メーカーは自社端末の性能についてのフィードバック
キャリアは端末の不具合問題について知りたがっている
――メーカーがCarrier IQを利用する目的は?
現実世界で自社端末がどのように機能しているのか、性能はどのぐらいなのかを知りたいと思っている。
端末の価格が安く、買い替えサイクルが短かった時代はあまり気にする必要はなかったが、スマートフォンになり端末の価格は高価になった。ユーザーはこれまでより長く同じ端末を利用し、その間ソフトウェアアップデートを行なう。メーカーは、自社端末の性能について、フィードバックループがほしいと思っている。
――オペレーターが利用する目的は?
オペレーターはカスタマーケアの改善としてこのような情報を知りたいと思っている。しょっちゅうクラッシュするので交換したが、新しい製品でも同じ症状がある場合、実はアプリが原因だったというのはよくあることだ。原因がわからない場合、オペレーターは新品に交換することになるが、このコストは馬鹿にならない。
現在、われわれのサービスはリアクティブ(受動的)。つまり、問題が起きて顧客が報告したときに初めて対応できることになる。だが、不具合問題はオペレーターにとって大きな経済負担となっている。さらに深刻なのが、報告しない場合だ。顧客を失っている可能性もある。
そこで、たとえば週単位に問題を多く経験している顧客のリストを作成するなども行っている。オペレーターはこの情報を顧客ケアに利用できる。
なお、返品と交換のコストだが、われわれの調査では返品されたスマートフォンの約40%が、実際には製品そのものにはなにも問題がなかったということがわかっている。多くの場合でインストールしたアプリやソフトウェアの問題だったり、ネットワークにつながりにくい範囲にいるなどが原因となっている。この場合、端末を交換しても問題は解決しない。
携帯電話が返品されたら、その電話を調べて異常がない場合は再度販売することになるが、このコストは1台約70ドルといわれている。携帯電話の返品コストは年間数十億ドル単位になっているが、原因が分析できれば、このコストは年間1人あたり2.5ドル削減できると試算している。
――アプリケーションベンダー向けに売り込む計画はありますか?
アプリケーションベンダー向けに性能に関する情報を提供する企業はすでにある。われわれのフォーカスは端末全体のエクスペリエンスにあり、アプリケーションの深い分析はフォーカス外となる。
Carrier IQのサービスでは、アプリケーション内部にコードを組み込むことなく、きちんと動いているアプリとそうではないアプリ、バッテリーを大量に使用するアプリなどがわかる。アプリの中には、シグナルを送り続けるものなど、開発者が意図していなくてもネットワークや端末から見ると“悪い”アプリがあり、このような悪いアプリが多数の端末にインストールされていることがある。これに対比して、YouTubeのような動画アプリは帯域への負荷が大きいが、必要以上の帯域を浪費していなけば、実際には効率のよいアプリといえる。
――マルウェア対策などセキュリティー分野への拡大は考えていますか?
セキュリティーについては現在検討しているところだ。だが、他社がすでにやっているのと同じことをするつもりはないし、(現在の法人向けから)コンシューマー向けに拡大することも考えていない。われわれが収集している分析情報は、ウイルス対策ベンダーの情報よりも詳しいレベルだ。正しいビジネスモデルは何かを考えているところだ。
――分析情報から見えるスマートフォンのトレンドがあれば教えてください。
アプリケーションがどのように使われているのか、これは各社が関心を持っていることだが、メーカーの関心が高いのは、アプリが事前にインストールされていたら利用にどのように影響するのかだ。メーカーがソフトウェアを事前インストールするにはそれなりのコストがかかるため、効果を知りたいと思っている。
たとえば、ある顧客が端末購入後1ヵ月間、約2000人のユーザーを追跡したところ、Facebookアプリが事前インストールされている場合、その期間のアプリ利用の40%がFacebookだった。事前インストールされていない場合、Facebookアプリの利用率は5%だった。
メーカーはソーシャル端末、ビジネスユーザー向け端末とセグメント化しており、どのようなアプリが利用されているのかを知ることで、端末の販売に貢献できるアプリがわかる。
また、スマートフォンでの情報閲覧は、実際のアクション(たとえばショッピングなど)につながることが多く、広告の点からも感心が高い。オペレーターの中には、新しい収益化のチャンスとみているところもある。だが、モバイル広告はまだ本格化しておらず、ユーザー側もまだ受け入れていない。