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コンテンツ数確保に一手

シャープ、電子書籍制作ソフトを無償提供

2011年04月22日 13時00分更新

文● TECH.ASCII.jp編集部

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 シャープは「次世代XMDF」などと呼ばれる、最新の電子書籍用フォーマット(XMDF 3.x)に対応した制作ツールを無償提供する。

電子書籍を作成する際に、旧字体などの外字をどうするか悩ましいという声を出版社から聞いていた

 XMDFコンテンツを手軽に作成したいというコンテンツ提供社(出版社)の要望を受けてのもの。雑誌のレイアウトなどで幅広く使われているAdobe InDesignで作成したファイルをXMDF形式に変換する機能を持つ。電子書籍市場に参入したいが、コンテンツ作成のために高いコストはかけられない、タグ付けなど専門知識の習得にハードルを感じるといった問題に応える。

 XMDFは「.book」などと並んで国内の電子書籍市場では多く用いられているフォーマット。XMLをベースとしながら、国際電気標準会議(IEC)に認定された標準規格でもある(関連記事)。GALAPAGOSメディアタブレット用に「TSUTAYA GALAPAGOS」というストアが存在するが、それ以外の電子書籍ストア・携帯電話用配信サービスでも採用例は多い。


出版社のコンテンツ制作負荷を低減

 今回提供されるソフトウェアは「XMDFビルダー」「Hybrid Viewコンバータ」「確認用PCビューア」の3種類。シャープの「制作サポートサイト」(関連サイト)で7月から提供する。サポートの関係上、当面は販売用のXMDFコンテンツを制作する出版社・コンテンツ会社が対象。ダウンロードにはメールアドレスや社名など、簡単な事前登録が必要となる。

IDMLファイルの読み込み画面

 XMDFビルダーは、HTMLやテキスト形式のほか、InDesignのIDMLファイル(CS4以降に搭載されたXMLベースのフォーマット)の読み込みにも対応。IDMLファイルの内容を自動的に解析し、XDMF形式に変換するため、書名など最小限の情報を入力するだけで、XMDFファイルの作成が可能となる。文字装飾や段落設定、禁則処理、リンク(URLの埋め込み)など、XDMFタグの編集もこのソフト上で行える。

XMDFファイルに変換したところ

 これまで特に要望の多かった外字に関しても「Adobe Japan 1-6」に含まれる文字であれば自動的に作成できる。フォントなどの埋め込みはできないため、InDesign上で作った雑誌誌面などをまったく同一に表現することは難しいようだが、画面で確認しながら、レイアウトの微調整、画像の埋め込みなど基本的な編集ができるため、制作負荷の軽減につながる。

テキストの下に地を引いたり、文字表示の微調整をするなど簡単な編集ができる

 XMDFファイルは、端末のディスプレー解像度に合わせた複数のレイアウトを一括で管理できるが、解像度などのプロファイルを登録しておけば、異なる解像度でどう表現されるか(再現性)の確認にも活用可能だ。また、マンガコンテンツの作成を支援する機能も持つという。

 Hybrid Viewコンバータは、PDFやタグ付きのテキストをXMDFファイルにコンバートするソフト。こちらの機能は、基本的にファイル形式の変換のみで、「イメージ型」(PDF画像を直接貼り付け、拡大・縮小・スクロールができる形式)、「ハイブリッド型」(イメージ型ファイルにテキスト情報を埋め込み、そこだけを拡大して読んだり、マーカー機能や辞書引きなどができる形式)のXMDFファイルの作成ができる。

 段組み設定や複雑なレイアウトの作り込みが可能な「マルチレイアウト型」ファイルの作成はXMDFビルダー、誌面イメージをそのまま再現したXMDFファイルをシンプルに作りたい場合はHybrid Viewerという使い分けを想定しているようだ。

 確認用PCビューアーはその名の通り、作成したXMDFファイルが意図したものかどうかをパソコン上で確認できるツール。

 いずれも現状ではWindows版のみの提供でMac版の提供は未定となっている。出版社の制作環境を考えると、Mac版の提供がないのは疑問だが、要望が高まれば、開発に取り組むとしている。


一般向けによりシンプルなXMDF変換ソフトも用意

 なお、シャープはメディアタブレット「GALAPAGOS」シリーズ向けに提供しているXMDFファイル作成ツール「XMDF Clipper」も4月中にバージョンアップする予定(ダウンロードサイト)。現在提供されているバージョンでは、パソコンのプリントイメージ(印刷プレビューなどで表示される画像)をXMDF化するシンプルな機能を持つだけだが、新たにXMDF 3.xに対応し、高機能化する見込み。

 PowerPointやPDFのデータをXMDF化して、メディアタブレットを使ったプレゼンに生かしたり、手持ちのコンテンツをGALAPAGOS用に変換して持ち運ぶなど、一般ユーザー向けにも、より手軽にXMDFファイル作成できる環境を整えるという。

 同社は22日付で、TSUTAYA GALAPAGOSストア内に、コミック特設コーナーを開設しており、クレヨンしんちゃんやルパン三世Y、パラダイス・キスなどの配信を開始している。

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