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分散型NASの第一弾製品となる「Lattus-X」の販売

クアンタム、広域分散可能なオブジェクトストレージ

2012年12月10日 09時00分更新

文● 渡邊利和

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12月7日、日本クアンタムストレージは「ワイド・エリア・ストレージ」製品の新ファミリ「Lattus」を発表。第一弾製品となる「Lattus-X」の販売を開始した。ディスクベースのアーカイブに利用できるPBクラスのオブジェクトストレージ製品となる。

事実上無制限の拡張性

 クアンタムはビッグデータ関連のビジネスで豊富な経験を有し、データ管理ソフトウェア「StorNext」は市場で10年以上の実績を積んできたという。こうした経験を踏まえ、ビッグデータ分野でのリーダーシップをさらに強化するために、同社ではビッグデータ関連で多額の開発投資を行なってきている。その成果となるのが、今回発表された「Lattus」だ。

 概要説明を行なったクアンタム・コーポレーションのワールドワイド・ビッグデータ マーケット・デベロップメント バイス・プレジデントのランス・フキル氏は、「ペタバイト級、さらにそれを超える規模の拡張性をシングルサイトまたはマルチサイトで実現する」「妥当なコストでデータ保護を実現する」「運用コストを下げる」「長期間の耐久性」といったビッグデータを保存するストレージに求められる要件を挙げた上で、既存のディスクアーキテクチャではビッグデータの規模に充分な対応ができず、新たなアーキテクチャが必要となるとした。

クアンタム・コーポレーションのワールドワイド・ビッグデータ マーケット・デベロップメント バイス・プレジデント ランス・フキル氏

 同社が提唱する「ワイド・エリア・ストレージ」は、次世代型オブジェクトストレージとして、事実上無制限の拡張性を備えたフラットなネームスペースに対してHTTP RESTまたはファイルアクセス(NFS/CIFS)を提供するもの。システムを構成するコンポーネントがIPネットワークを介して広域に分散可能な点も特徴で、通信の信頼性の確保のためにファウンテン符号化アルゴリズム(Fountain Coding Algorithm)を採用して前方誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)を実現、データ再送なしで受信側でのエラー訂正を可能としている。同社ではこの方式を宇宙開発計画や携帯電話網などで利用されている成熟した技術だと説明しており、エラーが発生することを前提に設計されたシステムだという。

 また、データ保護のためのアルゴリズムとしてQSpreadを用いる。図のとおり元のデータを復元するために必要な計算式を用意しておくことで、受信側でのデータ復元を可能にする。この例の場合、“7”と“5”という2つの数値を復元可能とするために、7と5が解となる2元1次方程式を3通り用意し、3カ所に分散してある。解を求めるためには2元1次方程式が2つあればよいが、3つあるのは当然冗長性の確保のためだ。実際のデータは単一の数値ではなく一定サイズのデータの塊(チャンク)なので使われているのは2元1次方程式という訳ではないが、考え方の基本はこのようになる。

QSpreadのアルゴリズム

分散型NAS「Lattus-X」

 最初の製品となる「Lattus-X」は、分散型NASとして利用可能なストレージで、「Lattus S10ストレージ・ノード」「Lattus C10コントローラー・ノード」「Lattus A10アクセス・ノード」の3種のコンポーネントで構成される。システム当たり最低3台のC10が必要となり、S10は0.5PBから段階的に数百PBまで拡張可能。ノード間はEthernet(10GbE/1GbE)で接続される。

 前述の通り、各ノード間はIPネットワークで接続されるため、必ずしも単一のラックに収容される必要はなく、広域に分散させることも可能だ。ただ、このアーキテクチャではプライマリーディスクとして利用するにはオーバーヘッドが気になると言うこともあり、同氏は「コストとアクセスタイムの両面でプライマリーディスクとニアラインテープの間に位置づけられる製品」だとしている。

Lattus-Xの構成

 なお、Lattus-XでNASとしてのファイルアクセスを実現しているコンポーネントはLattus A10だが、これを利用せず、代わりに同社のStorNextから直接管理可能としたタイプの「Lattus-M」も2013年第1四半期に提供開始予定だという。

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