ソニーの手ブレ補正はやっぱりスゴい!?
最後にソニーの上位モデル「HDR-CX720V」について紹介しよう。従来の手ブレ補正は、光学系のなかに補正用のレンズがあって、そこだけを動かすことで補正を行なっていた。しかし、本機で採用された「空間光学手ブレ補正」は、撮像素子を含む光学系全体を動かすことで手ブレを補正するという、光学手ブレ補正の最先端と言えるもの。
電源を入れた状態でレンズをのぞき込んでみると、ボディの揺れに合わせてレンズが動いているように見える。カメラボディー内でレンズが動くことで、ボディーに伝わる外部の揺れが光学系に伝わらないような構造になっているわけだ。
このレンズの動きはかなりユニークで、特殊なダンパーでフローティングされているのがよくわかる。
この効果は、手ブレ補正だけでなく、光学系のズレによる明るさや解像度の劣化を抑える効果もあり、より高品位な映像撮影が行えるメリットもある。ここまでくると、映画撮影用のステディカムにかなり迫っていると感じる。
ソニー「CX720V」で歩き撮り
キヤノンのHF-M52で歩き撮り
CX720Vは前述の通り、別の場所で撮影した映像になる。この歩き撮りのブレの少なさは、撮影時に液晶モニターを見ていてもはっきりとわかるほどで、自分は歩いているのに、映像はするすると滑っているような雰囲気になり、ちょっと違和感を感じてしまうほどだ。
CX720Vなら、きちんと手首を固定して念入りに撮影すれば、映画のようなスムーズな移動撮影ができるだろう。鮮明な映像とあいまって、ビデオカメラを使い慣れた人なら、ちょっとびっくりするような映像に感じるはずだ。
CX720Vで観覧車を撮影
空間光学手ブレ補正非搭載機種(CX560V)で観覧車を撮影
さらに空間光学手ブレ補正は、ズーム時の手ブレ補正にも有効だ。上の動画はCX720VとCX560V(空間光学手ブレ補正を搭載しない機種)で、観覧車が回転している様を方手持ちで撮影した様子だが、CX720Vではあまり手ブレを感じない。
手ブレ補正は、まるで映画のように三脚に乗せたカメラをレールの上で滑らせたような映像が撮れることが理想ではあるのだが、ソニーの空間光学手ブレ補正はそれにかなり近づいたと感じた。気軽な手持ち撮影では強力な武器になるだろう。欲張りな希望としては、さらに小型化を推し進め、ミドル以下のモデルにもぜひ採用してほしいことだ。
爽快ですっきりとした画質も魅力
CX720Vはソニー独自の「Exmor R CMOS」センサーの搭載や、画像処理エンジン「BIONZ」など、同社の高画質技術がしっかりと継承されている。レンズにカーツツァイスレンズが採用されているのも上級モデルならではだ。
その画質はソニーの持ち味とも言えるすっきりとした爽快感のある映像で、精細感が高いこともあり鮮度の高い映像に感じる。1080/60pの解像感の高さもよく出ている。
色の再現については、リアルさを損なわない範囲で鮮やかさがしっかりと出たバランス。印象的だったのはやや日が陰りだした夕刻になると、色合いがしっとりとした表現になったこと。
上級機では定番のマニュアル操作もきちんと備わっているので、直射日光下の明るい環境では積極的ゲイン調整などしてやると良い画が撮れるだろう。
夜の街や暗所での撮影はノイズ感の少なさが印象的。暗部の再現性なども十分で、かなり低照度撮影の実力も高い。暗めの映像の階調性の豊かさなども抜群だった。
各社の技術革新はすごい勢いだが
手ブレ補正はまだソニーが優位か
各社の最新モデルでの手ブレ補正はかなり進歩してきており、これまで優位に立っていたソニーもうかうかとはしていられないと感じた。そのソニーも空間光学手ブレ補正という新たな武器を手に入れており、まだまだ開発競争は続きそうだ。
ただし、今後はいかに自然な歩き撮り映像にするかという、補正の具合の微妙な調整などが重要になってくると感じた。ソニーのCX720Vの手ブレ補正は驚くほど優秀だったが、あらゆる揺れをビタッと止めてしまうとそれはそれで不自然な歩き撮りになってしまうような気もする。歩いている雰囲気を残したまま、不快な画面の揺れをどう抑えるかがポイントだ。
また、低照度撮影をはじめ、画質的な向上もさらに進んでいる。1080/60p撮影は情報量も多くなるため、たくさんの映像を録り貯めたい人には使いにくい面もあるが、画質の点ではかなり有効になる。今後、さらなる再生環境の充実を望みたい。
次回は、ミドル~エントリーの身近なモデルを使い、それらのモデルの大きな特徴であある高倍率ズームを試してみる。これからの入学シーズンや運動会などのイベントで、愛するわが子を画面いっぱいに映したいという人には頼もしい味方になるはずだ。
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