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プライベートクラウドとマルチクラウド管理にフォーカス

デルが「パブリッククラウド戦略を変更した理由」とは?

2013年09月09日 06時00分更新

文● 末岡洋子

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 米デルはPCなどハードウェアからソリューションにフォーカスを拡大している。当然、クラウドの提供は重要となるが、デルは先にパブリッククラウドの戦略を変更、「OpenStack」ベースでのパブリッククラウドの自社提供をやめて、パートナー戦略をとることを発表した。

 デルが8月末に中国・北京で開催した「Dell Solutions Summit」で、同社データセンター・クラウド管理、ソリューションマーケティング担当ディレクターのマーク・スティット(Marc Stitt)氏に話を聞いた。

米デルのデータセンター・クラウド管理、ソリューションマーケティング担当ディレクター マーク・スティット氏

――2012年末の「Dell World」ではOpenStackベースのパブリッククラウド提供へのフォーカスを示したが、5月に戦略を変更した。戦略変更の背景は?

 背景としてまず、クラウド市場の分断化がある。クラウドは成長しているが、さまざまなクラウド事業者がおり、さまざまなユースケースがあり、アプリケーションのニーズも異なる。顧客は自分の利用方法に適したクラウドを選びたい――つまり、パブリッククラウドで「選択肢」を必要としている。この現状を重視して戦略を見直した。デルが自社でパブリッククラウドソリューションを持つ場合、選択肢を提供するのは難しい。そこで、パブリッククラウドでは、Joyent、ScaleMetrix、ZeroLagの3事業者と提携した。デルの顧客は3社が提供するパブリッククラウドを利用できる。

 もう1つが、5月に行ったエンストラティウスの買収だ。同社の「Enstratius」は複数のクラウド基盤を管理できるソリューションで、同社買収により、パブリッククラウドでは事業者にハードウェアなどの技術を提供し、顧客がさまざまなパブリッククラウドを利用するのを支援することにフォーカスを移した。

 クラウドの現実として、今後企業や組織はさまざまなクラウドをビジネスニーズに合わせて適用すると見ている。システム管理で必要となる要件が変わってくるが、デルはここをサポートしていく。

――では、新しい戦略は?

 デルのクラウド戦略には3つの柱がある。1つ目は顧客のプライベートクラウド開発の支援、2つ目はパブリッククラウドで選択肢の提供、3つ目はマルチクラウド環境における管理機能の提供、だ。これら3つはそれぞれ差別化となる優位性があるが、それぞれにサービスを提供し、顧客の成功を支援する。さらに(この3つが)組み合わさることで、包括的なソリューションを提供できる。これがデルのバリューだ。

 クラウドを提供するベンダーは多いが、それぞれ技術的特徴は異なる。顧客のクラウドに対するニーズはさまざまで、これらにフィットできるソリューションや技術を持つのはわれわれだけだと自負している。

 特にアジア太平洋・日本地区では仮想化が普及した段階で、次のステップを考えている企業が多い。次はプライベートクラウドであり、Dellは仮想化からプライベートクラウドへの橋渡しを提供する。

――プライベートクラウド重視ということか? パブリッククラウドを優先する“クラウドファースト”といわれる動きがある。基幹システムもパブリッククラウドでというところが出てきているが、プライベートクラウドの方がニーズが高いと見ているのか?

 たとえばERPは複雑で、実装や標準化が難しく、アップグレードも頻繁にある。そのような点から考えて、SaaSベースのERPは意味がある。CRMもしかりだ。ユーザー企業はツールを利用したいと思っているのであって、購入したいとはあまり思っていないし、メンテナンスなど保守費用も削減したいと思っている。このように一部のSaaS市場は今後も発展するだろう。

 先ほど述べたようにパブリッククラウド市場は現時点では分裂しており、顧客の多くがプライベートクラウド構築のニーズを抱えている。市場の6~7割のアクティビティがプライベートクラウド関連だと見ている。

 パブリッククラウドについて顧客からDellに寄せられるものは、主に3種に分類できる。1つ目は、どのクラウド事業者を選択すれば良いかのガイダンスへのニーズ、2つ目は評価、ベンチマーキングなどプロフェッショナルサービスへのニーズ、3つ目はクラウドの管理だ。

 長期的にはプライベートクラウドとパブリッククラウドは共存する。最終的にはアプリケーション、インフラ、そしてデスクトップを、オンプレミスとオフプレミスの両方で、リソースに関係なく配信する環境が実現するだろう。ここでは、最適なものはなにかを助言できるクラウドブローカーが重要になり、複数のクラウドを管理できる管理機能が必要になる。

――エンストラティウス買収により管理分野を強化した。複数のクラウドを管理する「マルチクラウド管理」について詳しく教えてほしい。

 この10年ほど仮想化技術の普及によりITは変わった。それを受けて、仮想化環境のモニタリング、バックアップ、安全対策が求められた。今度はクラウドが普及し、そこでは仮想化環境と同様に新しい方法でシステム管理を行う必要がある。

 さまざまなクラウドがあり、それぞれに管理機能がある。各クラウドの管理機能の中には不完全なものもあり、複数のクラウドを一括管理できるような一貫性はない。ITが複数のクラウドを管理できることは、“シャドウIT”対策にもつながる。シャドウITとは、事業部側がIT部門を介さずにクラウド事業者と契約してアプリケーションをホスティングするなどの最近の傾向だ。事業部側にしてみればすぐに必要などの理由があるが、機密データが含まれているかもしれないし、重要なアプリかもしれないので、IT部門はこころよしとしない。実のところ、この問題は無視できなくなっている。複数のクラウドを管理できる機能により、ITはクラウドに対してガバナンスやポリシーの適用、アクセス管理、アカウント制御など一貫して管理でき、企業にしてみれば無駄な投資やリスクを予防できる。

 EnstratiusはAPIを利用して各クラウド管理を連携できるが、場合によってはクラウド事業者が提供する管理ツールをそのまま使い続けるところもあるだろう。利用の形態は企業により異なるが、複数のクラウド管理は中央で一元化されることが多いのではないか。

 このようにマルチクラウド管理機能は、われわれのクラウド戦略で大きな差別化となる。Enstratiusでは20種類以上のパブリッククラウドをサポートする。

――Enstratiusのような機能はエンタープライズ向けといえるが、デルの重要な市場となるSMBではどのような戦略か?

 複数のクラウド管理のニーズは、中規模企業でも規模が大きいところで出てくるとみている。一方、SMBの多くはプライベートクラウドに関心が高く、ここではプライベートクラウドソリューションを提供する。たとえばコンバージドインフラ製品「PowerEdge VTRX」ではプライベードクラウド機能をオプション提供している。これで充分というところもあるだろう。

――パブリッククラウドでは3社と提携しているが、3社を選んだ理由は? 拡大の予定は?

 3社を選んだ基準として、中規模市場と大規模市場の両方に提供でき、さまざまなユースケースをサポートできるかを考えた。現時点では3社で充分だと判断しているが、今後のことはまだ分からない。地域別などパートナーを増やす可能性があるかもしれない。

――OpenStackをサポートしているが、デルのクラウド戦略におけるOpenStackの役割は? OpenStackは引き続き重要だ。

 OpenStackベースのプライベートクラウドを実装したいという顧客は増えている。理由は、OpenStackはオープンソースなのでコスト面でのメリットが大きい上、自分たちのニーズに合ったクラウドを構築できる。

 マイクロソフトやヴイエムウェアの技術をベースとしたプライベートクラウドは堅牢性に優れるが、価格が高い。顧客の中にはそれほどの高機能を必要としないというところもある。OpenStackなら自由に構築できるが、スキルが必要。デルにはOpenStackに精通した技術者が多数おり、顧客のニーズに合わせたOpenStackベースのプライベートクラウドを構築できるからだ。

 重要な点は、ヴイエムウェアなどのクラウドとOpenStackベースのクラウドのどちらが優れているかが問題ではなく、混在して利用されるという点だ。市場提供までの時間、コスト、スキル、必要な機能とクラウドのニーズはさまざまで、各ニーズに合うクラウドも異なる。高価だが高速なスポーツカーが必要なときと、低コストで性能が劣る車でよいときがある。

――今年の春にはIBMがOpenStackへのコミットを強調したことが話題になった。ヒューレット・パッカード(HP)など他社もOpenStackを支持しているが、デルの特徴は何になるのか?

 IBMなどとは競合関係にあるが、OpenStackでは協力して開発していく。一方で、OpenStackには各ベンダーにより“フレーバー”が出てくるだろう。デルはOpenStackとHadoopをサポートする実装ツールのCrowbarなどの技術、ハードウェアではVTRXなどがあり、マルチクラウド管理も差別化となる。これに加えて、クラウド・レディネス評価などクラウド導入前から運用までの包括的なサポートを提供する。

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