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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第235回

半導体プロセスまるわかり インテルの14nmが遅れる理由

2014年01月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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インテルがファンダリーを開放
14nm以降は設備投資が壮絶

 コストを背景に考えると、14nm世代で十分な製造ラインを維持して投資を回収するとともに、次の10nm世代に向けて新たな投資を行なうためには、とにかく製品を製造して売り切らなければならない。

 ところがPCマーケットは停滞から縮小に転じており、モバイルでは十分な存在感を維持できず、おまけにこれまでの売り上げの原動力だったサーバー部門がクラウドやスケールアウトといった流行により、売り上げが落ちつつある。

 つまりインテルだけではすでに自社ファウンダリーの製造ラインを維持しきれない恐れが出てきたわけだ。そこで、本格的にインテルはファウンダリサービスを発表した。ここからは同社PresidentであるRenee James氏の解説を伝えよう。

ここで米国オレゴン州にある14nm世代のファウンダリー「D1X」の写真が出てくるあたりが、実に意味深である

 そのJames氏がファウンダリーサービスに関して最初に示したのが下の画像である。Alteraは20nm世代までTSMCを使って同社のFPGAを製造するが、14nm世代ではインテルの14nmプロセスに切り替えると2013年2月に発表している(関連リンク)。

このスライドそのものは、Alteraが14nm世代の「Stratix 10」の発表にあたってインテルの14nmを採用することを示したものであるが、これをインテルが改めて示すことに意味がある

 「Startix」というのは同社のハイエンドFPGAシリーズで、CPUと同じく高速・高密度なロジックプロセスを利用して製造するため、インテルのファンダリーにはある意味最適な製品ともいえる。実際トランジスター密度そのものを直接比較した場合、14nm以降の世代ではインテルの方が有利としている。

トランジスター密度の比較。これも縦軸は対数で、トランジスター1個あたりの面積を比較している。つまり値が低いほど、高密度に回路を実装できる

 コストにしても、単位面積あたりのコストそのものは上昇傾向にあるが、これを上回る勢いで単位面積あたりのトランジスター数を増やせるので、結局トランジスターあたりのコストはずっと下がる、というのがインテルの主張である。

トランジスター数あたりのコスト。同じ回路であればプロセスが多少変わっても同程度のトランジスター数で実装できるので、引き続きプロセスの微細化によりコストが下がるとインテルは主張している

 また、元々インテルはすでにサーバー/PC/モバイルでプロセスを分けており、用途に応じたプロセスが利用できるとしている。

左は性能を、中央は動的な消費電力を示しており、右は消費電力当たりの性能の傾向をまとめて示したもの

 加えて、トランジスターだけでなくその上に位置する配線層に関しても、高性能向けとSoC向けで複数の種類を用意しており、また様々な製造向けのオプションを用意している。

いずれもダイの断面の電子顕微鏡写真。一番下がトランジスターで、その上に配線層が積み重なる

様々な製造向けのオプションを用意する。このあたりの詳細はまた次回以降の連載の中で触れたい

 そもそもインテルは、TSMCやコモンプラットフォーム(IBM、GlobalFoundries、Samsung)陣営よりも先んじて様々な技術革新を行なってきたことにも言及している。

平均3.5年ほど、競合ファウンダリーよりも先に新技術を導入しているとしており、これそのものは事実である

 いささか上の画像がコマーシャルじみているのは、ファウンダリーサービスに参入するにあたり、十分な優位性があるがゆえに、ビジネスとして成立すると投資家に納得してもらうためである。

インテルのファウンダリー戦略。セミカスタムの方は、「インテルの回路技術に顧客の独自IPを導入」とあるので、基本はSoC向けになると思われる

 そのファウンダリーサービスであるが、1つは既存の製品ベースのセミカスタム、もう一つはフルカスタムである。

 これまでインテルはごく少量であるが、Achronix/Tabula/Microsemiといった小規模FPGAベンダーの次世代製品製造を請け負っており、すでにArchtonixなどはサンプルの出荷が開始されている。さらにAlteraの14nm世代製品も請け負ったわけだが、これらはいずれもフルカスタムに属するビジネスである。

 セミカスタムはというと、AMDがPS4やXBox OneのCPUを作ったように、インテルも過去にはXbox用のCPUを提供していた。最近ではGoogleやFacebook、Amazonといった大企業向けに、彼らの希望するカスタムCPUを提供している。

 ただし、ここで示されたセミカスタムのターゲットはモバイルあるいは組み込み製品向けで、AtomなどをベースとしたカスタムSoCの提供などを新規に受託したいと考えているのだろう。

 このビジネスが果たしてうまく行くかどうかは、あまりに不確定要素が多すぎてなんともいえないというのが現時点での筆者の評価である。

 ただ、これまでインテルは絶対に自社のファンダリーを外部に開放しなかった。例外はビジネス上のつながりがあるケースで、例えばXScaleをMarvellに売却後、しばらくの期間はMarvell向けにXScaleのファウンダリーサービスを行なっていたし、同様にIXPシリーズを抱えてインテルからスピンアウトしたNetronome向けには現在もファウンダリーサービスを提供している。

 上記は本当に例外であって、これまでは外部からなんと言われようとインテルはファンダリーを他社向け製品に開放しなかった。というのはインテルの強みの源泉がファウンダリーにあるからだが、そのインテルが外部公開に踏み切らねばならないほど、14nm以降の設備投資は壮絶ということでもある。

 そこで次回以降で、もう少しこのファウンダリーおよび半導体プロセスについて、何回かに分けて説明をしていこう。

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