「ビジネスモデルはない」がGoogleの強み
―― Google TVはAndroidをOSとして採用します。ネット映像コンテンツはYouTube、アプリはAndroidベースということになるのでしょうか?
夏野 うーん……それはどうなんでしょう。ぼくはAndroidマーケットはそんなに流行らないんじゃないかと思ってます。いまのところ課金の仕組みも整備されていないし、返品制度もある。現状ではコンテンツプロバイダーが本気になれないですよね。
グーグルにとって、Androidは手段であって目的ではない。アンディー・ルービンのチームにとってはそうかもしれないけれど、グーグル全体にとっては広告展開をするデバイスを増やすことでしかない。Androidそれ自体にはビジネスモデルはないと彼らも言っている。
―― それは確かにグーグルのいろいろなプロダクトに共通していますよね。先日、Google日本語入力の開発チームにインタビューしたときも同様のコメントがありました(関連記事)。
夏野 でも、それでいいんです。それがグーグルの強みなんですよ。刈り取りのビジネスモデルはほかのところでできている。それが証拠に、グーグルの最新サービスはiPhone上で実現されているじゃないですか。彼らとしては、別にiPhoneからだって、アクセスさえあればそれで良いから喜んでやっている。
そう考えていくと、Google TVにおいても、「ソニーがグーグルをうまく使えるか?」が重要なんです。別にグーグルはAndroidでテレビを支配しようとまでは考えていない。テレビからもPCからのようにネット接続してもらう環境を整えようとしてるわけですから。
それを利用しない手はない。それを見越して何ができるか。たとえばソニーのエンタテインメントコンテンツを、オンデマンドで全部乗っけるとか、やり方はあるはずです。ゼロから独自に作るのではなく、道具として利用してしまった方が早いと思います。
―― Androidベースで、ソニーという観点では、ケータイ(エクスペリア)との展開と共通点、あるいは相違点はあるのでしょうか?
夏野 携帯の世界では、オペレーター(通信事業者)と一緒にサービスを作り上げていくか、インターネットのサービスをフルに充実させて、つまりiPhone型にしてオペレーターをスルーするしかない。
残念ながら、ソニー・エリクソンにはインターネットサービスが存在していないので、いくらSNSとの連携を備えていても、そもそもの電話帳サービスがないわけです。
アップルがすごいところは、iTunesを使って、ネットワークでのやりとりを、ローカルから、つまりネットにつながったPCから行なわせることで、オペレーターをスルーさせることに成功した点です。
それに対して、エクスペリアをパソコンにつないでも何も起こりません。ここが現状での決定的な違いですね。
―― テレビの場合は、オペレーターがそもそも存在していない。
夏野 そう。だからチャンスがある。
ただし、セットトップボックスタイプは別ですよ。あそこを攻略するためには、ケーブルテレビ会社との提携が重要になってくる。実際、アップルが出したApple TVも単独でやろうとしてうまくいかなかったわけですから。
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