1EFlopsに向けた
性能/電力比の改善への取り組み
ラトナー氏の講演は、将来の「ExaScale」(エクサスケール)の話へと進んだ。ExaScaleというのは、2020年までに1EFlops(=1000PFlops)を目指すという開発プロジェクトである。このプロジェクトは単に性能だけではなく、今後10年で性能/電力比も現在に比べて、300倍も改善するという。
そのための取り組みのひとつとして、最初に紹介された内容が「NTV」(Near Threshold Voltage、限界しきい値電圧)で、これによりトランジスターの動作効率を最大5倍程度改善できるとしている。
初日の基調講演に登場した謎の「太陽電池で動くCPU」であるが、これはNTVを応用して試作されたもので、10mW未満の消費電力で動作するという。コード名は「Claremont」。今回のデモでは、あくまでも従来比5倍程度の改善に留まるが、これは既存のCPUコアをそのまま使ったからで、新規にコアを設計すれば8~10倍が期待できる。
もうひとつの取り組みは、先ほども触れた「広帯域メモリー」である。今回インテルはメモリーベンダーのマイクロンと共同で、「HMC」(Hybrid Memory Cube)と呼ばれるものを発表した。これは4枚のDRAMをシリコン貫通端子を使って積み重ねたもので、8Wの消費電力で512MBのメモリーに128GB/秒(1Tbps)でアクセスできるという。デモでは実際に、120GB/秒程度のアクセス速度を示した。
ラトナー氏の基調講演の内容は以上である。今回は基調講演そのものが毎回1時間と短かったこともあってか、テーマをメニイコアに絞ってその将来性を説明するとともに、必要とする付帯技術を紹介するという流れであった。CTOであるラトナー氏の立場からすると、22nmで製造されるKnights Connerが立ち上がってくれるのが最優先の任務で、そのユーセージモデルや利点を、直接製品を使わずに紹介するという困難な任務を、うまく達成したのではないかと思う。
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