本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
まだ見ぬ「Fusion Drive」を予想する
今回発表された一連の新製品のうち、Mac関連でひときわ目を引いたのは「Fusion Drive」だろう。フラッシュストレージとHDDを組み合わせた、広義のハイブリッドHDDであり、Fusion Driveの場合は128GB フラッシュストレージと1TB/3TB HDDのコンビネーションとなる。
説明によれば、システム(OS本体)やアプリケーションはフラッシュストレージに置き、一般的な文書類はHDDに保存するという。実際にどのような構造となっているかは不明だが、まず筆者の脳裏に浮かんだのは、UNIX系OSでよくある「ディスクスライス」の考え方だ。
ディスクスライスとは、ファイルの用途や利用頻度に応じて保存先(ディスク/パーティション)を分けること。たとえば、/bin
や/Applications
などの領域は、一度書き込むと読み取りばかりになり書き込みされるる機会は少ないが、/home
や/Users
などユーザ領域は頻繁に書き込みが発生する。前者はそれほど容量は必要ないが読み出し速度が重要で、後者は容量の大きさが重視される。前者をフラッシュストレージ、後者をHDDとすれば、アクセス速度と容量のバランスを考慮したディスクスライスが実現する、というわけだ。
しかし、ディスクスライスの方法では、発表会イベントであった「アクセス頻度の高いデータはフラッシュストレージエリアに、それほどでもないデータはHDDエリアに」という説明十分に満たせない。/Applications
のように、一度書き込まれてしまえば変更が少ない領域はさておき、ホームフォルダー(/Users/****
)などサブフォルダーごとに用途が大幅に異なる領域は、ディスクスライスではうまく解決できない。
ところで、現在市場に出回る“ハイブリッドHDD”には大きく2つの種類がある。5年ほど前に普及し始めた第1世代ハイブリッドHDDは、HDDにキャッシュ用フラッシュを別途追加したもので、ドライバーソフト ― たとえばWindows Vista/7の「Windows ReadyDrive」 ― が必須とされた。現在主流の第2世代では、SSD(その中身であるNAND型フラッシュメモリ)を直接HDDに内蔵、インターフェースが一本化されたことにより単一のストレージとして認識可能となり、特別なドライバーは必要なくなった。
時期からすると、Fusion Driveは後者の第2世代と推定されるが、市販品とはスペックが異なる。市販品の多くはフラッシュメモリ部分が64GB以下だが、Fusion Driveは128GBと大容量だ。Mac miniにも搭載されることからすると2.5インチと推測されるが(となるとiMacは薄型に伴い2.5インチHDD搭載の可能性も?)、Mac専用に設計された可能性もある。
何よりヒントになるのは、Appleが公開したFAQページ(Mac mini (Late 2012) and iMac (Late 2012): About Fusion Drive)かもしれない。ここに掲載されたDisk Utilityのスクリーンショットには、「Logical Volume Group」の文字が。Fusion Driveは、OSの機能により1台の論理ドライブとして構成されているのだ。
となると、Fusion Driveではディスクスライスという旧来の方法ではなく、OS側の設定でどのファイル/ディレクトリをフラッシュストレージエリアに置くか決定している、と考えるのが妥当になる。ターゲットディスクモードでFusion Driveをマウントする場合、OS X Mountain Lion 10.8.2以降が必要となる点も、OSの機能で(ソフトウェア的に)論理ドライブを構成していることの証拠といえるだろう。
Fusion Drive対応モデルは、iMac(Late 2012)iMacとMac mini(Late 2012)の上位モデルのみ。Mac miniは早ければ11月初旬の出荷だが、新iMacは12月に出荷開始とのことで、疑問が解明されるのはしばらく先になりそうだ。
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