「CarPlayがいつ導入されるのか、まだ情報は下りてこないですね」。新型ハイブリッドSUV「ヴィゼル」試乗のついでに尋ねると、ホンダの営業マンはそう苦笑した。
アップルがiOSを車載用インフォテインメント(IVI)に最適化させる「CarPlay」を発表したのは昨年のWWDC。当時「iOS in the Car」と呼ばれたシステムは今年、ホンダ、フェラーリ、メルセデス・ベンツ、ボルボ、ヒュンダイといった各メーカーの車両に搭載される予定だ。
先日公開されたアップルの公式ページによると、CarPlayはiPhoneと自動車とを有線接続することで、IVIやハンドルのボタンといった自動車の側からiPhoneを操作できる機能。マップや電話、メッセージなどのiOSアプリをIVIに表示し、Siriを使って応答する。
「よくCarPlayは『カーナビ対抗』のように語られがちだが、中身はあくまでiOSのIVI向けAPI。カーナビを置き換えるものではない」。事情に詳しいテクニカルライターはこう指摘する。
CarPlayの発想は、IVIとスマホを連携させる規格「MirrorLink」に近い。あくまでIVIにアイフォーンを最適化するための機能で、カーナビそのものになろうとしているわけではない、というのだ。
むしろIVIを狙っているのは、サムスンやドコモ、インテルが中心になって規格化を進めているOS「Tizen」のほう。一般社団法人モジラジャパンの浅井智也氏は「トヨタはTizenと組んで、継続的に進めている」と話す。Tizenの場合、スマホ向けの「Tizen OS」とIVI向けの「Tizen IVI」は別物。例えスマホが上手くいかなくても、プロジェクトに支障は出ない。
一方でグーグルも、自動車へのアンドロイド・プラットフォーム導入を目指す団体「Open Automotive Alliance」(OAA)を今年1月に結成。自動車メーカーに加え、プロセッサーベンダーのエヌビディアが参加しているのが特徴だ。同社はIVI向けにプロセッサーを提供してきた実績があるので、IVI へのアンドロイドの組み込みを狙っていることは容易に想像がつく。
ホンダはアップルのCarPlayとグーグルのOAAの双方に名を連ねるなど、IVIまわりでは最もホットなメーカー。同社の動向が、ひょっとするとカーナビ市場にも大きな影響を与えるかもしれない。