DRAMに匹敵するスピードの不揮発性メモリ
2つめの革新的テクノロジーは「ユニバーサルメモリ」だ。マコーリフ氏は、過去20年間にプロセッサやメインメモリ、ネットワークが数万倍~数百万倍の高速化を果たした一方で、ディスクの高速化は数十倍程度にとどまっており、「サーバーアーキテクチャ全体としてバランスが取れていない」と指摘する。「HDDの代わりにSSDを使っても、スピードはまだ不十分だ」(同氏)。
この課題を解決するため、HPでは次世代の不揮発性メモリ(ユニバーサルメモリ)の研究を進めている。電源を切ってもデータが消えず、容量は現在のディスクと同等で、なおかつ現在のメインメモリ(DRAM)に匹敵するアクセススピードを持つメモリだ。これが実用化されれば、サーバーやソフトウェアの設計は根本的に変わる。
マコーリフ氏は、複数の次世代メモリ技術を挙げながら、ユニバーサルメモリになりうる条件を備える技術はただ1つ、「ReRAM(Resistance RAM)しかない」と述べ、その特徴を説明した。HPでは「メモリスタ(memristor)」と呼ばれる素子を開発してReRAMの製品化を目指す一方、それを搭載する新しいサーバーアーキテクチャに適したソフトウェア設計の研究も進めている。
3つめの革新的テクノロジーは「フォトニクスとファブリック」である。
フォトニクスで実現しようとしているのは、光を用いたデータ伝送(通信)だ。これはすでに実用化されている「大陸間」「データセンター間」といったスケールではなく、「ラック内のサーバー間」「チップ間」のスケールで、電気信号(エレクトロニクス)ではなく光信号(フォトニクス)による伝送を行うという発想である。電子よりも光のほうが高速で、なおかつDWDMのような光波長多重技術を用いれば帯域幅を大幅に拡大できる。
「鍵となるのは、電気信号を光信号に効率良く変換する技術。これまでも(光ファイバ通信などで)利用されてきたが、とても高価かつ電力消費が大きい。サーバー間やチップ間の通信に適用するならば大量の電子-光変換が必要になるので、劇的にコストを下げなければならない」(マコーリフ氏)
マコーリフ氏は、今後の技術進化により「このコストを2桁ほど下げられると考えている」との見込みを示した。「そうなれば、ToRスイッチとサーバー、あるいはサーバー内部の通信に適用できる」(同氏)。シリコン上の導波路を用いたシリコンフォトニクスによって、低電力かつ広帯域のデータ伝送が可能になることをマコーリフ氏は説明した。インテルなどのパートナーと共に、サーバーラック内のインターコネクトへの適用に取り組んでいく方針だという。
こうした超高速な内部通信を実現するうえでは、数千ノード間の伝送を効率的に仲介する新たなファブリック技術の開発も必要となる。マコーリフ氏は、それはファブリックにおけるオーバーヘッドやレイテンシの少ないInfiniBandやRDMAなどの技術の発展形になると語り、HPやインテルがその研究を進めていると述べた。
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