身体やインターフェイスの動きについて考える
昔は、テレビや劇場などでは「目にもとまらぬハヤワザ(はやわざ)をご覧ください」なんてセリフでマジシャンはよく紹介された。でも、本当にマジシャンは見ている人の目よりも速く指先などを動かすことができるのだろうか?
ガッカリさせて申し訳ないけれど、視神経は一番反応が速いから、マジシャンも含めて人間は目の動きより速く身体を動かすことはできない。それでも、観客がマジシャンの動きに騙されてしまうのは、自然さ、緩急、スムーズさといった要素を訓練で身につけているからだ。目を騙すというよりも見る人の脳を騙していることに近い。
オールドファッションのマジックに「ステレオの消失」というマジックがあった。これは舞台のうえのステレオに布をかけ、舞台の中央まで運び、布をヒラリとすると見事ステレオが消えているというマジックだ。観客はマジシャンが両手で抱える布の中から音楽が聞こえることで、ステレオがまだそこにあると思っているが、その頃にはもうマジシャンの術中にはまっている。
マジック以外の話を例にすれば、iPhoneやiPadに使われるiOSでは、メニューを下や上にいきどまったときに見せる弾むような動き、ラバーバンドエフェクトが用いられている。他にも、ソフトウェアキーボードを押したときのクリック音も物理的なボタンを押しているかのような錯覚をユーザーに感じさせる。ドアや引き出しを勢い良く開けると反動で少し締まろうとする動きや、キーボードを押すとカタカタとなる自然現象、物理現象に似た動きを再現することで人間は作業に集中することができる。
人間はどんなときに怪しいと感じたり、集中力がそがれるか?
マジックが目の前の観客にバレてしまうことがある。僕も新米マジシャンの頃は、観客に「ちょっと、そこアヤシいなぁ…」なんていわれてヒヤヒヤした。具体的には筋肉の緊張や動きにスムーズさなかったり、ヘンに急いでみたり…。その反対で、ゆっくりでも動きが滑らかであれば、タネや仕掛けに観客の意識がいくことはあまりない。
人間が何かの動きを見て「アレ?!ちょっとおかしいな」と感じるのは、以下がポイントだ。
●スムーズでない動き
●緩急がない
●呼吸が上手く合わない
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