新商品を発売するにあたって、いまやソーシャルメディアはプロモーションになくてはならない手段のひとつ。だが、ソーシャルメディアで口コミが広まれば、それだけでいいのか? こうした今までの新商品発売にあたっての悩みを解決する鍵はずばり、「ストーリー」によるデータ分析だ。
「人の手で分析し、ストーリーに基づいた過程に分けることで、商品の課題が具体的にわかるようになったんです」と言うのは、ソーシャルメディアを中心にした分析・活用の専門集団・ソリッドインテリジェンス代表取締役の林健人氏。いわゆるビッグデータ活用として、ソーシャルメディアやPOSなどいくつかのデータを分析し、それを指標化して、クライアント企業の課題解決を図っている。
「接触」「体験」「ファン化」で消費者を独自分類
「ストーリーに基づいた過程の分析」とは、その新商品に対して「接触」「体験」「ファン化」の3段階に分けて、数値を出していくことだ。「接触」とは新商品を知っていること、「体験」とは新商品を買ったということ、そして「ファン化」はリピーターとなっていることを指す。
もちろん、これまでの新商品発売後の調査でも、POSの結果や消費者へのアンケートから売れ行きや商品の評価は大体把握することはできた。しかし、さらにあいまいで細かな情報、つまり「何がきっかけになって購入したのか」「試してからファンになったのか」「ファンになった人はどんな人か」などがつかみづらい。しかも、発売後1週間~1ヵ月程度で販促施策を打つためには、POSデータやアンケートの集計を待っている余裕はない。
そこで、ソリッドインテリジェンスでは大手飲料メーカーの新商品販売に際して、Twitterなどのソーシャルメディア上の投稿データをビッグデータとして分析し、「接触」「体験」「ファン化」のプロセスごとに、投稿数ではなくアカウント数で数値を出し、グラフ化した。新商品の競合となる、同じジャンルの代表的な飲料ブランドに対しても同様にグラフ化することで、ジャンル内の商品それぞれの特性がわかるようにした。
「接触」した人が多くても「ファン化」していない!?
上の比較グラフがそれぞれの商品比較だ。今回分析対象となっている商品Aは「接触」数こそ商品Bの5倍以上も多いものの、「接触」した人が「体験」に進み、さらに「ファン化」まで進む割合ではそれぞれ13.44%、3.84%と、商品Bの43.61%、15.39%より低いことが判明。
同じように「接触」数が多い商品Cが、「体験」されることが多く、「ファン化」も比較的多いことを見ても、商品Aは「体験」「ファン化」してもらう施策が必要ということがわかる。
「通常のソーシャルメディアでの浸透度を調べるなら、ブランド名で検索すればいいわけですが、それでは『接触』した人しかわからない。我々はそのデータにさらに独自に『体験』『ファン化』というストーリーを考え、それぞれの過程のワードを設定して、各過程の割合を目に見えるようにしたのです」
林健人氏が率いるソリッドインテリジェンスが「ストーリー化」するにあたって、「体験」にあたる抽出条件には「買った」「飲んだ」「美味しかった」など具体的な体験ワード、「ファン化」にあたる条件には「いつも」「また」「今回も」「愛飲」などを加えている。
さらに、具体的なつぶやきの内容がわかることで「帰宅してから、家族で食事しながら飲んだ」など、どういうシチュエーションで、誰とどこで飲まれているのか、といった消費者像もつかむことが可能だ。