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アツ過ぎる! サンフェスの開催前夜祭「イデオンナイト!」

2010年08月18日 20時30分更新

文● 電撃ホビーマガジン/吉川 大郎

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イデオンを経過して変わったこと

――最後に、藤津氏から、登壇した3人に対して「イデオンを経過してご自身が変わったことはありますか?」という質問がなされた――

福井氏:冒頭でも言いましたが、あれを観ていなければ、この仕事をやっていなかったと思います。ガンダムというものがその後シリーズになって、みんながいじることが可能になって、世界ができたということがありました。けれども、イデオンがなかったら、小学校5、6年の頃に経験したガンダムブームが去った時点で、以後のアニメは何も観ていなかっただろうから、イデオンがあるかないかで、自分の仕事の立ち位置って、全然違っていたでしょうね。それは間違いない。あそこで何かがリセットされてしまった。

湖川氏:僕は、イデオンをやらせてもらえなかったら……。お富さんにキツいことも言われたし……。見出してくれた最初の人が富野さんなんです。「お前が考えろ、お前が考えろ、お前の引き出しからモノを出せ出せ!」というわけですよ。僕はアニメを3回くらいやめようと思ったことがありましたが、イデオンはそれを止めたのではないかと思いますね。

富野氏:これは謙遜で言うのではなくて、ぼくのような人間でも今日まで生きながらえることができたということはあります。ただ、イデオン以後の30年の自分のキャリアは誇れるものではないと思ってはいます。そうは言いながら、この30年間生かさせてもらっているという意味では、やはり考えは足らなかったかもしれないけれども、あそこまで考えていてよかったというのが、この2、3年実感するところであります。

 というのは、まだ考えなければいけないところがあるとか、アニメという表現媒体を使って何かをやっていくということが、まだ自分でもできるかもしれないとも思わせてくれているし。

 さっき「死ぬまでのこと」という言い方をしたのですが、死ぬまでのことについても、アニメというものの見方だけで考えていたら、おそらくきちんとは死んではいけなかったと思われる自分が、イデオンみたいなものがあることによって、やっぱりアニメも捨てたものではないとか、こういう表現というものがデジタル時代になって、一見ものすごく変わっているように見えるんだけれども、実を言うと根本的なところでは何ひとつ変わっていないということも、自分の中で分かるようになってきた。分かるようにさせてくれたというものを、あの時に手に入れることができたのかもしれないと思っています。

 逆に言うと、それで病気になったこともありましたけれども、あと1年で70(歳)になりますが、もうしばらく生きている間、自分ができるかもしれないということを思わせてくれる。そういうものを手に入れることができたという意味では、ちょっと悔しいことではあるんだけれども、冗談めかして言っていることですが、2年後の発動編の30周年のときは1/1(イデオン)かな。(会場笑い)

 (こういうことを)ウソでも言えるというのは、やはりとても心楽しいものです。やはりこれが、エンターテイメントのもうひとつのあり方として、あっていいと思っていますので、こういう席で皆さん方とお会いさせてもらえて、お話させてもらえるという意味では、宝を手に入れることができたという意味で、本当に嬉しく思っています。

会場からの質問

――イベントもついに終盤。会場からの質問コーナーとなった。その中から2点ほど紹介する――

音楽についての印象

富野氏:音楽については、音響監督の浦上(靖夫)監督から、イデオンの曲はこれしかないということで、LPを1枚渡されました。それはカルミナ・ブラーナという曲です。それを、すぎやま(こういち)先生が受けて「あ、だったら全部分かった」と言ってくれた。ということで、全部決まった。テレビの時からそうです。プロは凄いなと思いました。それがあれば、そりゃがんばりますよというのが僕の立場でした。そういう意味で、しまったと思ったのは、「風呂敷広げすぎてしまってやばい」と(笑)。

福井氏:「コスモスに君と」(テレビ版エンディング曲)って名曲で、曲が美しいから結婚式でなんとなくピアノのリストに入っているんですよ。でもね、結婚式場で、みんな歌詞の内容を知ったら驚くだろうなあと。(会場笑い)

 冒頭から「星に捨てられ」ですからね(笑)。さらに結婚式場で「傷をなめ合う道化芝居」って(笑)。

湖川氏:音楽で言うとひとことだけ。井荻麟が好きです。(会場拍手)


作品の“区切り”について

会場から:ガンダムシリーズは「∀ガンダム」で、バイストンウェルのお話も「リーンの翼」で、一区切りがついた感があります。ここ最近、新作への意気込みを感じさせていただく一方で、区切りも付けられてきているのかなという感じがある中で、イデオンにはずっと触れずにこられている。先ほどのお話を聞いてナルホドなと感じるところはあったのですが、今後ひょっとして、もう一度イデオン、あるいはそのような感じのものに手をつけられるお考えはありますか?

富野氏:初めて聞かれた質問です。そして、この数年まったく考えていない自分を自覚しましたので、おそらく手は付けないと思います。

 というのは、最初に冗談がましく言ったのですが、「イデオン祭り」(映画上映当時のプロモーション)をやった位なので、実を言うと、あの部分を新興宗教にしようと思ったら、できてしまうのではないかと自覚するようになりました。というときに、自分はそういうものに立つ立場の人間ではありません。あくまでもこの業界の一働き手で死んでいけたらいいと本当に思っていますので、おそらく触れないと思います。

 これにはもうひとつ理由があります。最近、「無神論」というタイトルの本を読み始めました。無神論というのは、神が実在するかもしれないという想定があるから無神論であって、無神論者はひょっとしたら無神論者ではないかもしれないというロジックにつきあたります。この問題に触ると、本当に果てしなくなるという風にも思い始めているので、イデには触らないと思います。



 こうしてトークショーが終わりかけた頃、白板がおもむろに登場。その場で湖川氏の即興による登場人物の作画が始まった。描かれたのは、主人公のユウキ・コスモ、マニアに人気のある“看護婦さん”、劇中にドラマチックな登場をして儚く死んだ女性キャラ――キチ・キッチンの3名。これらの貴重な湖川氏のサイン付きイラストは、登壇者3人と参加者のじゃんけん大会でプレゼントされ、イベントは幕を閉じた。


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