殺伐というよりお祭り騒ぎ的なものが目立つデモ写真
そんなスマートフォンが一気に普及していく最中での大規模なデモである。デモ隊の中でも、若者を中心にスマートフォンやタブレットで自分撮りの記念撮影を行ない、それをInstgramやFacebookにアップするユーザーも見られる。
殺伐としている写真よりは、お祭り騒ぎとなっている写真のほうが目立つ。Twitterにおいても、デモを主導する元副首相の行動を出した「#SuthepTourLiveinBKK2014」や、道路封鎖の「#bangkokshutdown」「#thaiuprising」といったハッシュタグ付きのツイートが大量に流れている。
反政府デモの中で元副首相を取材した、防弾チョッキとヘルメットを着用したフジテレビの榎並大二郎アナウンサーがかっこいいと、タイのニュースやSNSで話題となり、その後各SNSの間で氏の写真付きの書き込みが大量に流れるようになった。
余談であるが、国別のハッシュタグを捜す「hashtagify」などで、タイのトレンドを検索してみると、東方神起などの韓流スターが上位にランクインしていることがわかる。このため榎並アナと韓流スターを比べる書き込みも結構あるようだ。
「東方神起」や「泣ける話」といったデモとは関係ないハッシュタグが人気となるなど、極めて大規模なデモでもSNSではピリピリした雰囲気を感じないわけだが、ほかにもタイのインターネットユーザーの行動傾向がわかる「truehits」において、昨年末からニュースをチェックする人の割合が、従来の8%前後から調査以来はじめて10~11%まで上がった。ここまでの国の事件でも、関心はネットユーザーの2%しか上がらないらしい。
デモの影響でオンラインショッピングや
ネットバンキングの利用率が拡大
ニュース記事訪問者よりも増加が目立ったのは、バンコク中心部に足を運べない人々が使いはじめた、オンラインショッピングやオンラインバンキングだ。
楽天が運営するオンラインショッピングサイト「TARAD」は、デモが本格的になった12月にキャンペーンをうち、10~12月の3ヵ月で前年同期比71%増の売上を記録。さらに、1月の中心部封鎖「Shutdown Bangkok」により、1月13~19日の売上が、封鎖前の1月1~12日に比べ28%増加した。
また、各銀行はデモのため、複数の店舗のオープンできなくなったが、その影響でオンラインバンキングの利用が平常時の15~20%増となった。中国でもSARSやPM2.5で外出しにくいときにオンラインショッピングが普及したが、それによく似ている。
今後のデモ隊が、メディアを占領するのではないかと言われている。一部のメディアは、メディア占領により、SNSの影響力はさらに強くなり、FacebookやLINEが単なるコミュニケーションツールの枠を超え、大きなメディアとなるだろうと報じている。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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