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注目企業オーリッドのビジネスモデルとは?

日本生まれのクラウドノート「KYBER」がすごい理由

2011年09月21日 15時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 オーリッドという日本のIT企業が注目を集めている。売上高は40億円規模。法人向けWebサービスを提供していたが、昨年から個人向けサービス「KYBER」を開始した。16日に発売した「KYBER Smartnote」(写真、3冊1500円)は、そのサービスの目玉だ。

 見た目はごく普通のノート。メモをしたり、議事録をとったり、普通のノートとして使える。ノートをiPhone付属のカメラで撮影し、KYBERのWebサイトにアップロードすると、画像のデータがクラウドサーバー上で管理される(Androidには10月対応予定)。そこまではこれまでのクラウドサービスにもあったもの。「Evernote」を思い浮かべる人もいるだろう。

 だが、話はここからだ。

 しばらくすると、手書きのメモが文字データになって送られてくる。いわゆるOCR(画像からの文字起こし)だが、その精度は異様に高い。ほぼ完璧だ。納品までも最速約90秒と異様に速い。OCRはノート1冊あたり29回まで無料で使える。OCRの費用はノート代に入っている。普通なら考えられないサービスだ。なぜそんなことができるのか。

高精度の秘密は「第2のクラウド」

オーリッド執行役員 星川征仁氏

 高精度の秘密は、このテキスト起こしに“人間”が関わっているため。オーリッド執行役員の星川征仁氏は、システムの裏側にある驚きの仕組みを教えてくれた。

 「国内で150人、中国では1000人以上のスタッフがOCRのチェックに関わっています」

 OCR技術は進化しているとはいえ、手書きだとさすがに間違いが多い。結果が合っているかどうか確かめるため、1000人以上のスタッフが画面に向きあい、チェックしている。まさに究極の人海戦術だ。

 彼らは「第2のクラウド」を事業戦略にかかげている。“CLOUD”(雲)だけではなく、“CROWD”(群衆)も使ったWebサービスというわけだ。

 これをヒューマンコンピューティングとも言う。

 だが、国内はともかく中国のセンターで日本語のチェックはできるのだろうか? 実際、中国に勤めるスタッフで日本語ができるのは100人ほどという。それでもシステムが回るのは、彼らが「○×」をたしかめるだけだからだ。

中国のオフショアセンター(入力センター)。彼らのうち日本語が分かるのは10%程度だ

 「彼らは2つの画像を見て、それを比べるんです。上がOCR前の画像、下がOCR後の文字。同じ形ならマル、違う形ならバツをつける。それなら日本語がわからなくても、子供でもチェックできますよね」

 なるほどたしかに。実際、日本でチェックをしているメンバーの中には、なんとiPadやiPhoneで仕事をしているスタッフもいる。送られてくる○×クイズのような問題に、正確に“回答”する。それだけで給与が入ってくる仕組みになっている。

スタッフの仕事はiPadやスマートフォンに送られてきた「問題」に○か×かで答えるだけ。「上のモノと下のモノは同じですか?」これなら日本語ができなくても答えられる

 彼らがスタッフを雇う方法も面白い。なんとFacebookなどのSNSだ。

 「現金で決済するのではなく、商品券と交換できるポイントを使っています。入力センターのような場所を作ってしまうと固定費がかかってしまいますが、スタッフが(スマートフォンなどで)どこでも仕事ができるなら固定費はゼロです」

 OCR費用をノート代だけでまかなえる理由の1つはこれだ。通勤型の“会社”ではとても実現できない、新しい就労と雇用の仕組みを作ること。そのことによって人件費を削減するだけでなく、より多くの人に働く機会を与えるというビジネスモデルが、驚異的なコストカットを生みだしている。

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