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2014年、コンピュータは大きな岐路に立っている by 遠藤諭

2014年01月07日 11時50分更新

文● 遠藤諭/角川アスキー総合研究所

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PCだってクラウドで動かしちゃえ──アマゾン

 昨年11月、アマゾンが発表して試験運用がはじまっているのが「Amazon WorkSpaces」というサービスだ。いままで、同社のクラウドは企業内の“サーバー”などに取って代わるものだったが、今度は、個人の机の上のWindowsマシンをそっくり動かしましょうというものだ。画面から登録するだけでWindows環境が手に入り、Microsoft Officeを入れたり、いま使っているPC環境をクラウドに移行して動かすこともできる。それを、アマゾンのKindle HDや、iPad、Androidの画面をディスプレイにして使うのだ。

 いまのところ企業向けに月額数十ドルで提供されているが、これは個人でも使えると楽しそうだ。こうしたバーチャル環境は、いままでVMWareなどがあつかってきたが、アマゾンがやるというあたりに薄ら寒いほどの可能性がある。PCという20世紀後半に花開いたパソコンという機械の終わり方としては、こんな残骸の残し方がいちばん迷惑がかからなくてよいのかもしれない。

Chrome OSとAndroidの落とし前をつける──グーグル

 コンピュータ業界で議論される技術のうち“HTML5”ほど、リベラルなイメージを持ったものはない。ウェブ技術だけでPCソフトウェアに匹敵する体験が得られるのなら、マイクロソフトが築いてきたPC帝国を無力化できるかもしれない。『アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか』(フレッド・ボーゲルスタイン著、依田卓巳訳、新潮社刊)を読むと、両社がいかに対マイクロソフトで協力した時期があったかが書かれている(HTML5についてはあまり触れてはいないが)。

 ところが、いまiOSが売れまくり、Androidがその何倍も売れているとなると、アップルやグーグルのほうが支配力を持ってきている。両社の違いは、アップルがハードウェアメーカーで、グーグルが検索広告の会社であることだ。そこで、グーグルだけが、同社のウェブブラウザ「Chrome」でHTML5アプリを動かす「Chrome OS」を推進しているわけだ。

 これを搭載したのが「Chromebook」というノートPCだが売れているのか? と思ったら、最近のニュースでは米国の企業向けノート市場の一角を占めるまで伸びてきているという。

 理由は、低価格に加えて、2014年に予定されるWindows XPのサポート終了、ウェブだけで済む仕事が増えたこと、企業なら管理の容易さもありがたいだろう。ChromeOSとAndroidでは、一見矛盾する性格にも見えるがどうするのか?

 日本アンドロイドの会の人に聞いたら、将来的に1つにまとめるという見方があるそうだ。グーグルの広告ビジネスという部分ではあまり変わらないからだろう。

どっこいWindows + Androidエミュレータが来る?

 私の場合は、PCでKindle(日本版)が読みたいと思って「BlueStacks」(ブルースタックス)というソフトウェアに興味を持った。PCやMac上でAndroidがまるごと動いてしまうというエミュレータで、ウィルス対策ソフトのマカフィーの元CTOが立ち上げた会社が作っている。こういう世界はマニアックなものだと思っていたら、インテルがWindowsでAndroidをエミュレートするプラットフォームをやっていると認めた。

 これのポイントは、Windows + モバイルOS(あるいはタブレット向けUI)というのは、マイクロソフトがWindows 8で考えたシナリオそのものだということだ。インテルが昨年提唱した“ハイブリッド”もまだこれからという感じだが、これは表と出るのだろうか? 少なくとも、Windows 8のモダン環境より、使い慣れたAndroidのほうがいいという人は多い。もっとも、その延長上に見えてくるのはインテルも考えているPCの感覚で使うAndroidへのシフトだろう。

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