9月28、29日の2日間、都内のホテルを会場にThe Microsoft Conference 2011が「マイクロソフトの最新技術のすべてがここに集結」と銘打って開催された。ここでは、企業IT向けのメッセージが発信された2日目のSpecial Sessionの内容を紹介したい。
企業の課題を解決するためのITソリューション
講演を行なった日本マイクロソフトの執行役 エンタープライズサービス ゼネラルマネージャーの山賀 裕二氏は、まず現在の日本企業が直面するさまざまな経営レベルの課題を挙げ、これらの課題を解決するためのITソリューションを紹介していく、という方向を示したが、ありがちな型どおりの展開とは異なり、まず“ITソリューション”という言葉に疑問を呈するところから入った。
同氏は、「ITソリューションとは製品の紹介のことなのか」という点から問題にし、「ITの活用によってさまざまな経営課題をスピードを付けて解決することが可能になる」としつつも、一方で「ITがすべてを解決するわけではない」という。この姿勢は、「優れたソフトウェア製品は用意するが、これを使ってどれだけの成果を達成できるかはユーザー次第」といった態度はとらない、という宣言でもあるだろう。これまでの同社には“まずソフトウェア技術ありき”といった姿勢が感じられたのは間違いないだろうし、とかく製品に盛り込まれた新機能のアピールに終始しがちだった感もあるが、少なくとも企業ITの分野に関する取り組みに関してはそうした姿勢は変わってきたようだ。
同氏は、講演で取り上げる“解決すべき経営課題”として「ワークスタイルの変革」「新規事業の立上げ」「ビジネスの見える化」「高可用かつ震災対応」の4点に焦点を当て、それぞれ対応する製品のデモを交えての紹介を行なった。
ワークスタイルの変革には“Lync”および“Lync Mobile”が、新規事業の立上げには“Windows Azure”によるクラウド環境が、ビジネスの見える化と高可用且つ震災対応には、2012年にリリース予定のSQL Serverの新バージョン“Denali”(開発コード名)がそれぞれ対応する。それぞれのソフトウェアの機能を効果的に活用することで、それぞれの課題を適切に解決できる、という話の大筋の流れはそのままだが、講演全体を貫いていたのは“ソフトウェア万能主義”とも言うべき発想からの脱却だ。
講演の最後で同氏が強調したのが、「エンタープライズサービス」事業への注力だ。この取り組みに関して同氏は「日本マイクロソフトは“汗をかく会社に”なる」と言い、「製品だけを提供する会社から、ユーザーの役に立てるパートナーになる」と語った。その意味は、ユーザー企業が抱える経営課題を正しく理解し、適切な解決策(ソリューション)を同社のソフトウェア製品をツールとして活用することで実現する、というサービスに真剣に取り組む、ということだ。
イベント会場内のデコレーションやプレゼンテーションのスライドなどは見事にWindows 8の新らしいユーザーインターフェイスである“Metro”のイメージで統一されており、そこに目を奪われがちにもなるが、少なくとも企業ITの分野においてはWindowsのルック&フィールよりもずっとインパクトの大きい、企業としての根本的な姿勢の変化が明確になってきた、という点こそが今回のイベントでもっとも注目すべき点だったように思える。