「Ubuntu」をモバイル分野に拡大する取り組みを進めている英Canonicalが、初のUbuntuスマートフォンとなる「Ubuntu Edge」の資金調達でクラウドソーシングを採用する。
クラウドソーシングサイトの「Indiegogo」(http://www.indiegogo.com/)にプロジェクトページを設け、30日間で3200万ドルを目標に有志者からの出資を募っている。Ubuntu Edgeの購入権を得られる初日限定の600ドル枠はすでに「完売」となっている。
スペック上は現行フラグシップ機を大きく上回る
登場は2014年の予定
Canonicalは、人気のLinuxディストリビューション「Ubuntu」をスマートフォン/タブレットなどモバイル分野に拡大すべく、技術と事業面で開発を続けている。Canonicalが7月22日に発表した「Ubuntu Edge」はタッチ対応のインターフェイス「Ubuntu Touch」を搭載する初のスマートフォンとなるが、通常の端末とは異なり、Ubuntu Edgeの登場をユーザーの手に委ねた。
Indiegogoのプロジェクトページ(http://www.indiegogo.com/projects/ubuntu-edge)によると、Ubuntu Edgeは車にたとえるなら「フォーミュラ1」、大量生産しない高機能のプレミアム端末と位置づけている。写真から伺える外観はEdgeという名にふさわしい固さを感じるデザインで、素材にユニボディーのアモルファス金属を利用し、精巧に作成したという。
ソフトウェア側ではUbuntu Phone OSとAndroidのデュアルブートをサポート。単体ではスマートフォンだが、モニターにHDMI接続するとUbuntu PCとしても動作する。モバイル環境からデスクトップ環境にスムーズに切り替えられ、デスクトップ側にあるファイルにもアクセスできるという。もちろん、その間も電話機能を利用できる。Androidブートにより、Androidアプリへのアクセスも可能。「Ubuntu for Android」アプリを利用して、AndroidからUbuntuデスクトップをスタートできる。
スペックは4.5型でHD解像度のディスプレー、マルチコアCPU、最低4GBのRAM、128GBのストレージなど既存のハイエンドスマートフォンを上回るもので、無線通信規格はデュアルLTE、Wi-Fi、GPS、NFC、Bluetoothなどをサポートする。8メガピクセルカメラ(背面)と2メガピクセルカメラ(前面)も備え、サイズは64×124×9mm。なお、仕様は将来変更する可能性があるという。
目標額は約30億円
果たしてそんなに集まるのか?
CanonicalはIndiegogoのページで「次世代のパーソナルコンピューティングの触媒役となるスーパーフォン」と表現しているが、価格もそれなりだ。
Canonicalは出資額として、20ドル、600ドル、830ドル、1万ドル、8万ドルの5種類を設けた。20ドルはUbuntu Edge Foundersのページに名前が掲載され、600ドルはUbuntu Edge Foundersに名前が記載されるとともにUbuntu Edgeを1台購入する権利を得られる初日限りの枠。830ドルは600ドルと同じ条件で、10000ドルはUbuntu Edgeの購入権が50台となる。
執筆時、600ドル枠は募集5000人に対し出資者は5042で完売となっている。1万ドル枠も、すでに募集50に対し出資者は3。合計で、目標額の3200万ドルに対し、1割以上が集まっている。キャンペーンは8月21日まで。もし目標額に達しなかった場合はUbuntu Edgeは登場せず、商用のUbuntuスマートフォンにフォーカスするという。端末は2014年4月~5月に出荷予定と記載されている。
それにしても、3200万ドルという目標額はかなり高いといえる。ハイテクガジェット分野におけるクラウド調達の成功例はスマートウォッチの「Pebble」だが、それでも1026万ドル(Kickstarter)だ。Canonicalは製品を競争力のある価格で提供するにはパーツの価格を下げられるボリュームが必要だが、まだ大量生産されていないパーツを選びたかった、と説明している。
Canonicalは6月、Ubuntuスマートフォン実現に向けてキャリア向けのプログラム「Carrier Advisory Group(CAG)」を立ち上げており、Ubuntu Edgeは台数限定での製造によりメインストリームでの訴求を図る位置づけと思われる。なお、どのメーカーが端末を製造するのかなどの詳細は公開されていない。