GUIでS.M.A.R.T.情報をチェック
現在販売されているHDDの大半は、自己診断機能(S.M.A.R.T.)に対応している。この情報にアクセスすれば、HDD内部に記録された電源投入回数や使用時間のほか、読み書き不能になったセクタ数や書き込みエラー率など、HDDの現在を知らせてくれる。
S.M.A.R.T.に対応した管理ツールとしては、OS Xに標準装備の「ディスクユーティリティ」が挙げられる。対象のディスク(パーティションにあらず)を選択すれば、ウィンドウ下部の「S.M.A.R.T.状況」にHDDを検証した結果が表示される。しかし、前述した具体的な情報は一切表示されず、ユーザーには”○か×か”しかわからないのが難点だ。フリーウェアの「SMARTReporter」も、この点では大差ない。
ちなみに、S.M.A.R.T.のデータから推測可能なHDDの障害発生確率は6~7割程度だという。しかし、リード/ライトのエラー率が上昇したり、不良セクタの数が増えれば、HDDの寿命が近づきつつあると考えても差し支えないはず。あえていうならば「天気予報」に近い存在だが、HDDの換装を検討し始めたり、バックアップの間隔を縮めたりするときの貴重な資料となりうる。障害発生時のダメージが大きいだけに、"○か×か"で済ませるのは乱暴な話だろう。
S.M.A.R.T.をもっと詳しく
OS Xでは、IOKitフレームワークによりS.M.A.R.T.情報へのアクセスがサポートされている。しかし、HDDに搭載されたコントローラのサポートは、アプリケーション側で対応する必要があるため、最新のベンダー情報に通じたものを選択しなければならない。
詳細なS.M.A.R.T.情報にアクセスする、という今回の目的にかなうアプリケーションのひとつが「S.M.A.R.T. Monitoring Tools(smartmontools)」だ。GUIは装備されていないが、S.M.A.R.T.情報はテキストベースのため、CUIでも十分に役割を果たせるはず。まずはこちらからソースコード(9月21日時点の最新版はバージョン5.39.1)をダウンロードし、以下の要領でコンパイルしてほしい。
$ tar xzf smartmontools-5.39.1.tar.gz
$ cd smartmontools-5.39.1
$ ./configure
$ make
$ sudo make install
smartmontoolsの使い方だが、ターミナル上で「smartctl
」コマンドに適宜オプションや引数を与えて実行すればOK。最低限必要な情報は、全情報を表示する「-a
」オプションに、対象とするHDDのデバイス名だ(df
コマンドで確認可能)。OS Xの起動ディスクは、通常は「/dev/disk0
」として認識されているはずなので、以下の要領でコマンドを実行すればいいだろう。なお、smartctlコマンドは/usr/local/sbin
ディレクトリーへインストールされるため、フルパスを指定するかPATH環境変数を設定する必要があるので念のため。
$ /usr/local/sbin/smartctl -a /dev/disk0
「smartctlコマンドで表示される主要S.M.A.R.T.情報」
項目 | 説明 |
---|---|
Current_Pending_Sector | 不安定なセクタの数 |
Multi_Zone_Error_Rate | セクターに書き込みしたときのエラー発生率 |
Offline_Uncorrectable | 修復不能なセクタにアクセスしたときのエラー数 |
Reallocated_Sector_Ctl | Read/Write時にエラーが発生し、代替された不良セクタの数 |
Reallocated_Event_Count | 不良セクタから予備領域へデータが移された回数 |
Seek_Error_Rate | 磁気ヘッドのシークエラー発生率 |
Temperature_Celsius | HDD内部の温度 |
筆者紹介──海上忍
ITジャーナリスト・コラムニスト。アップル製品のほか、UNIX系OSやオープンソースソフトウェアを得意分野とする。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザーにして大のデジタルガジェット好き。近著には「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊、Amazon.co.jpで見る)など。
この連載の記事
-
第187回
iPhone
NFCの世界を一変させる!? iOS 11「Core NFC」の提供開始が意味するもの -
第186回
iPhone
Appleと「4K HDR」 - iOS 11で写真/動画を変える「HEIF」と「HEVC」 -
第185回
iPhone
iPhone 7搭載の「A10 Fusion」「W1」は何を変えるか -
第184回
iPhone
オープンソース化された「PowerShell」をMacで使う -
第183回
iPhone
アップル製デバイス連携の鍵、「Continuity」とは? -
第182回
iPhone
DCI-P3準拠へと歩むiPhone/iPad - WWDC基調講演で秘められた新技術は、ここにある(2) -
第181回
iPhone
WWDC基調講演で秘められた新技術は、ここにある(1) -
第180回
iPhone
WWDC直前、買い替え前にマイMacのココをチェック -
第179回
iPhone
私がiTunesを使わなくなった5つの理由 -
第178回
iPhone
今あえてiPhone「Live Photos」を知る -
第177回
iPhone
「Windows Subsystem for Linux」はOS Xのライバルとなるか? - この連載の一覧へ