2013年11月6日から、デルが中国・成都で開催した「Dell GCC APJ Partner Summit」は、アジアパシフィック地域において、デルがパートナー戦略を一気に加速することを示すものとなった。
パートナー経由の法人向け売上を拡大へ
もともとデルは、「デルモデル」と称される直販型のビジネスモデルを展開。そのイメージはいまでも強い。だが、同社では2007年から、デルのチャネルルート開拓を担う「デルグローバルコマーシャルチャネル(GCC)」を立ち上げ、パートナーによる間接販売モデルをスタートしてきた。
すでにデルの法人向けビジネスの売上高のうち37%は、パートナーによる間接販売モデルとなっており、これは今後拡大することになる。
日本でもそれは同じだ。
Dell GCC APJ Partner Summitに参加したデル日本法人 GCC統括本部統括本部長の成田芳久氏は、アジアパシフィック地域でもパートナービジネスが着実に成長していることを示しながら、「日本でも法人向けビジネスの約30%がパートナーを通じた販売となっている。来年度にはこれを50%以上に引き上げたい」と、日本におけるパートナービジネスの拡大に意欲をみせる。
デルが、パートナービジネス拡大に取り組む理由は明確だ。
同社は、ソリューションプロバイダーへの変革を進めており、パートナーとの協業は不可欠。かつての箱売りビジネスでは、サプライチェーンの強みを生かし、低コストで流通するダイレクトモデルが優位性を発揮していたが、ソリューションビジネスでは、顧客と密着して提案するパートナーモデルが適している。ソリューションプロバイダーとしてビジネスを拡充するには自前の直販営業体制だけでは限界があり、パートナーとの連携は避けては通れないというわけだ。
さらに、デルはこの2年間で19社を買収している。これにより、ソフトウェアおよびサービス関連製品の品揃えが強化されたのと同時に、買収したパートナー網も活用できるようになった。パートナー連携強化は、これも重要なポイントとなる。
パートナー向けトレーニングに注力、共に成長を目指す
米デルのアジアパシフィックGCC部門・リチャード・リー バイスプレジデントは、「マイケル・デルは、今後もチャネル販売を拡大する姿勢を打ち出している。今後は、デルが買収したハードウェア、ソフトウェア、サービスをパートナーに積極的に取り扱ってもらいたい」と語る。
また、米デルのGCC部門統括本部長のグレゴリー・デイビス バイスプレジデントも、「デルは、パートナー向けのトレーニングに力を注ぎ、パートナーの収益拡大を優先する」と宣言する。
今回のDell GCC APJ Partner Summitの開催にあわせて、デルは、パートナーに対して、「トレーニングイニシアチブ」、「ツール」、「ベストプラクティス」に関するプログラムを発表。アジアパシフィック地域における2万3000社のパートナーに対して、これらを提供するという。
PartnerDirectプログラムでは、新たに「セキュリティ」、「システム管理」、「データ保護」、「情報管理」の4つのソフトウェアコンピテンシーに注力するとし、これらのソフトウェアコンピテンシーは、PartnerDirectに登録しているすべてのパートナーが利用可能となり、それに対するトレーニングも提供する。トレーニングは、11月から英語のみで提供されるが、来年2月には、日本語、韓国語、簡体字中国語によるトレーニングが開始される予定だという。
また、顧客の要望にあわせて、複数のソリューションを組み合わせて提供する「オンライン・ソリューション・コンフィグレーター」というツールを用意。すでに今年7月から、オーストラリアおよびニュージーランド、中国で提供を開始しているが、このほど、日本、インド、韓国でも利用できるようになった。
「デルは、PartnerDirectプログラムを通じて、パートナーとともに『Better Together(共により良く)』成長していくことになる」(米デルのデイビスバイスプレジデント)と述べる。
デルのパートナーは、「Registeredパートナー」、「Preferredパートナー」、「Premierパートナー」で構成されており、それらのパートナーーに対して、トレーニングやビジネス機会、キャンペーンサポートの分野において、継続的な投資を続けていくとする。
デルでは、パートナーに対するトレーニングを無償で提供。無償化は他社との差別化になっている。これもデルがいう、パートナー向け投資拡大のひとつだ。
パートナー向け専用モデルの投入も
デルのパートナー支援策において、今後、注目しておくべき要素が2つある。
ひとつは、デルとデルソフトウェアに分かれていたパートナープログラム「PartnerDirect」をひとつに統合する動きだ。すでに欧米ではその方向性を打ち出しているが、日本においても、同社新年度がはじまる来年2月以降、統合の動きが出そうだ。
ハードウェアを中心としたデルの「PartnerDirect」プログラムと、買収したソフトウェア群を中心としたデルソフトアェアによる「PartnerDirect」プログラムを一本化することで、これまではデルブランドのハードウェア製品を扱うことがなかったソフトウェアパートナーが、デルのサーバーやストレージ、PCなどの幅広い製品を扱えるようになる。また、デルのハードウェアパートナーも、統一したパートナープログラムのもとで、ソフトウェア製品を扱えるようになるのだ。
「ソフトウェアとハードウェアにそれぞれ特化したパートナーのほか、ソリューションを販売するパートナーも含んだ展開が可能になる」と説明する。このパートナープログラム一本化の動きは、デルの製品群をソリョーションとして捉え直し、本格的にパートナーチャネルに展開することを意味する。
もうひとつは、パートナー向け専用モデルの投入だ。
ここでは、ミニタワーサーバーである「PowerEdge T20」を投入する計画を、すでに米国で発表している。日本での投入については現時点では未定だが、今後、日本にも同製品を展開する可能性がありそうだ。
これまでにはなかったデルのパートナー向け専用モデルの投入は、デルのパートナービジネスへの本気ぶりを示す象徴的な取り組みだといっていい。
将来的には、デルの売上高の半分以上をパートナービジネスにするというのが同社の基本姿勢。パートナービジネスの拡張が、今後のデルの成長を占う鍵となるのは間違いない。それに向けた施策は、これから一気に活発化しそうだ。