Air Playミラーリングを超える驚き
アップルの“iPad将軍”、スコット・ブロドリック氏は、日本の“iPad大将”である筆者を驚かせようと、次から次へと新種のアプリやガジェットを繰り出していた。そんなブロドリック氏が最後に出してきた秘密兵器が、Real Racing 2 HDだ。筆者が「紹介されつくしたゲームアプリに、いったい何の驚きが……」と焦っていた時、ブロドリック氏の目に閃光が走った。
ブロドリック氏がReal Racing 2 HDを紹介するためにとったアクション、それはApple TVに接続されたテレビに向かうことで、先ほどの空中戦シミュレーターSky Gamblersと同じだった。
「なんだ、またAir Playミラーリングか」と筆者が笑ったのは一瞬のこと。
その次の瞬間。テレビにはReal Racing 2 HDのコース画面が、そしてブロドリック氏の手元のiPad 2にはゲームのタイトル画面が表示されていた。Air Playミラーリングは、iPad 2の画面内容をコードレスでそっくりそのままテレビ画面に複写表示することで、これは違う。
ブロドリック氏が何をやったのかは把握していない。もしかしたら、なんだか呪文を唱えていたのかもしれない。そういえば「魔法みたいだろう?」とかなんとか言っていた。
完全な敗北感。なんとiPad 2では、Air Playミラーリングだけでなく、Air Playを使って、ワイヤレスでデュアルディスプレー環境も構築できるようになったのだ。
なんだろう。この凄いと半分感動しながら、ちょっと負けた気になっている俺。まあ、しょうがないよな。向こうは本家のiPad担当者だ……。
そんな風に打ちひしがれているところへ、ブロドリック氏がさらに追い打ちをかけた。
「ヘイ、ユー! ノビ、知ってるか? このゲームの驚きは、まだまだこれだけじゃないんだぜ」。
ブロドリック氏は、大画面テレビにコース画面をリアルタイム配信中のiPad 2をホスト機にして、周囲にいたほかのプロジェクトマネージャーや広報の人達にゲーム参戦を呼びかけた。
ひとり、ふたりとレースの参加者が加わる。でも、ひとりだけiPod touchだ。そっか、同じiOSデバイスだから、iPad 2でなくても参加できるんだね。でも、ひとりだけ画面小さくてかわいそう。いや、それよりかわいそうなのは、楽しそうにゲームをしているiPad 2とiPod touchに囲まれて、1台だけマジメに「AudioNote」を使ってインタビューを録音している筆者のiPad 2か。ゴメンよ!
そんな筆者の心配もよそに、いきなりゲームが始まった。
2台のiPad 2と1台のiPod touchの画面にはコースの画面が表示され、同時にテレビ画面は4分割され、それぞれのプレイヤーが担当する車の運転席の様子が映し出されている。
「何! そんなこともできたの?」。
これって、すっかりゲーム機じゃん。
「ここしらばく聞いていなかった次世代ゲーム機って、実はiPad 2が本命なんじゃないの? なんだか、新しいゲームスタイルの可能性が見えてきたよ」。そんな感想を漏らすと、「でも、iPadはそれだけじゃなくって、今やビジネスの世界でも急速に広がっているんだよね」とブロドリック氏。
そうだった。それこそ私の専門分野。今年はメディア関係はもちろん、営業職の人や、アパレル関係、医師や病院、佐賀県の救急車(関連リンク)まで、本当にさまざまな仕事の場面にiPadが使われるようになった。
しかも、世界に誇れるような先進的な事例は、ここ日本で作られている(より正確にいえば、その多くは大阪など関西方面だ)。
それら事例は、私も下手なアップル社員に負けないくらい知っているつもりだと話していると、ブロドリック氏が「それじゃあ、函館の漁師の事例は知っているか?」と筆者に挑戦をしかけてきた。
なんと、公立はこだて未来大学が、地元のナマコ漁の漁師らと組んで、乱獲をしないようにiPadを漁船に持っていき、どこで漁をしたのか記録しているのだという。
このインタビューをしたのは、実は12月の初め頃だったが、その後、今週になって人気ブログ「Macお宝鑑定団」が函館を取材していた。
iPadを使うことで、ゲーム/ビジネスを問わず、世の中でさまざまなものが「始まっている」ことを改めて実感。
この状況は、おそらく2012年になったら、さらに加速するのではないかと考えると、もう2週間を切った新年へのカウントダウンが楽しみになってきた。