広色域技術と信号処理で高精細化とハイダイナミックレンジ化を実現
「リッチカラーテクノロジー」については、バックライトで使用しているLEDに塗布する蛍光体を新開発することにより、BDなどよりも再現域の広いDCI(デジタルシネマ)規格に近いカバー率を確保した。4Kテレビのトレンドとなっている広色域パネルを、AQUOSクアトロン以来、初めて採用するようになった。
「DCIへの対応については色度図を発表していますが、AQUOS UD20についてはDCIのスペックに対して面積比だけでなく、色度図のなかでRGBの原色点が極めて近いところにあるのが特徴です。コンテンツの色作りについても、BT.709の従来の色域のものも色飽和度が上がるにつれてDCIに近づけて再現をするようにしています。DCIの原色点はBT.709の延長線上に広がっていて軸がずれないので、自然でリアルな映像再現の本物感という、AQUSOの目指す画質に近づけたのではないかと思っています」(小池)
そしてもう一つの新しい技術が、入力されたフルHD信号を4Kにアップコンバートする「AQUOS 4K-Master Engine PRO」に新搭載されたアップコンバート技術「アダプティブ・アップコンバート」だ。
「アダプティブ・アップコンバートは、フルHDからアップスケーリングする際に映像の周波数信号を高域、中域、低域に分類しながら、解像感のディテールを押し上げる技術です。よりハッキリ見せる映像処理を周波数に分けて行っていて、これをユーザーメニューに解放しています。同じフルHDに近い画質でも、BDと放送、また地デジとBSでも違いますので、ソースのわかっているコンテンツはそれぞれに最適化した形でアップコンバートを適用しています。
フルHDのBDでも、特に4KのBD、8Kスキャンのものは、やはり高域成分の持っている情報が全然違うんですよね。撮影した時点で高域をフィルターで落としてノイズや折り返しノイズを避けているのですけど、そこを補完して持ち上げてフラットすれば、今まで見ていた映像より4Kマスターに近い状態に戻せるという考え方です」(小池)
そして、シャープが独自の考え方で採用する高画質技術が映像信号処理により画面のきらめく光の突き上げを再現する「ピクセルディミング」の技術だ。
「ピクセルディミングは、AQUOSとして2年前に発売した直下型LED・ローカルディミング採用のAQUOS X5シリーズで搭載した技術を利用しています。AQUOS X5では黒を沈めるために、輝き部分を検出してバックライトに電力を投入し、輝度を確保する技術を入れておりました。UD20についてはエッジ型のLEDバックライトを採用していて、直下型のローカルディミングとは異なります。したがって映像信号そのものを調整することで輝度をブーストし、さらにバックライトに逆数をかけることで黒を引き締めるという仕組みになっています。ただし、パネル側の回路に単純に掛け合わせるだけではシーンチェンジした際などに画質が破綻するので、シーン検出をしながら徐々に変えるのか、瞬時に切り替えるのかを判断しています」(小池)