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DataONTAPからSSD対応、インターフェイスまで強化

製品の8割を一新!ネットアップ史上最大の作戦

2010年11月19日 10時00分更新

文● 渡邉利和

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11月18日、ネットアップは同社の18年の歴史の中でも最大規模だという製品発表を行なった。全製品の8割を更新するというもので、これによって同社はクラウド時代を見据えた「共有型ITインフラのためのストレージ基盤」という立ち位置を鮮明にした。

経済的な被害も少なく、業績は堅調

 まず登壇したネットアップの代表取締役社長のタイ・マッコーニー氏は、ビジネス面での現況を簡単に紹介した。同氏によれば、同社はワールドワイドで堅調な成長を続けており、この5年間で平均20%の成長率を維持しているという。日本国内も堅調で、上半期の収益は前年比29%増を記録しており、昨今の経済状況を考えれば上出来だろう。

ネットアップの代表取締役社長 タイ・マッコーニー氏

 成長の背景として同氏は、日本企業が直面する経済的な課題を挙げた。たとえば、円高の影響によって、国内企業のIT運用コストは相対的に高騰する計算になる。そこで、ITリソースのオフショア化や統合を計画するわけだが、そのためにはそれに適したストレージが必要、という流れだ。また、クラウドにも注目が集まっており、それも同社にとって追い風になっているという。

共有ITインフラへの流れは止まらない

米ネットアップのクラウドCTO ヴァル・バーコヴィッチ氏

 続いて詳細説明を行なった米ネットアップのクラウドCTOのヴァル・バーコヴィッチ氏は、共有ITインフラへの移行は避けられないと語った。同氏は、「現在主流のデータセンターの多くは5年前に設計され、3年前に竣工したものだ」という。時代的にはまだサイロ型アーキテクチャが主流の頃であり、「アプリケーションごとの専用インフラとして設計されているため、効率が低い」という。一方で、データ量の爆発的な増大はさらにペースを上げている状況であり、これに対応するためには特定のアプリケーション専用のインフラを共有型のITインフラに転換しなくてはならない。同氏は、「企業内で共有型ITインフラ(プライベートクラウド)を構築するか外部のパブリッククラウドを利用するか、折衷案的にハイブリッドクラウドとするか、さまざまな選択肢があるが、少なくとも専用型インフラはもう選択肢には含まれない」という。

データセンターの現状と効率の良い製品選定

 共有型ITインフラを構築する際のストレージとして同社製品を利用することのメリットは、同社のストレージがシングルアーキテクチャに基づくユニファイドストレージだから、ということになる。同社のストレージでは、エントリーモデルからハイエンドまでの全製品が同一のソフトウェアプラットフォーム(Data ONTAP)上に構築されており、運用管理の手法も外部連携のためのAPIも統一されている。また、SANとNASの統合にも早くから取り組み、1台の筐体内のストレージボリュームに対してどのようなプロトコルでもアクセスできる環境をいち早く実現した。

共有型ITインフラに実現するネットアップの製品

 同氏は、ネットアップがクラウドの領域で成功を収めている理由として、「クラウド環境では仮想化技術や運用の自動化が重要な役割を果たすことになるが、こうしたテクノロジーを主導する立場にあるトップベンダーはみなネットアップのストレージをサポートしてくれている。これは、ネットアップの製品がシングルアーキテクチャで、シンプルなAPIセットを提供していることから、対応が容易であるという理由がある」としている。

他社の製品が異なるアーキテクチャで構成されているのに対して、単一のアーキテクチャを実現しているという資料

SSDもインターフェイスも一新!製品機能を底上げ

 今回の発表では、ストレージ製品としてはミッドレンジ(FAS3200シリーズ/V3200シリーズ)およびハイエンド(FAS6200シリーズ/V6200シリーズ)が更新されたことに加え、ストレージOSであるData ONTAPのマイナーバージョンアップ(8.0.1)や、管理ソフトウェアの統合(OnCommand)など、多岐にわたっている。エントリーモデルのストレージだけは従来のモデルが継続販売されるが、これもいずれ更新される予定だ。

ミッドレンジからハイエンドまで製品ラインナップを一新

 Data ONTAP 8.0.1では、「NetApp Data Compression」によるデータ圧縮機能の強化、「NetApp DataMotion」による巨大データボリュームの無停止移動のサポート、「NetApp Unified Connect」のサポート、などがポイントだ。また、ハードウェア面では、SSDの利用拡大が挙げられる。従来から同社ではSSDを高速なキャッシュ領域として活用する「Flash Cache」をサポートしていたが、新たに単純なHDDの置き換えとしてSSDを利用することも可能になった。一般的な対応順序とは逆になっているが、同氏は「他社に先駆けて完全にインテグレートされた形のキャッシュを実用化したことで、ユーザーの利用率は高い。競合他社ではこうした技術を利用しているユーザーの比率(Attach Rate)は3%程度だが、ネットアップでは25%にも達している」という。ユーザーに対する選択肢の提供としてのHDD置き換え型SSDのサポートだが、実際には大多数のユーザーがFlash Cacheを選択しているともいう。

 Unified Connectは、インテル、シスコと共同で開発した新しいストレージインターフェイスで、「業界初となる、FCoE、CIFS、NFS、iSCSIのすべてのプロトコルに対応する唯一のストレージインターフェイス」だという。単一の接続ですべてのプロトコルに対応するため、ケーブリングを大幅に簡素化できる。これは、運用管理負担を軽減することにつながる一方、ラック背面のエアフローの改善にもなるため、冷却効率の向上、ひいては消費電力の削減、CO2排出量軽減にも役立つという。

 こうした機能を背景に同氏は、「従来のITインフラはコストセンターと見なされており、ビジネスのために必要な機能を担う一方でそこに対する投資は単なるコストでしかなかったが、共有型ITインフラに移行することでプロフィットセンターとして利益を生むことが可能になる」とした。

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