中国全体では
微妙な位置にあるタブレット
さて深センのタブレット市場をピンポイントで見る限り、中国のタブレットは元気そうだし、見ていて楽しい。しかし中国全体のタブレット市場を俯瞰するに、あまりタブレットは受け入れられていない。
2013年の中国のタブレット販売台数は2000万台と書いたが、一方で同年のスマートフォンの数字は3億2000万台と桁違いだ。スマートフォンに参入するPCメーカーや新興メーカーは数多くあるが、タブレットに参入するメーカーはない。大型スーパーの売り場でもアジアの他国と比べてもタブレット売場はスマートフォン売場に比べて小さい。
確かにタブレットユーザーは北京や上海ではまだ見かけるものの、地方の大都市では滅多に見かけない。その利用実態だが、調査会社からの発表はないので目視になるが、利用用途では最も多いのが動画を見る人、次に多いのがゲームで遊ぶ人だろうか。
ヒアリングでは「タブレットは大きなスマホというよりは、mp4プレーヤーのような大きなビデオプレーヤーであり、PCではないし、リプレースもされない」とは多くの中国人ユーザーの意見だ。しかも5インチ以上のファブレットが普及し、ファブレットで動画やテキストを見るという習慣が定着しつつある。
タブレットユーザーは主に20代だが、中年ユーザーや、小さな子に使わせる親子も見かける。子供・学生向けの学習コンテンツが詰まったタブレットは例外的に人気で、数千円の素のタブレットと同スペックの製品に教育コンテンツがついて、3万円前後の価格となって、それでも売れる。中高年向けのタブレットも出ているが、触らず嫌いで関心がもたれていない。とはいえ受け入れられる可能性も秘めている。
PC向けウェブサイトの文字は小さく、サイトデザインもごちゃごちゃして中高年に優しくないが、スマートフォンやタブレット向けアプリの文字は大きくて読みやすい。実際、中国人中高年にタブレットを使ってもらったら好評だ。
中国人は親孝行な人が多く、老いた両親のために中国版簡単ケータイを買ってあげた人が多くいた。中高年の間でニュースをタブレットで読むということがメジャーになれば、それがタブレット普及のきっかけのひとつとなろう。
シャオミの新しいタブレットが
起死回生の一打になるのか!?
このようにタブレット自体があまり売れていない状況だが、ひさしぶりにタブレットが話題となっている。スマートフォンでブレイクした小米(シャオミ)が、タブレット「小米平板」を同社サイトで販売開始し、販売開始3分ちょっとで、初回販売台数5万台を売り切るという記録を出したのだ。
フォローすれば、購入者の中には、一般ユーザー以外にも、ショップで転売したい販売業者も多数含まれているし、小米なりのメディア露出方法ではある。
とはいえ注目されることで、第2の小米平板にならんと力のあるメーカーも参入し、やがて中国市場が活性化するだけでなく、その先には中国発の世界向け製品も登場していくのではないかと期待はできる。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)。
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