本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
H.264から次世代の「H.265/HEVC」へ
「iPhoneが成功した要因は?」と尋ねられれば、枯れた技術(UNIX/OS X)をベースに開発されたOSの存在と、トレンドを見据えて整備された開発フレームワーク、そして多くの消費者を魅了するハードウェアデザインと答える。もっとも、ハードとソフトを一体的に開発しようとするAppleのカルチャーこそが最重要ポイントなのだろう。
そしてもうひとつ、前述したものに比べると重要度は下がるものの、「動画フォーマット」に対する取り組みについても指摘しておきたい。フルHD画質のムービーを気軽に撮影/鑑賞できること、YouTubeやHuluなどストリーミング映像サービスを軽々こなすことは、もちろんそれらに対応したICやSoCの量産化もあるが、Appleが率先して「H.264」を採用したことも少なからず影響しているはず。
H.264は、現在多くのスマートフォンやPC、Blu-rayやAV機器に採用されている動画の圧縮符号化方式(動画コーデック)。国際電気通信連合(ITU)によって2003年5月に勧告された規格だが、技術的にはISOの「MPEG-4 Part 10 Advanced Video Coding(MPEG-4 AVC)」と同一だ。だから「H.264/MPEG-4 AVC」などと併記されることが多く、「H.264」イコール「MPEG-4 AVC」と考えて差し支えない。
2003年当時といえば、まだまだMPEG-2が主流で(現在でも地上波などで利用されている)、H.264を採用したBlu-ray機器も発売されたばかり。しかしAppleはその1年後には「次世代DVD」としてQuickTimeでサポートすることを表明している(関連リンク)。
そして今年1月、ITUが次世代の動画圧縮技術「H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)」を勧告した(関連リンク、H.265エンコーダー/デコーダー)。その圧縮効率はH.264と比較して約2倍、つまり同じ動画を画質を落とさず半分のデータ量にまで抑えることができる。現在のところAppleの反応はうかがえないが、「H.265推し」の方向で進む可能性は高そうだ。次項では、その理由について説明したい。
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