SunSpider 0.91
続いて、JavaScriptのベンチマークテスト「SunSpider」でスクリプト処理速度を計測した。ここでもIE9が最も高速だったが、ほかとの性能の差は20%ほどだ。20%の性能差は大きな違いだが、IE8からIE9へのアップデートでは、JavaScriptの性能が約18倍に向上している点も考慮すべきだろう。
IE8のJavaScriptエンジンが遅すぎただけで、それがようやくIE9で競合と戦えるレベルに上がったと言ってもよさそうだ。
Acid3
「Acid3」は「DOM」(Document Object Model)や「ECMAScript」(JavaScriptの正式名)の互換性テストである。この互換性テストで満点を取ったのは、Chrome 11βだけだった。
ちなみにマイクロソフトのIE Blogでは、Acid3で満点を取るよりもHTML5やCSS3のサポートに注力すると述べている。そのためIE9のスコアがこれよりも上がるという見込みは低そうだ。それでもIE8のような20点という低い点数ではないので、ある程度満足のいくレベルには向上している。
CSS3 Selectors
「CSS3 Selectors」は、CSS3のスタイルを適応する対象を指定して、規定どおりに動作するか互換性を検証するテストである。Selectorsがウェブブラウザーごとに異なる動作をすると、同じコードを書いてもデザインがまったく異なるサイトになってしまう。そのためCSS3 Selectorsの互換性は非常に重要だ。
この互換性テストでは、IE9とFirefox 4.0が満点を取っている。Chrome 11βでは約97%の互換性を実現しているが、残り3%が非互換であった。Chromeもバージョンが進めば、満点を獲得することになるだろう。
お薦めの新世代ウェブブラウザーはどれだ?
ベンチマークテストや互換性テストを眺めてみた結果としては、Windows 7/Vistaで新世代ウェブブラウザーを使うなら、IE9を最もお薦めする。
まずIE9は、HTML5やSVG1.1、DOMなどの互換性を満点でクリアしている。マイクロソフトではIE9でのCSS3の互換性を、75%と少し低い数字に見積もっている。CSS3で重要なCSS3 Selectorsは、先のテストどおり満点をクリアしているが、ほかの項目には未サポートが多い。このあたりは、IE10で満点を目指しているという。
一方JavaScriptの互換性に関しては、IE9は95%という。これもIE10PP1では、すでに満点になっている。IE9で未サポートの5%は、ECMAScriptの最新仕様である「ECMAScript 5 Strict Mode」を満たしていない部分だろう。これらを見ても、IE9のウェブ標準に対する互換性については、ほぼ問題なしと言えるレベルにある。
そしてIE9でなにもより魅力的なのは、やはりGPUアクセラレーションだ。競合ウェブブラウザーと比べても、WindowsプラットフォームでのGPUアクセラレーションに関しては、頭ひとつ抜け出している。ウェブサイトのグラフィック表示が高速化されるのは、なによりも魅力だろう。
ただしHTML5を使わない既存のウェブサイトでは、GPUアクセラレーションのメリットは発揮されない。しかし既存のウェブサイトでも、JavaScriptエンジンの性能向上は魅力となる。だからこそWindows 7/Vistaのユーザーは、積極的にIE9へのアップデートを検討する価値がある。
IE9唯一のデメリットは、Windows XPがサポートされていないことだ。Windows XPは2001年にリリースされたOSであり、すでにリリース後10年が経過した。ハードウェアの進化に市場ニーズの変化などを考えれば、さすがにもうOSのアップデートを考えるべきだろう。Windows 7が安定して評判が高いことを考えれば、個人も企業もOSのアップデートに踏み切る時期が来ていることを、IE9の登場は示しているのではなかろうか。