日本オラクルは7月17日、同社データベース製品の最新版「Oracle Database 12c」の国内提供開始を発表した。新しいアーキテクチャの採用によってデータベースの統合密度を高め、ストレージの利用効率も向上させるなど、“データベースクラウド”を強く意識した製品となっている。
12cの“c”はクラウドの“c”
日本オラクル 専務執行役員 テクノロジー製品事業統括本部長の三澤智光氏は、記者説明会の冒頭、Oracle Database(以下、Oracle DB)製品のバージョン変遷を振り返った。
Oracle DBは、8iや9iではインターネット時代の大量データ/トランザクションへの対応を、10gや11gでは単なるSQLエンジンではなくグリッドコンピューティング・プラットフォームへと進化した。
そして、末尾の文字が「c」へと変更された今回の12cでは、クラウドのマルチテナント環境を強く意識した大幅なアーキテクチャ変更が行われている。
新アーキテクチャで「メモリサイズが約5分の1」に
12cでは効率的かつ管理性の高いマルチテナント環境を実現するために、新たに「マルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)」というデータベース形式もサポートされ、CDB上で「プラガブル・データベース(PDB)」と呼ばれる仮想的なデータベースが構築できるようになった。1つのCDBに複数のPDBが“差し込める”(pluggable)イメージだ。
従来のアーキテクチャでは、データベースごとにメモリを割り当て、バックグラウンドプロセスも個々に実行されていた。しかし、新しいアーキテクチャでは、CDBに対してメモリ割り当てを行い、個々のPDBはこのリソースプールやバックグラウンドプロセスを共有する。そのため、ITリソースの利用率が大幅に向上し、データベースの統合密度をさらに高めることができる。
三澤氏は、冗長度の高い従来のハイパーバイザ型サーバ統合と比較して、必要なメモリサイズは「約5分の1で済む」と述べた。なお、個別にメモリ割り当てを行わない点を除いて、PDBは通常の(従来型の)データベースと同じように扱えるという。
この新しいアーキテクチャは運用管理面でも利点を持つ。従来、Oracle DBへのパッチ適用やアップグレードの作業はシステムごとに行う必要があったが、新しいアーキテクチャでは、CDBに対して1度行うだけでよい。データベースのバックアップ作業も同様で、CDB全体でまとめてバックアップを取得できるようになっている。
また、PDBはCDBに差し込むだけでなく“抜く(unplug)”こともできる。これにより、異なるCDBへの移動やクローニングの処理が従来よりも容易になった。
なお、12cでは上述した1つのCDBに複数のPDBが接続する「マルチテナント環境」のほか、1つのCDBに1つのPDBだけが接続する「シングルテナント環境」や、従来どおりの「非CDB環境」も利用できる。また、管理ツール「Enterprise Manager 12c」が備えるウィザードを使って、既存の非CDBデータベースをPDBに変換することも可能だ。
データ利用頻度に基づき自動で圧縮処理
12cには情報ライフサイクル管理の自動化機能「Automatic Data Optimization(ADO)」および「Advanced Compression」も備わる。管理者が設定したポリシーに基づき、データの利用頻度に応じて圧縮やアーカイブ、ストレージ間移動の処理が自動実行されるため、ストレージの利用効率が向上する。
データの利用頻度はブロックレベル、表レベル、パーティションレベルで自動的に追跡される。また追跡内容は詳細であり、問合せや全表スキャン、索引検索とは別に、変更(挿入、更新、削除)がブロックレベルで追跡される。
そのほか、ユーザーの権限に応じて機密データ(クレジットカード番号や電話番号など)の表示をマスキングする「Data Redaction」機能も備える。アプリケーション側で制御することなく、例えば「このユーザーに対してはカード番号の下4桁だけ見せる」といった動的なマスキングが実行できる。
また、遠隔地間のデータベースレプリケーションにおけるデータ損失やパフォーマンス低下を防ぐためのソリューション「Active Data Guard Far Sync」も実装されている。「これまで拠点間が100kmを超える場合はレイテンシの問題があった。12cは“地球規模”でのハイアベイラビリティが実現する、唯一の製品」(三澤氏)。
オラクルでは7月から9月にかけて、OTNなどを通じて12cに対応したオンライントレーニングコンテンツを公開していく予定。「1年をかけて、10万人の技術者を育成していく」(三澤氏)。さらに12cのベストプラクティスも展開していくとの戦略を述べた。