まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第19回

AiR×講談社×キングレコードの新電子雑誌

逆を目指す講談社『BOX-AiR』、掲載作すべてをアニメ化検討!?

DVD付きコミックがアニメを救う？

――　では、アニメ化の部分について中西さんに伺います。すでにキングレコード／スターチャイルドではテレビアニメーションの実績を重ねていて、アニメ化の企画提案も多数受けていると想像します。そんな中、講談社BOX-AiRに参加した狙いはどの辺りにあるのでしょうか？

キングレコード スターチャイルドレコード 制作グループ長の中西豪氏。講談社の漫画単行本にアニメDVDを付属させるOADでは、『魔法先生ネギま！』のプロデューサーを務める。ほかに『マルドゥック・スクランブル』『蒼穹のファフナー』など数多くのアニメ作品でプロデューサー職を歴任

キングレコード 中西豪氏　「意外なことに、これまで講談社BOXさんとは、お仕事をご一緒したことがなかったんです。

　元々キングレコードは講談社の音楽部門として発足した歴史があり、親子関係にあります。また、ここ2年くらいはグループとして、一緒にアニメを作りましょうという取り組みも強化してきました。

　その一環が、漫画単行本にアニメDVDをパッケージして販売するOAD（オリジナル・アニメーション・DVD）というものです。

　ご存じのようにアニメ市場が縮小する中、アニメDVDの売上げ本数も減少しています。（宣伝媒体とも言える）テレビ放送にもお金がかかりますので、売れなければ赤字が積み上がってしまいます。

　ではどうしようか？　という悩みを抱えていたところに登場したのがOADです。講談社さんは本を作り、キングレコードはアニメを作る。アニメの部分については両者が出資して（リスクを応分に持って）製作委員会を組成しています」

――　DVD1枚に対して、となると、テレビ作品に比べてコンパクトな座組になりますね。

キングレコード 中西　「はい。OAD開始から2年間の取り組みで、回収スキームはほぼ見えてきましたので、いよいよ講談社BOXさんともご一緒したいなと。OADと講談社BOXとの組み合わせは、『すごく尖った面白い企画になるのでは？』という期待があります」

――　なるほど、それでBOX-AiR新人賞の応募規定が、“ストーリーの第1話・第2話＋全ストーリーのシノプシス（あらすじ）”なんですね。ちなみにOADは、どのくらいの本数を想定したものでしょうか？

キングレコード 中西　「『魔法先生ネギま！』23巻の限定版では9万本を記録しました。これはかなりうまくいった事例となりますが、これ以外の作品でも3～5万本にはなります」

――　昨今、全般的に不調が続くアニメのDVDとしてはかなり良い数字ですね。

キングレコード 中西　「そうですね。作品によっては3000本を下回ることも珍しくない状態ですから」

――　まずはOADとして世の中に問い、人気があればテレビアニメへ、というケースもあり得るわけですね？

キングレコード 中西　「もちろんです。テレビアニメに留まらず、場合によっては劇場アニメも考えたいですね」

――　講談社BOXは内容だけでなく、箱装丁など商品としてのパッケージにも尖ったイメージがありますが、DVDの付属経験がなかったのは意外でした。

講談社 山本　「ドラマCDは西尾維新さんの作品で作ったことがあるのですが、アニメDVDはありませんね。今回が初の試みとなります」