マイクロソフトのコンピテンシーがITビジネスを加速する
パートナー3社に聞いたコンピテンシーの真の価値
2012年07月10日 08時00分更新
コンピテンシーの特典で大手と取引できた(島田氏)
TECH大谷:ずばり聞きますが、コンピテンシーはビジネスの役に立っていますか?
ディカバリーズ 島田氏:弊社はソフトウェアアシュアランスの特典であるSDPS(SharePoint Deployment Planning Services)という制度を使って、仕事を受注できたので、ビジネスの役に立っています。われわれのようなベンチャーがいきなりエンタープライズのお客様と取引するのは難しいので、マイクロソフト自体がSharePointの導入支援サービスとして展開しているSDPSはありがたかったです。
TECH大谷:実際の事例にもつながっているようですね。
ディカバリーズ 島田氏:はい。Share Pointを用いて職員ポータルのリニューアルや広報課の申請業務の効率化を実現した豊島区役所様の事例は、SDPSがきっかけでした。
TKNS 武田氏:特典という面だと、デモ用のライセンス付与は役立っています。先ほど話したように、私たちもソリューションを実演販売しているので、デモ環境は必須です。こうしたときにライセンスの相談ができるので、助かります。
TECH大谷:TKNSさんも事例にもつながっているようですね。
TKNS 武田氏:仮想デスクトップ含めて新しい取り組みを進めたフタバ様の事例などは、マイクロソフトさんの協業セミナー支援プログラムでセミナーに来ていただき、受注に結びつきました。現在掲載されている事例自体も、Midmarket Solution Providerというコンピテンシーの特典で取材してもらったものです。ビジネスに直結しているいい例です。
TECH 大谷:NECラーニングさんはやや立ち位置が違いますが、コンピテンシーのメリットはどう考えていますか?
NECラーニング 山崎氏:弊社はビジネス上、コンピテンシーやMCPは必須になるのですが、認定トレーニングテキストが使えるとか、SA(ソフトウェアアシュアランス)のトレーニング受講券を弊社でご利用いただけるとか、Learningコンピテンシーならではの特典は大きいです。あと、事例アワードでもここ5年で4回トップを取らせていただいていますので、コンペになるとすごくアピールできます。
TECH大谷:トレーナーの立場から見て、コンピテンシーを取得するメリットってなんですか?
NECラーニング 山崎氏:コンピテンシー取得の前提となるMCPをきちんと勉強すると、まんべんなくスキルがつくんです。業務でやっていると、あるところはものすごく詳しいのに、思わぬところを知らない方とかけっこういます。そこで「これを使えば一発でできる」というのを共有するのが、トレーナーの醍醐味でもあるのですが、コンピテンシーを持っている会社はその幅広いスキルと経験を持つ技術者を 保有していること明確にアピールできます。
製品やサービスの多さを逆手にとったすごい制度(山崎氏)
TECH大谷:前回の記事でも書いたのですが、他社ではそれこそプラチナ、ゴールド、シルバーしかないのに、マイクロソフトのコンピテンシーは現在29分野もありますよね。ものすごく細かく設定されている。これであればパートナー自体も分野を差別化できるし、けっこういい取り組みだと思うんです。
NECラーニング 山崎氏:マイクロソフトさんはじめ、大手は製品やサービスが多岐に渡っていますので、本来であればとても選びにくいはずなのに、それを逆手にとってコンピテンシーを細分化している。その結果として、ユーザーさんは自社が導入したいソリューションをどこに頼めばよいのか、とても明確になりますよね。その点で、この制度はすごいと思います。
TECH大谷:確かに、エンドユーザーにとっても得意分野がわかっていいですよね。
NECラーニング 山崎氏:しかもバージョンアップがきちんと行なわれているので、昔は強かったというのは通用しません。確かに、コンピテンシーを取得する側は大変なのですが、弊社はそれがビジネスという面もありますので(笑)。
TKNS 武田氏:他のハードウェアメーカーのパートナー制度と比べると、サポートや優待も選べますし、充実していると思います。確かに維持するのは大変ですけど、事例や取得数など目標は建てやすいです。競合が現れたときに、差別化になります。
ディカバリーズ 島田氏:われわれのようなベンチャーが差別化を行なうってとても難しいです。シルバーだったら、(該当する会社が)100社とか出てきて、手を挙げてもユーザーさんに振り向いてもらえない。その点、コンピテンシーのような強みがあるのは、ありがたいです。
TECH大谷:きちんと目立てる制度ということですね。
コンピテンシー取得業者からしか買えないでもいいくらい(武田氏)
ディカバリーズ 島田氏:もう1つのメリットは、コンピテンシーを元にパートナーを探せるという点です。われわれはコンサルティングがメインなので、システム構築とかはおつきあいのあるSIerさんに頼むのですが、お客様の要求がもう一歩踏み込んだ場合や別のソリューションが必要な場合もコンピテンシーが活きます。
TECH大谷:エンドユーザーとIT業者という関係だけではなく、IT業者同士の横つながりでもコンピテンシーが活用できるということですよね。
NECラーニング 山崎氏:横つながりは大きいです。マイクロソフトさんからは毎年、パートナー向けのイベントに招待していただいているのですが、そこで得た人脈でビジネスにつながっていることが多いです。私から紹介したパートナーから、またお仕事の紹介が戻ってくるとか、まさにパートナーネットワークをフル活用させてもらっています。
ディカバリーズ 島田氏:確かにうちは開発も、トレーニングもやっていないので、パートナーの横つながりで探したりしています。
NECラーニング 山崎氏:足りないところを補うという点でも、いい制度ですね。
TECH大谷:最後にマイクロソフトのパートナー制度の評価や要望などをお聞きしたいのですが。
ディカバリーズ 島田氏:マイクロソフトさんも製品をいろいろ出していますが、開発や構築をしてくれるパートナーがいなければ、ライセンスも売れません。IT業者側も単にパートナーというだけでは案件は来ないので、努力を繰り返さなければなりません。マイクロソフトのパートナー制度は、そのお互いの努力がきちんと報われる制度だと思っています。われわれも来年はゴールドの取得を目指しています。
TKNS 武田氏:私はライセンス認証のときに「この製品はきちんとコンピテンシーを取得した業者に導入をおねがいしてください」くらい出してもらってもよいと思いますよ(笑)。あと、コンピテンシーの制度をまだ知らない方も多いので、もっと認知度が上がるといいなと。
NECラーニング 山崎氏:確かに私たちが普段おつきあいしている方は、コンピテンシーの制度を知っている人が多いので、そうでない方に拡げていく必要はあるかもしれませんね。
TECH大谷:われわれのようなメディアも、賢い導入方法としてコンピテンシーをきちんと読者に解説していかないとですね。本日は、ありがとうございました。
今回お三方に話を聞いて感じたのが、マイクロソフトのパートナー制度が、ビジネスを伸ばすためのシステムとして機能しているという点だ。単なる「同業グループ」でもなければ、ベンダーが「パートナーに売ってもらう」という上下関係もない。ビジネスを伸ばすために真剣に取り組んでいる企業が報われるべく、マイクロソフトができることをする。そして、両者の間に絆が生まれるという、とてもシンプルな関係が見て取れるのである。また、マイクロソフトとパートナーという「縦のつながり」だけではなく、コンピテンシーによってパートナー同士の「横のつながり」が生まれているというのも発見であった。今後の国内市場やグローバル化で勝ち残っていかなければならないすべてのIT業者が注目すべき取り組みといえるだろう。
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