コンタクトセンターのやりとりを録音するというのは一般的だが、Webサイトで同じような取り組みをしているところはあまりない。パケットキャプチャから、こうしたWebインタラクション収集というニーズに取り組むのが、クラリサイトである。
やりとりをまるごと記録・再現できる
2009年に設立されたクラリサイト(Clarisite)は、Webサイトとユーザーとのやりとりを記録する「EyeView Tr」という製品を展開するイスラエルのITベンダーだ。クラリサイトのCEOであるヨーブ・シュレイバー氏は、「電話には録音する手段があるが、Webのイントラクションはそういった手段がなかった。われわれが提供するのは、こうしたWebのレコーディングだ」と語る。
EyeView Trの特徴は、Webサイトのやりとりをまるごと記録し、再生できるという点。まさにTr(Time recorder)という名前の通りだ。こうした機能の必要性について同氏は、Webページのフォームの例を挙げる。「たとえば、Webフォームで入力されるデータは、RDBに格納されるが、Yesの値だけを記録するだけでは意味がない。あくまで質問に対する答えといっしょに取得しないと理解できない。やはりコンテキストが必要になる」とのこと。顧客が何を見て、YesとNoを選択したのか、OKしたのかをきちんと記録することができる。ユーザーはGUIのコンソールから、記録したセッションを探し、まるごと再生することが可能だ。
アプリケーションレイヤーではなく、パケットキャプチャをベースにWebのやりとりを記録・再生するのはユニークなアプローチだ。利用形態は、スイッチのSPANポートからデータをキャプチャし、アプリケーションサーバーに取り込む形になる。「Webサイトにコードを埋め込んだり、ソフトウェアをインストールする必要がない」(シュレイバー氏)ということで、導入も容易だという。
日本でも発表されたばかりの「EyeView Tr for Mobile」は、PC用のWebブラウザだけではなく、iOSやAndroidなどモバイルデバイス向けのブラウザにも対応。スマートフォンやタブレットでのサイト利用が増えている中、多くのユーザーに受け入れられそうな機能だ。
最新版ではモバイル版を提供
技術的にユニークなのは、HTML5やFlash、AJAXなどの技術をサポートし、さまざまなWebブラウザで疑似動作させることが可能な点。パケットキャプチャするとデータが膨大になるため、特許の圧縮技術をかけることで、保存領域を最大95%小さくすることができるという。
「さまざまな種類のデータ収集方法があるが、ユーザーがやっていることをそのまま記録するのがベストだ」(シュレイバー氏)とのことで、「言った・言わない」などの顧客間とのトラブルシューティングやコスト削減、顧客のリテンション率を高める効能がある。銀行や保険などの金融機関を中心に、政府機関、コマース、通信事業者などをターゲットにしている。
日本では東陽テクニカとパートナーシップを締結し、展開を進める。東陽テクニカ 情報通信システム営業部 シニアプロダクトスペシャリスト 福沢亮一氏は、「30年来、パケットを取得してきたが、やっていることはトラブルシューティング。EyeView Trで取得しているものはパケットだが、既存のツールと見せ方が違う」とのことで、これまでやっているビジネスと親和性が高いと語る。また、日本では「モバイルアプリケーション開発で使えるように、EyeView Tr for MobileをノートPCに入れて提供しようと考えている」(福沢氏)と述べる。