化と発展は、この地球の構造を理解した上で成り立つものだ。そんな時代に私を含め、これからのリーダーや経営者にとって必要なものとは何か。明るい未来を信じられる仕事を作ること。それこそがリーダー自身の誇りにもつながっていくのだと思う」


イーロン・マスクについてもっと知りたい

 「100%電気革命」を連れてきた男(ウェブゲーテ)

 イーロン・マスク 「21世紀の自動車王」(東洋経済ONLINE)

 起業、チーム、失敗への恐怖--PayPal、Tesla、SpaceXのイーロン・マスク氏が語る(CNET Japan)

 スペース・ベンチャー 加速する民間宇宙開発(NHKクローズアップ現代)

 テスラのイーロン・マスク、特許を全面開放する決断に込められた「信念」(THE HUFFINGTON POST)

 米国テスラCEOの元妻が語る「私は彼のβバージョンだった」(in the loop)


TEDで講演するイーロン・マスク(2013年3月19日に公開)

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