ギミック満載のダストカップが使いやすいワケ
さて、話がゴミを溜めるダストカップまで進んだので、さっそく満載のギミックを説明したいのだが、その前により理解を深めるためにサイクロン掃除機の仕組みを簡単に説明しておこう。
1:ノズルから吸い込まれただゴミは、ダストカップの中で風速数百km/hという猛烈なサイクロンで遠心分離される。風の強さを例えるなら、非常に強い台風の2~3倍の風速。ホコリや小さな紙などの重く大きなゴミは、自重に遠心力がかかって、ダストカップの外側に回転したままへばりつくのだ。
2:ダストカップの遠心力で分離できなかったゴミは、ダストカップ内のフィルターで分離する。
3:サイクロンで取り除けなかった軽い微粒子のゴミはULPAフィルターで濾し取る。ULPAフィルターは、もともと精密機器などの工場でクリーンルームの空気をキレイに保つためのフィルターで、0.15μmの粒子を99.9995%取り除けるものだ。
筆者の知る限り、上記の基本構造から外れたサイクロン掃除機はない。いままで使っていた製品はサイクロンを多段にして、段を重ねるごとにサイクロンの気流を早くして小さな微粒子までサイクロンで分離しているが、そこで捉えられなかったものは、掃除機内部にあるULPAフィルターで捉えるようになっている。つまり「フィルターがない」ワケじゃなく、フィルターが担うゴミの大きさがより小さいというわけなのだ(実際、小麦粉を吸わせるとULPAフィルターが真っ白になって詰まる)。
さてシャープの掃除機は、1段サイクロンで大きなゴミを分離して、粉状の小さなゴミや微粒子はULPAフィルターで濾し取るようになっている。当然、ULPAフィルターの担う部分が大きくなるが、そこでシャープは考えた! 「フィルターが詰まる前に自動で掃除すればいいんじゃね?」と(筆者妄想)。
それが「自動クリーンメカ」だ。構造は単純だが効果絶大。掃除機のスイッチを切ると、フィルターの上についている極小の布団叩きで、フィルターの捉えた微粒子を叩き落とす。
この機構によって、ほとんどフィルターが目詰まりせず、吸引力が落ちないのだ。フィルター掃除中はバリバリとチョットうるさいので、赤ちゃんが寝ているようなときは電源を切らずに廊下まで本体を引っ張っていき電源を切るといいだろう。
また、小麦粉を1袋まるごと豪快にブチ撒けた場合などは、こまめにスイッチを切りながら掃除すると、吸引力を保ったまま掃除できるはずだ。
さらに自動クリーンメカの回転を利用し、ダストカップに溜まったゴミを圧縮する機能がある。これは掃除機のスイッチを切ると、“かさ”が大きくなりがちなダストカップの外側に溜まる綿ぼこりなどを、自動的にスクリューで圧縮するという機能だ。
一般的なサイクロン掃除機は、このような機能を持たないので、規定のラインまでゴミが溜まったらダストカップのゴミを捨てなければならない。さもなければサイクロンの気流の妨げになるからだ。
しかし「EC-WX300」はサイクロンの気流の影響を受けないダストカップの底にゴミを圧縮するので、ゴミ捨ての回数が減るだけでなく、長時間連続して掃除ができるようになっている。ちなみにゴミは1/10程度まで圧縮されるので、ごみを捨てる回数も一般的なサイクロン掃除機の1/10程度になるだろう。
そして単純ながら、サイクロン掃除機の弱点を補う仕組みがある。それがバイオミメティクス(生体模倣)を用いた、髪の毛などの糸状のゴミを効率的に取り除く機構だ。
バイオミメティクスとは、最も効率的に進化した動物の器官の形や構造を、工業技術などに応用しようというものだ。最近は家電にも多く取り入れられ、鳥の羽を模したエアコンの室外機のファンなどがある。
シャープの掃除機が模倣したのは、猫の舌だ。猫の舌は一方向にザラザラした突起があり、自分の毛をグルーミングできるようになっている。いわゆる洋服のホコリを取るエチケットブラシのような構造に思える。
一般的なサイクロン掃除機では、髪の毛がダストカップ中央にあるフィルターに引っかかって目詰まりを起こしやすい上に、絡まってダストカップの掃除が大変なのだが、シャープの掃除機はサイクロン最下部にあるスクリューに猫の舌と同様の突起を付けることで、髪の毛などをスクリュー下部で捉え、フィルターに引っかからないようにしている。
これだけ色々なギミックを備えたダストカップだが、唯一残念な点がある。それはダストカップが半透明になっていて、どれだけゴミが取れたのかが見えづらいという点だ。ここは意見が二分するところだが、シャープ設計陣はおそらく「掃除機は居間などにも置かれるものだから、ゴミがはっきり見えるのは好ましくない」という判断からなのだろう。