経済的に負の効果あり
漫画はある意味、コンテンツ産業の川上に位置するものだ。漫画を原作とした映画・アニメ・ゲーム・ドラマなどは枚挙に暇がない。そんななかで漫画を規制してしまうと、コンテンツ産業全体が萎縮してしまう可能性があるだろう。さらに、漫画のキャラクター商品を扱っているおもちゃメーカーや文具系メーカーなどにも、影響が波及しかねない。
経産省は「アニメやゲームコンテンツの輸出を増やす」と言い、東京では知事を実行委員長として国際アニメフェアを行なっている。しかし、今回の都条例改正はそれらと真逆の方向を向いている。
「そもそも出版不況なので漫画は右肩上がりではなくなっているし、ゲームも売れていないし、アニメコンテンツも同様。それでも日本にはまだ層や幅の厚さがあり、海外よりアドバンテージがあるが、それを殺してしまっていいのか」(永山氏)。
文学限定の同人誌即売会「文学フリマ」では、改正が決まってもいないのに、「会場側に『区分陳列しろ』と言われた」という。「うちは文学ですよ」と言ったが、「同人誌なので」という応答だった。影響は大きく、すでにいろいろなところで過剰な自主規制が始まっているのだ。
さらにこの手の法律が怖いのは、密告や冤罪の宝庫になる可能性がある点だ。実際、海外では冤罪としか言えないことが起きている。「気に入らない人の作品を東京都に働きかけて販売を差し止めたりなど、政治的に使える可能性もある」(永山氏)。
都議に意見をぶつけてほしい
この問題で特徴的なのは、東京都だけではなく全国から熱い意見が寄せられていることだ。東京は流通の中心であるため、その影響は映像やゲームにまで波及してしまうからだ。「都議に会って見せてもらったが、FAXだけで数千枚、メールと手紙もものすごい数がきていた」という。
「改正に反対の読者には、自分の選挙区の都議に話をしてほしい」と永山氏は語る。「この問題をどう思うかと意見をぶつけたり、手紙やメールを書いて伝えることが大切」。
14日に行なわれた再審議ではかろうじて否決されたが、都側は秋にも再提出の構えをみせている。一人一人の行動が都条例改正の行方を変える可能性を持っている。
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