市場からも待ち望まれていたPentium M
Pentium Mは「Centrino」という新しいモバイル向けブランドとあわせる形で、2003年3月に発表され、瞬く間に各社に採用されてゆく。インテルはこの採用の速さを「デザインが優れていたからだ」と自画自賛していたが、PCメーカー側は3年も新アーキテクチャーのおあずけを喰らわされていたわけで、飛びつくのも早いだろうさという気もしなくはない。
Pentium Mは同時にLV(低電圧)/ULV(超低電圧)向けの選別品もリリースしており、さらにはこれらをベースにした「Celeron M」もリリースされた。面白いのは、ソニーがこのULV版Celeronを、インテルが発表する前に先行して「バイオU PCG-U101」に搭載してきたことだ。いかに各社が低価格・低消費電力のプロセッサーを待ち望んでいたか、という証拠でもある。こうした動きはソニーだけではなかった。
特に組み込み分野では、到底Pentium 4では消費電力が多すぎて採用できず、やむなくMobile Pentium IIIを使っていたところが、一斉にPentium MやCeleron Mを採用した新製品をリリースし始めた。特に価格が低く抑えられるCeleron Mは大人気であったと言っていい。
こうして市場がある程度つかめたところで、2004年に投入したのが第2世代のPentium Mである「Dothan」である。機能的には2次キャッシュサイズが倍増した程度の違いしかないが、533MHz FSBのサポートと最大2.26GHzまで伸びた動作周波数のお陰で性能も大幅に上がった。それでいてTDPは21Wと低く抑えられていたから(2.13/2.26GHz品のみ27W)、モバイルのみならず省電力デスクトップ向けなどにも広く採用されるようになってきた。
性能という観点でも、同一周波数の「Athlon 64」とさして遜色はなかった。むしろ上回るケースもあったから、ある程度の用途までにはこれで十分であった。DothanコアのPentium MもLV/ULV向けを選別品の形で用意したほか、これをベースにしたCeleron Mも提供され、またもや広く利用されることとなった。
とはいえ、Pentium Mが広く使われるようになると、当初は想定しなかった別の要求が生まれてくるのは避けられないところ。Pentium Mの開発時期には、まだPentium 4系列の「Prescott」コアで採用されるさまざまな拡張命令は存在していなかったから、SSE3や仮想化機能「VT」などの対応は当然なされていない。また64bit拡張「EM64T」への対応も不可能だった。唯一メモリ保護「XDbit」(eXecute Disable bit)への対応が間に合っただけだ。
これは消費電力の増大に目を瞑って柔軟性を確保したPrescottと、消費電力を最小に抑えるためにギチギチに最適化をかけてしまい、そのため新機能の搭載がほとんど不可能になったBanias/Dothanという対比で見ることもできる。またこの当時は、インテル、AMDともにデュアルコア製品に次第にシフトさせてゆく方向性が出てきた。しかし当然ながら、Pentium Mではこうしたニーズに応えることもできなかった。
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