インテルがファンダリーを開放
14nm以降は設備投資が壮絶
コストを背景に考えると、14nm世代で十分な製造ラインを維持して投資を回収するとともに、次の10nm世代に向けて新たな投資を行なうためには、とにかく製品を製造して売り切らなければならない。
ところがPCマーケットは停滞から縮小に転じており、モバイルでは十分な存在感を維持できず、おまけにこれまでの売り上げの原動力だったサーバー部門がクラウドやスケールアウトといった流行により、売り上げが落ちつつある。
つまりインテルだけではすでに自社ファウンダリーの製造ラインを維持しきれない恐れが出てきたわけだ。そこで、本格的にインテルはファウンダリサービスを発表した。ここからは同社PresidentであるRenee James氏の解説を伝えよう。
そのJames氏がファウンダリーサービスに関して最初に示したのが下の画像である。Alteraは20nm世代までTSMCを使って同社のFPGAを製造するが、14nm世代ではインテルの14nmプロセスに切り替えると2013年2月に発表している(関連リンク)。
「Startix」というのは同社のハイエンドFPGAシリーズで、CPUと同じく高速・高密度なロジックプロセスを利用して製造するため、インテルのファンダリーにはある意味最適な製品ともいえる。実際トランジスター密度そのものを直接比較した場合、14nm以降の世代ではインテルの方が有利としている。
コストにしても、単位面積あたりのコストそのものは上昇傾向にあるが、これを上回る勢いで単位面積あたりのトランジスター数を増やせるので、結局トランジスターあたりのコストはずっと下がる、というのがインテルの主張である。
また、元々インテルはすでにサーバー/PC/モバイルでプロセスを分けており、用途に応じたプロセスが利用できるとしている。
加えて、トランジスターだけでなくその上に位置する配線層に関しても、高性能向けとSoC向けで複数の種類を用意しており、また様々な製造向けのオプションを用意している。
そもそもインテルは、TSMCやコモンプラットフォーム(IBM、GlobalFoundries、Samsung)陣営よりも先んじて様々な技術革新を行なってきたことにも言及している。
いささか上の画像がコマーシャルじみているのは、ファウンダリーサービスに参入するにあたり、十分な優位性があるがゆえに、ビジネスとして成立すると投資家に納得してもらうためである。
そのファウンダリーサービスであるが、1つは既存の製品ベースのセミカスタム、もう一つはフルカスタムである。
これまでインテルはごく少量であるが、Achronix/Tabula/Microsemiといった小規模FPGAベンダーの次世代製品製造を請け負っており、すでにArchtonixなどはサンプルの出荷が開始されている。さらにAlteraの14nm世代製品も請け負ったわけだが、これらはいずれもフルカスタムに属するビジネスである。
セミカスタムはというと、AMDがPS4やXBox OneのCPUを作ったように、インテルも過去にはXbox用のCPUを提供していた。最近ではGoogleやFacebook、Amazonといった大企業向けに、彼らの希望するカスタムCPUを提供している。
ただし、ここで示されたセミカスタムのターゲットはモバイルあるいは組み込み製品向けで、AtomなどをベースとしたカスタムSoCの提供などを新規に受託したいと考えているのだろう。
このビジネスが果たしてうまく行くかどうかは、あまりに不確定要素が多すぎてなんともいえないというのが現時点での筆者の評価である。
ただ、これまでインテルは絶対に自社のファンダリーを外部に開放しなかった。例外はビジネス上のつながりがあるケースで、例えばXScaleをMarvellに売却後、しばらくの期間はMarvell向けにXScaleのファウンダリーサービスを行なっていたし、同様にIXPシリーズを抱えてインテルからスピンアウトしたNetronome向けには現在もファウンダリーサービスを提供している。
上記は本当に例外であって、これまでは外部からなんと言われようとインテルはファンダリーを他社向け製品に開放しなかった。というのはインテルの強みの源泉がファウンダリーにあるからだが、そのインテルが外部公開に踏み切らねばならないほど、14nm以降の設備投資は壮絶ということでもある。
そこで次回以降で、もう少しこのファウンダリーおよび半導体プロセスについて、何回かに分けて説明をしていこう。
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