スマートフォンの市場を開拓してきた米アップル。盤石なアップル経済圏を築いてきたが、ここにきてパートナー企業に変化が出始めている。
米アップルへの過度な依存を見直す動きが出ている。日本の部品メーカーをはじめ、これまでアップル経済圏で活動してきた企業が徐々に距離を置き始めている。
米調査会社IDCが4月25日に発表した2013年第1四半期(1~3月)のスマートフォンの世界出荷台数は、前年同期比41.6%増の2億1620万台。メーカー別の出荷台数ではサムスンが7070万台と圧倒的で、2位アップルの3740万台を大きく引き離した。2012年末以降、iPhone向け部品の受注が減速してパートナー各社の業績に影響を与えた「アップルショック」を教訓に、日本企業も新たな受注先の開拓に奔走してきた。
ソニー、東芝、日立製作所の子会社3社が合併した中小型ディスプレー専門企業のジャパンディスプレイは6月3日、千葉県茂原市の同社茂原工場内にスマートフォンやタブレット向けの高精細ディスプレーを生産する新ラインを立ち上げた。同社は主要取引先のアップルのほか、中国ファーウェイをはじめとしたアンドロイド陣営への液晶パネルの提供も行い新たな取引先の拡大を狙う。
また、電子回路基板の製造や販売を手掛けるメイコーが5月21日に発表した2013年度の経営方針によると、中国湖南省にある同社武漢第二工場では中華・アジア系スマートフォンメーカ向けにプリント基板を提供する構えだ。同工場での2013年度の売上高は228億5900万円を見込んでいる。
EMS(受託生産製造サービス)の世界最大手の台湾ホンハイは、米国のモジラ財団と提携してスマートフォン向けOS「Firefox OS」を同載したスマートフォンを開発すると発表。これまでアップルと蜜月の関係にあった同社が、iOSやアンドロイドに加え、第三極のOSと提携することで、アップルへ一極集中することによる経営リスクを回避すると見る向きもある。
サムスンは「ギャラクシーS4」をはじめ、スマートフォン市場での優位性を高めるため、取引先の囲い込みに力を入れる。アップルを中心に経済圏を成立させていたパートナー企業の勢力図は大きく変わることが予想される。