メーカーの“落としどころ”が問われる
では最後に、消費電力と発熱をチェックしてみたい。消費電力の測定には「watts Up? PRO」、GPU温度の測定には「GPU-Z」を用意し、PC起動10分後の値とBattlefieldテスト開始から10分後の値を測定した。
前半部分でも述べた通り、今回はGIGABYTE製オーバークロック版しか準備出来なかったため、GTX660Tiすべてがここでお見せする傾向だとは断言できない。ここだけは注意して見ていただきたい。
アイドル時の消費電力はRadeon勢にまだ勝てないが、対GTX560TiやGTX670でもわずかに消費量が下がっていることがわかる。メモリーコントローラーが少なくなったことも関係していそうだ。
続いてゲーム中の消費電力はGTX670より13W低い242W。性能面ではほぼ互角なHD7970よりも約40W低いという点は、さすがKepler世代というべきだろう。ただし、あの大飯食らいと言われていたGTX560Tiの消費電力より大きくなってしまった。
GPU温度に関しては予想外の結果となった。3連ファンを装備するGTX670カードが最も低いのは順当だが、2連ファン装備のGTX660Tiの温度は、ゲーム中に80度を超える。今回用意したGeForce系カード3枚はどれも冷却機能強化モデルだが、GTX660Tiだけこんな高い温度を示すのは何かのエラーを疑いたくなる。
2012年09月13日追記
記事掲載後、今回検証したビデオカード「GV-N66TOC-2GD」のGPU温度が明らかにおかしいとGIGABYTEからも指摘があった。個体不良(あるいはヒートシンク装着時の作業ミス)の疑いがあったので、新たにビデオカードを借り受け、再度検証してみた。
すると、GPU温度はピーク時でも67度と、クーラーの性能を考えれば順当な結果が出た。560Tiや670とほぼ同じ温度を維持していることから、660TiのGPU温度は極端に高いわけではないことが判明した。
記事初出時の誤った情報で、読者や関係者各位に誤解やご迷惑をお掛けしたことを、この場を借りて深くお詫びしたい。
最大の敵は身内だった
格上のGTX670に近い性能を持ち、状況次第ではHD7970をも凌駕してしまうGTX660Tiの性能は凄いと言わざるを得ない(スペックを見れば順当だが)。
しかし一番の問題は価格だ。現在GTX670の最安値は3万3000円前後でボリュームゾーンは3万円後半。これに対しGTX660Tiは(初物価格ではあるが)オーバークロック版が3万2000円前後、リファレンス版なら2万8000~2万9000円といったところ。GTX670より5000円安くて、GTX670と大差ない性能と考えればコストパフォーマンスはかなり高いが、ここまでの性能を必要とするゲームをやるなら、もう少しがんばってGTX670を選んだ方がお得だろう。逆に軽いゲームをやるなら、底値に近いGTX560Tiの方が手軽だ。
ただ、少し先のスケジュールを見れば、10月にはBattlefield 3と同じエンジンを使ったFPSの最新作「Medal of Honor: Warfighter」、来年には「Crysis3」も控えている。これらのタイトルをにらんでGTX660Tiを買うなら、慌てて各ショップの通販サイトに突撃しなくてもよいのではなかろうか。
おまけ:真の本命はGTX660?
今回はGTX660Tiの下位モデルについては正式なアナウンスはなかったが、GTX660搭載を匂わすリリースを出して話題になった日本エイサー製「Aspire PREDATOR AG3620-H76F/GL」(関連記事)に少し触れることができた。ベンチを回すことはできなかったが、「GPU-Z」でスペックをチラっと確認することはできた。
注目したいのはメモリーバス幅やROP数はGTX660Tiと同じだが、SP数が1152個と、GTX660Tiより192個(つまりSMX1つ分)少ない点だ。さらにコアクロックは824MHz、ブースト時889MHz、メモリークロックは5.6GHz相当と、ミドルクラスと言うに相応しい“大人しめ”なスペックになっている。さらに補助電源コネクターは6ピン1系統! これまで補助電源1系統で養えるGPUでゲームに耐えるものといえばHD7850のみだったが、これからはGTX660も加わってパーツ選びがより楽しくなりそうだ。
GTX660の正式発表は最速で9月初旬という噂が流れている。いよいよお手ごろ価格でもフルHDゲーミングに耐えるビデオカードの盛大な世代交替劇の幕が切って落されそうだ。
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