3分野に対応する製品も続々
具体的に、それぞれの事業領域に対応する新製品についても紹介が行なわれた。まず、インフラストラクチャの分野では、クラウド環境に対応する「vCloud Director」が発表された。vCloud Directorは、クラウド事業者等の利用を想定する最上位の運用管理ツールという性格を備える。従来の運用管理単位であった「複数のvSphereサーバーをまとめるvCenter」をさらに複数束ねてポリシーベースの管理を実現する。
また、事業者向けのツールとしての特徴を反映し、新たな要素として「マルチテナント」という概念が加わっている。vCloud Directorでは、複数のvCenter環境を統合して1つの巨大なクラウド環境を構成できるが、さらにその内部をマルチテナントに分割し、それぞれの環境の独立性を保証する機能が加わっている。従来のvSphere/vCenterでは主な用途として企業内のプライベートクラウド環境を前提としていたこともあってマルチテナントという考え方は含まれていなかったので、この点がvCloud Directorのもっとも大きな変化とみることもできるだろう。
さらに、以前から同社が取り組んでいるクラウド環境向けの標準APIであるvCloud APIも実装され、企業内のプライベートクラウドや外部事業者のパブリッククラウドとvCloud Director環境を接続し、相互に仮想マシンを移動したりといった操作も実現できるという。
ついで、アプリケーションプラットフォームに関しては、現時点ではまだ買収によって獲得としたスプリングソース(Spring Source)やジェムストーン(GemStone)の製品や技術が中心となっている。まずはスプリングソースが持つJavaアプリケーションプラットフォームが中心となるが、将来はRuby on RailsやPHPといった言語のサポートも追加し、どのようなクラウド環境でも実行できるアプリケーションを記述するためのアプリケーションフレームワークや、これらのフレームワークから利用される共通化されたプラットフォームサービスを整備していく計画だ。
最後に、エンドユーザー・コンピューティングに関しては、現時点ではVMware Viewによるデスクトップ仮想化への取り組みが中心となるようだ。ユーザーのデスクトップを仮想化することで、スマートフォンなども含む多様なデバイスからのアプリケーションへのアクセスを実現していく、という取り組みがまずは行なわれる。
仮想化市場でのプレイヤーは変わりつつある
ヴイエムウェアは、以前はIAシステム上での仮想化ソフトウェアのみに注力する技術志向の企業だったが、市場でのサーバー仮想化の順調な普及や、仮想化技術自体はすぐにコモディティ化するといった見通しもあり、エンタープライズ向けにより大きな視点からのアーキテクチャを提案する方向に事業の中心をシフトさせてきている。「IT-as-a-Service」といったメッセージからは、従来から経営者向けにITを売り込んできたIBMやHP、オラクルといった企業と同じ市場に踏み込んできたという印象もある。
ただ、同社の中核には依然として技術的なアドバンテージを誇る仮想化インフラがあることは変わっていない。仮想化インフラの優位性をそのまま上位レイヤでの事業に引き継いでいくことができるのかどうか。まずは同社自身が「仮想化の第3の波」に乗れるのかどうかが問われることになりそうだ。