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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 ― 第105回

冨田勲「イーハトーヴ交響曲」世界初演公演インタビュー【前編】

初音ミクと宮沢賢治に共通するもの

2012年11月10日 12時00分更新

文● 四本淑三

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 初音ミクとの共演で話題の冨田勲「イーハトーヴ交響曲」初演まで、2週間を切った。すでにチケットは全席完売という状態だが、このコンサートがどういった意図のもと行なわれるのか、その成り行きに関心を持っているのは、実際にチケットを手に入れられた幸運な方だけでないだろう。

なお、この取材は、まだ暑いさなかの今年8月14日、軽井沢にある冨田さんの別荘にて行なわれた

 そこで、このコンサートの総指揮に当たっている冨田勲さんご本人に、交響曲のテーマとなっている作家・宮沢賢治への想いや、イーハトーヴ交響曲の目指すもの、そしてモーグ・シンセサイザーと初音ミクの関係などを伺った。

 初音ミクは「注文の多い料理店」「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」といったモチーフの重要な箇所に登場する予定。また、プログラムにはないサプライズ曲も用意されているという。まずは、その初音ミクの話から。


日本最年長のボカロP誕生

―― 今回、初音ミクが登場するということで、チケットはすぐなくなってしまうと思うんですが。

冨田 ただ、初音ミクのために書いたシンフォニーではないものですから、それを当て込んで、ライトペンで皆がこんなになってもね(腕を上げて)。

―― あれっ、よくご存知ですね。初音ミクのコンサートの様子を。

冨田 いや、行ったんですよ。それを見て、これは面白いなあと思ってね※1。初音ミクというのはアニメみたいなものかと思ったんですけど。そうじゃなくて、立体感があるんですよね。それとね、アイドルが出てきた時と同じくらいの、すごい盛り上がりになるんですね、会場が。あれはね、僕はだいぶのめり込んだなあ。

冨田勲さん

―― そのライブの様子にですか?

冨田 うん。それとイーハトーヴ交響曲のことも考えていましたから。

―― 歌手として適役だと。

冨田 そう。というのは「注文の多い料理店」の中には、人物は出てこないわけですよ。店のどこからか、声だけ聞こえてくるんですよね。だから、エンターティナーがどうしても必要だと思ったんです。それも怪しげな。歌詞も僕が書いたんですけれども。「自分は小さなパソコンの中に閉じ込められている、そこから出られない、だからこれはかりそめのボディーなんだ」と。宮沢賢治の発想を延長した感じで、初音ミクを登場させることを考えているんです。「結局、あなたがた(料理店に入った猟師たち)もここから出られないんです」みたいなことの暗示に出てくるわけね。

―― じゃあ、そこは作詞・作曲 冨田勲ということになるわけですよね。作詞までやられるのは珍しくないですか?

冨田 だって自分でやっちゃったほうが。人に頼むとちょっと違うな、みたいなところが出てくるから。

―― つまりボカロPってことですよね?

冨田 ボカロPって?

―― 初音ミクに歌を歌わせるプロデューサーという意味で、ニコニコ動画にボーカロイドの曲を投稿する人はそう呼ばれています。

冨田 そうか、そういうことになるのか。そうですよねえ。

―― 日本最年長のボカロPですよ、たぶん。

冨田 最年長だろうなあ、80ならねえ。

※1 冨田さんは2012年3月8日、TOKYO DOME CITY HALLで開かれた「初音ミクライブパーティー2012(ミクパ♪)」をご覧になっている。

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