ポータブル型ヘッドフォンアンプで
Androidスマホの音はどこまでよくなる?
今回は特にスマートフォンの音をどこまで高音質化できるかに絞って、それぞれのヘッドフォンアンプの試聴を行なった。
ちなみに、スマホと言ってもiPhoneとAndroidでは音の出力環境が大幅に異なる点に注意したい。iPhoneの場合は拡張端子(Dockコネクター)からデータのデジタル出力が可能だが、Androidスマホは基本的に音楽のデジタル出力はできない。
つまり、音楽再生という観点ではAndroidスマホは劣勢なのだが、だからこそ高音質化を試してみたい、と考えた。
というわけで、今回はプレーヤーにAndroidスマートフォン「REGZA Phone T-01C」を使用し、ヘッドフォンアンプとはアナログケーブルで接続した。音源も携帯プレーヤーで使われることの多い圧縮音源(MP3 128Mbps)を使っている。
ヘッドフォンは前回も使ったカナル型のShure「SE535」だ。出力音圧レベルが高く、ヘッドフォンアンプがなくてもかなりの音量が得られるモデルだが、その分、プレーヤーの残留ノイズまではっきり聴こえてしまうなど、アンプの品質や音の個性をストレートに反映してしまう傾向がある。
使いやすい小型サイズながら
スマホの音をしっかりグレードアップするAT-PHA10
まずは、オーディオテクニカのAT-PHA10だ。こちらはサイズも極めて小さく、携帯プレーヤーのリモコンユニットのような感じで使える。プレーヤーと接続するケーブルは0.6mあるので、プレーヤーは胸ポケットなどにしまうだけでなく、カバンなどに収納しておくこともできるだろう。
本機は電源に単4電池を使用し、バッテリー寿命は連続50時間(アルカリ乾電池使用時)となってる。小型・軽量で電池寿命も十分長いので、スマホを使って外出時にはいつも音楽を聴くという人にも使いやすいだろう。
さっそく音を聴いてみよう。クラシックはドボルザークの交響曲「新世界より」を聴いてみたが、高域が伸びやかでバイオリンの弦の艶がきれいになるのが印象的。低音の伸びが控えめなこともあり、多少高域よりのバランスになるが、シャカシャカと安っぽい音にはならない。
ポップスでALISAとLiaがデュオで歌う「A Whole New World God Only Knows」を聴くと、ボーカルの声がよりしっかりと芯のある出方になり、声のニュアンスや透明感のある伸びやかなハイトーンが鮮やかになった。
ジャズはマイルス・デイビスの「So What」を聴いたが、ウッドベースの鳴り方は量感をやや加味したリッチな響きとなる。パワー感や迫力はあまり強調しないものの、中~高音域の表情が豊かになり、圧縮音源の痩せた感じをうまくフォローしてくれたのが好印象だ。
コンパクトサイズなので、絶対的な音質という点ではあまり期待していなかったのだが、これは期待以上。音質のグレードアップという意味でもかなり満足できるだろう。
パワフルなサウンドで
迫力たっぷりの音を再現するD2+Hj Boa
続いて、iBasso AudioのD2+Hj Boaを聴いてみた。こちらもサイズは小さいが、アルミボディを採用するなど剛性も高く、かなりしっかりとした造りになっている。バッテリーは内蔵電池で、使用時間は連続約38時間となる。充電はUSB端子を使って行なう。
USB端子は充電と信号入力をスイッチで切り替えるので、PCなどとの接続時は充電しながら音を再生することはできない。
D2+Hj Boaは、パワフルで力強い鳴り方が大きな特徴だ。いかにも信号を増幅するアンプを追加した感じのパワフルさで、音質の変化が実感としてわかりやすい。
ポップスを聴くと、ベースや打ち込み楽器のリズムが歯切れよく鳴り、量感もやや多めになる。適度な重量感と弾むような躍動感があり、聴いていて楽しい音だ。
高域は十分な情報量があり、ジャズで聴いたマイルスのトランペットの音の勢いがレスポンスよく耳に届く。総じて音の距離が近く、ダイレクト感のある再現になる。クラシックでは、複数のバイオリンが一斉に旋律を奏でるときの音の厚みもしっかりと再現されるし、金管楽器の余韻がホールに響いていく様子など、微小な音の再現も鮮明だ。
パワー感や音の力強さが印象的ではあるが、基本的な再現はしっかりとしているので、ガチャガチャとにぎやかな音にはならないし、高域が荒っぽく感じることも少なかった。ロックやポップスなどをエネルギッシュに聴きたいという人には、この後で聴くD5 Hjよりも適しているとも思える。
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