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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第11回

マイナスのデザイン すぐ感動できるパッケージとは

2013年02月22日 09時00分更新

文● 前田知洋

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 筆者はマジックが仕事。だから、人がイベントを楽しむシーズン、バレンタインデーやクリスマスのときには、ほとんどサービスをする側にいる。そんなスタンスから社会を見回すといろんなことが勉強になる。

 たとえば、レストランで専属のマジシャンをしていた頃は、それはもう、星の数ほどのプレゼントシーンを目撃してきた。そんな繁盛期のレストランの予約は、「18:00~」「20:00~」なんて、映画の上演時間みたいになっていることが多い。だから、デザートの頃になるとテーブルの上に一斉にプレゼントが並ぶことになる。

開封のプロセスのデザイン

 遠目から見ても、ファッションやジュエリーブランドのパッケージは独特な色が使われているから、ブランドがよくわかる。水色の小さな袋だったら、「ヘップバーンの映画で知られた、あの有名な銀製品のブランドね」とか、オレンジ色だったら「馬具からスタートしたフランスの老舗…」、黒だったら「ニューヨークで有名なセレクトショップね」なんてぐあい。プレゼントをもらう相手は、そんな袋の色が記号論として作用し、期待を駆り立てられる。感情のプロセスとしては「わぁ、あのブランドね」→「ドキドキ、ワクワク…」→「わーい!これ欲しかったの!ステキ!」そんな流れになるかもしれない。

フランスの高級宝飾メーカーのショッピングバッグ。独特の色に染められた布が張られた紙が使用されている

 そんな「ドキドキ、ワクワク」の温度を下げないためか、最近は包装紙を使わないパッケージングが多い。そのかわり、ブランド名の入った上質なリボンや箱を肌触りのいいテクスチャーで仕上げられている。高級なブランドでは、中身を見るまでのプロセスや時間を短縮する傾向になってきた。YouTubeなどでiPhoneなどの「開封の動画」が人気なのは、デザインされた開封するプロセス、「ドキドキ、ワクワク」の感情をユーザー同士で共有したいからだ。

マンハッタンからスタートした高級セレクトショップのギフトボックス。映画にもよく登場する

サイトなら情報にたどり着くまでを考える

 そうした、中身までアクセスするプロセスはインターネットサイトやコンテンツでも大切だ。目的の情報にたどり着くまでのプロセスを通じて、サイトオーナーはブランディングを高めようとすることが多い。しかし、そのプロセスが、企業にとって都合のいいもの…、つまり「長く滞在させるためだけ」であったり、ランキングや広告のアクセスを稼ぐためだけの仕掛けがあからさまであれば、ユーザーは反感を持ってしまう。場合によっては、ユーザーは少しでも早く目的の情報にアクセスしたいからだ。

 たとえば、映画のプロモーションサイトならトップページに長めの動画が再生されてもユーザーは好んで見るだろうし、ユーザーサポートのページなら、いち早く目的のアドバイスにアクセスできることがブランディングになる。

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