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業界初を謳うSoftware Defined Serverの真の価値とは?

新市場への“月面開拓”を目指す「HP Moonshot」サーバー

2013年04月22日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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4月19日、日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は超高密度サーバー「HP Moonshot System」(以下、HP Moonshot)を発表した。4.3Uの筐体に45枚のカートリッジ型サーバーを搭載することで「極限の省電力/省スペース」を実現するとともに、アプリケーションに最適化された「Software Defined Server」を謳う。

第1弾カートリッジはAtomプロセッサー採用

 HP Moonshotは、2011年末にHPが発表した超高密度サーバー開発プロジェクト「HP Project Moonshot」の成果物となる初めての商用製品になる。1Uラック分に相当するサーバーがわずか4.3Uのシャーシに格納可能で、従来の1Uラックマウントサーバーに比べ、80%のスペース削減、89%の電力削減、97%のケーブル削減を実現するという。

HP Moonshot Systemの概要

 HP Moonshotは、カートリッジ型サーバー「HP ProLiant Moonshotサーバー」、4.3U筐体の「HP Moonshot 1500シャーシ」、サーバー接続用、外部ネットワーク用のスイッチモジュールから構成される。

 第1弾として登場したカートリッジ型サーバー「HP ProLiant Moonshotサーバー」は、17.8(W)×16.4(D)×2.0(H)cmというボード上にサーバーに必要なコンポーネントを集積している。CPUにはエンタープライズ向けの省電力プロセッサーであるインテル Atomプロセッサー S1260(2コア、2.0GHz、HT対応)を採用し、ボード上に1つ搭載。その他、1基のDIMMスロット、1基の2.5インチSATA HDD/SSDベイ、1GbEのネットワークを2ポート搭載する。コンポーネントのSoC(System on Chip)化の恩恵により、こうした小型化が実現可能になったという。

第1弾カートリッジはAtomプロセッサー搭載

SoC化により高密度実装が実現

 将来的には、4台のサーバーを統合したクワッドサーバーカートリッジも登場する予定。これにより、シャーシあたりの実装密度は180サーバーに拡張され、42Uラックあたりでは最大1620台のサーバーを搭載できるという。また、サーバーだけではなく、ストレージカートリッジも発表予定になっており、ローコスト優先、ブート目的、複数ストレージ活用など、さまざまな組み合わせが可能になる。

クワッドサーバーカートリッジで最大1620台/ラックへ

ストレージカートリッジも将来的に提供予定

 HP Moonshot 1500シャーシには、カートリッジ型サーバーを最大45枚収容できる。カートリッジ型サーバーは、1GbE内蔵スイッチモジュールに対して、筐体上部から取り付けることになる。もちろんラッキングしたまま、シャーシを引き出し、ホットプラグで交換することが可能だ。また、シャーシの背面には最大5個の冗長ホットプラグファン、最大の4個のホットプラグ電源モジュール、管理チップ「iLO 4」と専用ファームウェアを搭載したマネジメントモジュールを収容できる。

上からカートリッジを引き出すシャーシデザイン

「業界初のSoftware Defined Server」の意図とは?

 発表会では、日本HP 常務執行役員 エンタープライズインフラストラクチャー事業統括 杉原博茂氏が登壇し、日本HPが50周年を迎えたことに謝辞を述べた後、米HP CEOのメグ・ホイットマン氏からのビデオメッセージを披露した。ホイットマン氏は、HP Moonshotについて「今後インターネットにつながってくる200億台のデバイスを支える基盤になる製品」と紹介した。

ビデオメッセージでHP Moonshotを紹介する米HP CEO メグ・ホイットマン氏

日本HP 常務執行役員 エンタープライズインフラストラクチャー事業統括 杉原博茂氏

 杉原氏は、日本の経済再興を実現するITの課題として、エネルギー問題を挙げた。そして過去、HPが業界に先だちさまざまな革新的なサーバーを送り出してきたことを振り返り、今回のHP Moonshotを「新しい産業やサービスを生み出す次世代サーバー」とアピールした。杉原氏は50万台のサーバーの収容を考えた場合、従来のサーバーであればサッカー場20個分のスペース、30万キロワットの電力が必要になるのに対し、HP Moonshotであれば、サッカー場1.4個、3万3000キロワットの消費電力で済むという試算を披露。394億円かかる年間電気代も、HP Moonshotは43億円で済むという試算になるという。

異次元の省エネルギー、キャパシティを実現

 こうした超高密度・省エネという部分に加え、杉原氏が強調したメッセージが、「業界初のSoftware Defined Server」という点だ。HP Moonshotのカートリッジサーバーはミドルウェアやアプリケーションの要件にあわせ、複数の種類が用意される。

アプリケーションに最適化したカートリッジを開発

 たとえば、画像・音声処理をメインにするのであればDSP搭載サーバー、データ量の少ないM2Mであれば省電力CPU搭載サーバー、ゲームやコーディング用途であればGPU搭載サーバーなど、アプリケーションに最適化されたカートリッジをパートナーとともに開発できる。「アプリケーションのワークロードをいかに最適化するかを考え、シリコンパートナーといろいろなことをやっていく」(杉原氏)。パートナーもソリューションの開発期間を短縮し、従来の3倍高速に市場投入できるという。杉原氏は、これをもってHP Moonshotを「真のオープンな垂直統合型システム」であると謳う。

(次ページ、ニーズはメガサービスプロバイダーだけではない)


 

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