Geode買収でバッサリ切り捨てられたElan
これらの製品は組み込み向けプロセッサーのニーズに応えるべく、いずれも長期供給保障がつけられた形で提供されていた。だが2003年8月、AMDがNS社のGeode部門を買収したことで、いきなり廃番になるという事件が起こった。
実は前年の2002年2月に、AMDはMIPSベースの省電力プロセッサーを開発していたAlchemy Semiconductor社を買収していた。NS社のGeode部門はAlchemyの部隊と合流する形で「PCS」(Personal Connectivity Solutions)という部門を構成し、ここに組み込み向けを集約する体制を取った。
その結果として、それまでElanなどを手がけていた部隊はPC向けプロセッサーの開発に振り分けられていた。そんな環境ではElanのサポートを継続しないのは必然というか、ある意味仕方がなかったのかもしれない。
これに代えてAMDが新たに手にしたのがGeodeの製品ラインである。Geodeについては連載65回で解説しているが、ベースとなるのは「Cyrix 5x86」である。Cyrix 5x86をベースに2チップ構成としたのが、「Geode GX」シリーズであった。
Elanシリーズとは異なり、完全な1チップ化は実現できず、CPUにグラフィックとメモリーコントローラー、PCIコントローラーを搭載した「Geode GX」に、「CS55xx」シリーズのI/OコンパニオンチップをPCI経由でぶらさげるという構成になっている。
当時のNS社は、CyrixをVIA Technologiesに売り渡してアナログ半導体がメインの会社になっており、Geodeの部隊はそれほど大部隊ではなかった(AMDが買収した時点で135人)。そのため完全なSoC化を行なうほどの、開発リソースはなかったようだ。
それにも関わらずAMDがGeodeを買収したのは、「ElanよりもはるかにGeodeの方が成功していたから」という事情があった。実のところその差がどこにあったかといえば、CPUコアだけではなく周辺回路まで含めたポートフォリオでNS社の方が充実していたことと、カスタマーサポートが充実していたと点にある。そのためAMDに買収されたら、そうしたメリットが全部消えてしまうことになる(事実消えてしまった)。
それでもGeode設計チームがAMDとの合併を望んだのは、やはりアナログ半導体がメインの会社の片隅でプロセッサーを作り続けるのは難しく、「プロセッサーベンダーの中でCPUを作りたい」という希望を持っていたことによる。元々がインテルに対抗するCyrixの出身者たちだけに、インテルに買収されるという選択肢はなかったようだ。その意味では「AMDに買収されてハッピーだ」と、当初は語っていた。
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