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NewsPicks編集部が答えるビジネスメディアのプラットホーム(前編)

オールドメディアには何が足りないのか

2014年07月03日 16時00分更新

北島幹雄(Mikio Kitashima)/アスキークラウド編集部

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 2013年9月にサービスを開始した、経済メディア専門のニュースアプリ・NewsPicks(ニューズピックス)。「SmartNews」や「グノシー」と同じく、ニュースをキュレーションして閲覧するアプリだが、ビジネス記事に特化しており、各記事に通じた識者や一般ユーザーのコメントがまとめて読める点が特徴だ。ユーザーは、自分が読みたいニュースの記事内容だけでなく、より深い視点や複数の見識が得られる。

 2014年7月1日、NewsPicks運営を行うユーザーベースは、佐々木紀彦氏が執行役員に就任、またNewsPicksの編集部新設に伴い、その編集長に就くことを発表した。佐々木氏は、2012年11月に東洋経済新報社のニュースサイト「東洋経済オンライン」編集長に就任後、大リニューアルを行い、短期間で同サイトをビジネス系サイトナンバーワンに導いた経歴を持つ。

 ビジネス誌が母体となるいわゆる旧来メディアから、紙媒体を持たないニュース共有アプリの編集部に移籍を決めた理由、そして展望について、ユーザベース代表取締役共同経営者の梅田優祐氏、NewsPicks編集長の佐々木紀彦氏に聞いた。

NewsPicks佐々木編集長
株式会社ユーザベース執行役員NewsPicks編集長の佐々木紀彦氏

──佐々木編集長がNewsPicksへの移籍を決めた理由は?

佐々木 決めた理由はいろいろありますが、一番は企業を取材するなかで、ユーザベースが、梅田さんが好きだったことです。数多く取材したなかでのポテンシャルを直感で感じました。もう一方で理屈っぽく言うならば、メディアが100年に一度の大きな変革を迎えるなかで、ここに入れば新しいシステム・生態系・メディアを作れる確信があったからです。

──NewsPicks編集部ではどんなことを行いたいですか?

佐々木 やりたいことは3つの融合です。
 1つ目は、コンテンツとテクノロジーの融合。堀江貴文さんの時代から言われていましたが、なんだかんだで進んでいません。ドワンゴは1つの例ですが、ほかにはないですね。私もオールドメディア側から、テクノロジーの強化をしたいとがんばりました。もちろんそちら側でもできはしますが、スピードに限界を感じました。オールド側で強化をするより、テクノロジーがあるところでコンテンツを鍛えたほうが早いということです。
 2つ目は、メディアとプラットホームの融合。メディアだけやってコンテンツ職人になってしまうと、今の時代、利益的・経済的にも限界があります。NewsPicksは経済メディアのプラットホームを目指していて、さらにコンテンツを作るという梅田さんの宣言がありました。プラットホームを運営したいわけではなく、そこでコンテンツを作る、メディアを自分はやりたいのです。
 3つ目が、広告と課金モデルの融合。広告も東洋経済オンラインでリニューアル前から20倍くらいに伸びました。それでビジネス的には成功ですが、永続性がありません。やはり有料モデルを普及させないと、いいコンテンツが継続的にできないんです。紙・オールドメディアにいる優秀な人たちを惹きつけるような、有料モデルを成功させる。その挑戦が魅力的なのです。
 ビジネス力・テクノロジー力がユーザベースは優れているので、私や参画してくれるメンバーとともに、コンテンツ力を加えたい。これで、相当おもしろいことができる、日本の枠を超えておもしろくできそうというのが、参加した理由です。

──オールドメディアのスピード感というのは?

佐々木 東洋経済オンラインはまだいい方でしたが、新聞などはチェック階層が非常に多いです。ミスをしてはいけないという紙メディアの特有もので、ピラミッド型の構造がそもそもあります。NewsPicksは、まだ社風を体感しているわけではないですが、みんなが自分で考えて自律的に動いていくのを感じます。

梅田 そうですね。一番早いのは、各自が動ける組織です。トップダウンでの制約があった場合、個々人のイマジネーションや動くスピードが、会社自体の制約になってしまいます。スピード感で言えば、技術者とビジネスサイドの人間が隣同士でモノを作れるのが、最大の違い。リアルな席も隣同士でやっています。

佐々木 これは一番すごいところです。外注に頼んで改善するまでに1週間だったものが、極端な話、朝お願いして昼にできてしまう。ほかではないですね。

梅田 LINEのグループでコミュニケーションをしています。「さっきのところすぐに直して」というように。

──編集部の色はどうなるのでしょうか? 佐々木さんご自身はネームバリューがありフォロワーも多いです。個人頼みになると、ブログの集合体と変わらないのではないでしょうか?

佐々木 ブロガーとの違いは、編集者としての仕事の量でしょう。著者を発掘したり、外部と連携して、動画であったり、本であったりを作ります。NewsPicksの編集者には3つ仕事があります。
 1つ目は、オリジナルコンテンツです。無料だけじゃなく有料記事を作り、しかも有料が中心になること。2つ目は、バイヤーとしての仕事です。国内外からいいメディアを発掘して、迅速に翻訳して届ける。デイリーなクーリエジャポンのような仕事になります。そして3つ目が、スカウト。いいPickerになりそうな人に声をかけてスカウトしてくる役割です。

──1人の編集者がコンテンツを作るうえでの時間のかけ方は、どのようになるのでしょうか?

佐々木 ウェブ記事を無料で作る経験を1年半やりましたが、大事なのはとにかく数を作ることです。紙メディアの時からは、労力を意図的に1/3〜1/4に減らしていました。ただし、これから行う有料のものは、もっと丁寧に作っていくことになります。
 1つの記事についても、できるだけ自分で書かないようにしてもらうことになるでしょう。いいものは書いてもらいたいのですが、そこはプロフェッショナルライターを使ってもいいと思っています。問題意識の1つとして、日本のライターがきちんと評価を受けてない、玉石混淆になっています。いいライターを見つけてネットワーク化していきたい。これは翻訳家も同じです。

──NewsPicksは出版も行うのでしょうか?

佐々木 本については、旧来のメディア、大手と組んでやる予定です。全方位、あらゆるところをパートナーにしていきます。中立的な立場になるので、ダイヤモンド社や講談社、ディスカバーなどともマッチングすることができます。ここもやりたいことの1つです。

──雑誌のコンテンツを書籍化することに近いでしょうか?

梅田 似ていると思います。今のウェブの世界だと無料になってしまうので、それでは本も売れません。ちゃんと有料会員でマネタイズして、書籍にしたいです。

佐々木 ダイヤモンド社の『統計学が最強の学問である』が一例ですが、あれもcakesでやっていたのを出してとても売れています。cakesの加藤貞顕さんがやっていることは、先進的ですね。

(後編はこちら)

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