AudioGateとDS-DAC-10を使って
高音質を楽しむもうひとつの方法
- 必要なソフト:AudioGate
- 必要な音源:購入したDSD音源
- 必要なハード:PC、USB DAC、ヘッドフォン
続いて、DS-DAC-10はそのままで、手軽に高音質を楽しむもうひとつの方法を紹介しよう。そう、ヘッドフォンだ。DS-DAC-10で現在流通するほとんどの音源をアナログ変換できるのだから、その先はいつも使っているオーディオ装置でいい。多くの人にとって、一番身近なオーディオ装置と言えば、ヘッドフォンだろう。
ということで、今度はヘッドフォン再生を試してみる。DS-DAC-10は、アナログ出力だけでなく、ヘッドフォン出力も備えているので、ヘッドフォンアンプとしても使えてしまうのだ。
ヘッドフォン端子は標準プラグ仕様なので、ステレオミニ端子のヘッドフォンの場合は変換用のアダプターも用意しよう。そういえば、USBバスパワー駆動だし、サイズも小さい。これならば、PCを持ち歩く人ならば、どこでもハイレゾ&DSD音源を高音質で楽しめるということになる。これはかなり魅力的なのでは?
ヘッドフォンには、ソニーが昨年リリースしたオーバーイヤーの上位モデル「MDR-1R」を選んだ。より洗練されてはいるが、どことなくスタジオモニターの定番だった「MDR-CD900ST」を思い出させるデザインからして気になっていたモデル。実売は2万5000円ほどと、決して高すぎない価格というのもいい。
ユニットは40mm口径の液晶ポリマーフィルム振動板で、4Hz~80kHzの超高域再生を実現。ハウジング上に設けた通気孔で低域再生時の背圧をコントロールし、振動板がスムーズに動けるような工夫も施されるなど、高音質のためにこだわった作りとなっている。
また、耳をすっぽりと覆うオーバーヘッド型として考えても、遮音性がかなり優れていることにも感心した。低反発ウレタンフォームを使ったイヤーパッドの形状の工夫によるもののようだが、高い機密性を実現し、音漏れも低減しているという。
ヘッドフォンでの試聴もまた味わい深い
こちらでは、吹奏楽作品「La Voie TriomPhale」から、ミヨーの「フランス組曲 ノルマンディ」を聴いた。アメリカに渡ったミヨーがフランス各地を紹介するために作った作品で、フランスの土地の民謡を題材にした親しみやすい曲だ。管楽器の音色が艶やかで楽しげに弾む。いくつもの楽器の音色が見事に調和しつつも、じっくり聴き込むとしっかりと音色が分離しており、トランペットやホルン、フルートやオーボエといった音が聴き取れる。
これは、MDR-1Rの忠実感の高い再現によるものでもありそうだ。非常に分解能が高いのに、カリカリの高解像ではなく、むしろ穏やかなくらいなめらかな感触。一音一音をしっかりと立て、ホルンのゆったりとした音の響きも、トランペットの勢いのある音も写実的に再現する。生音らしさがよく出るDSDの感触もよくわかる。
比較試聴用としてWAV(192kHz/24bit)版も購入して比較した。周波数帯域などのスペックはほぼ互角となる。どちらも優れた音質なのだが、リニアPCMの方がよりひとつひとつの音が立つ。個々の音を明晰に再現しているのはリニアPCMだ。
しかし、それぞれの音が溶け合い調和して醸し出されるハーモニーの美しさがDSDに及ばない。ヘッドフォンの方がユニットと耳の位置が近く、音が拡散せずに耳に入るせいもあり、DSDとリニアPCMの違いがよりはっきりと出た。
スピーカーのような楽隊の姿が眼前に広がるイメージは、頭の中に浮かぶコンパクトなものになり、このあたりは好みが分かれるが、ヘッドフォンによるDSDはハイレゾ音源の鑑賞も実に楽しい。
DSDと192kHz/24bitにはたしかに音の差があった、しかし、これは優劣ではなく好みの領域だ。録音の仕方なども含めて好みで選ぶとよさそうだ。
強いて言うならば筆者の好みはDSD。それは曲調が和やかで楽しげなムードの曲だからで、同じクラシックでも「春の祭典」のようなテンションの高さが魅力の曲ならばリニアPCMの方がいいと思うかもしれない。いや、これはヤバい楽しみだと思う。同じアルバムをDSDとリニアPCMの両方を揃えたくなるというコスト負担もあるが、実に面白い。まあ、こういう比較試聴が大好きなのはオーディオマニア特有のものかもしれないので、音楽好きな人などには推奨しないけれど。
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