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ゼロから分かる東京都青少年健全育成条例改正問題 ― 第5回

呉智英氏、保坂展人氏ら都条例シンポに登壇 『非実在犯罪規制』を語る

漫画の中で犯罪を表現したらアウト!?

2010年12月13日 09時00分更新

文● 高橋暁子

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12月6日、「『非実在青少年規制』改メ『非実在犯罪規制』へ、都条例改正案の問題点は払拭されたのか?」と題された集会が開催された(主催:東京都青少年健全育成条例改正を考える会/協力:コンテンツ文化研究会)

 12月6日、いわゆる都条例問題を考えるシンポジウムが「なかのZERO」で開催された。

 開催予告から当日までの期間が短く、告知も主催と出演者たちがTwitterなどで参加を呼びかける程度だったが、当日は整理券が発券され、定員550人の会場に1600人近くが集まり、会場周辺には長蛇の列ができた。

 あふれた約1000人の参加希望者はサブ会場でのパブリックビューイングとなったが、そのサブ会場にも入れずに帰る人も出るという盛況ぶりで、この問題に対する関心の高さが伺えた。

 当日は、評論家の呉智英氏(日本マンガ学会会長)をはじめ、漫画家のとり・みき氏、作家の山本弘氏、ジャーナリストで前衆議院議員の保坂展人氏など、漫画家や識者の他、国会議員・都議の飛び入り参加も見られた。また、ニコニコ動画での生放送中継には7万人以上の来場者を記録した。

 今回は、当日のレポートと、主催者の1人である山口貴士弁護士へのインタビューをお送りする。

反対派の都議は「エロ議員」と批判された

明治大学准教授の藤本由香里氏。今回のシンポを山口弁護士と共に共同主催した

 会の開始時、主催者の1人である明治大学准教授の藤本由香里氏は、「新改正案は一見前改正案より規制の範囲が明らかになったように見えてそうではない」と集会の意図を説明。

 さらに、作家でPTA活動にも詳しい川端裕人氏の「都職員は各学校のPTAを回って改正案の意図の説明をしたが、意図のみで条文については説明しなかった」「反対派に回った都議会議員に『エロ議員』などと的外れな批判をした保護者がいたため、議員が反対しづらくなった」などの発言を紹介。

 それを証明するものとして、ブログ「空の森」の「東京都青少年健全育成条例。推進派への疑問」(http://ironyt.exblog.jp/15523806/)というエントリーを紹介。PTAの理事会に参加した際、東京都青少年治安対策本部総合対策部少年課副参事が来て、各小中学校のPTA代表の前で「不健全図書」について説明したエピソードが書かれている。

 副参事からは、明らかに18禁の作品が「『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』と同じ棚に並べてある」との説明があったという。

日本雑誌協会・編集倫理委員会委員の西谷隆史氏

 これに対し、日本雑誌協会・編集倫理委員会委員の西谷隆史氏は、「出版界は子どもに読ませたくない本を野放しにはせず、様々な取り組みをしている」と反論。

 成人コミックマーク、成人マーク、出版ゾーニング委員会、18禁マーク、小口シール止め(成人指定するほどではないが青少年が読むのは問題があるグレーなものを簡単に開けられないようにしたシール止め)など、子どもに閲覧させないための取り組みを紹介した。

 さらに西谷氏は、「小口シール止めなどは日本雑誌協会メンバー以外にも参加を促しており、いわゆるアウトサイダーも含めた取り組みになっている上、問題があれば日本雑誌協会に通報もできる」

 「なぜ11月22日になるまで新しい条文が明らかにならなかったのか。第28期青少年問題協議会の答申が元になった改正案が廃案になったのなら、第29期青少年問題協議会を立ち上げて議論すべきではないか」と疑問を呈した。

新改正案の条文は範囲が拡大される恐れ

シンポジウム共同主催者の山口貴士弁護士

 シンポジウムの主催者でもある山口貴士弁護士は、タイトルの『非実在青少年規制』と『非実在犯罪規制』が括弧付きになった理由について、「『非実在青少年』という文言は消えたが、新改正案にも“非実在青少年規制”は残っているから」と述べた。

 条文に新しく入った『刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為』という言葉には、淫行条例、売春防止法、児童福祉法違反なども含まれる。

 つまり、例えば13歳未満との性交は合意か否かにかかわらず自動的に強姦や強制説猥褻罪に当たり、18歳未満の場合には、淫行条例等が問題になるため、キャラクターの年齢の判断が必要になり、非実在青少年規制は残っていることになるという。

 しかも、刑罰法規に触れる性行為等は、キャラクターが18歳以上の設定でも規制の対象となり、前回案より範囲が拡大されていることになるという。

 「そもそも、あらゆる時代、場所を舞台としうる創作の世界を現在の日本の法規で『裁く』こと自体がおかしい。刑罰法規に触れる性行為等は犯罪だが、犯罪と犯罪を表現することは別。犯罪に関する表現を規制の根拠としてしまうと、将来、規制の範囲を幾らでも拡大する口実になってしまう」と山口弁護士は危惧する。

 犯罪には、性犯罪に限らず経済犯罪や著作権法違反なども含まれるからだ。

ギリシャ神話、古事記、旧約聖書も規制範囲内に

 今回の改正案では婚姻を禁止されている近親者間の性交等のシーンがある場合には、規制の対象となりかねないが、例えば、ギリシャ神話や古事記、旧約聖書などでも今回問題視されている近親相姦についての記述がある以上、そのようなもののコミカライズも範囲内になりかねないという。

 「恋愛していた相手と実は血がつながっていた」というストーリーや、血がつながっていなくても義理の関係同士の性交なども該当しかねないほか、「不健全図書指定に際し、法律の専門家から構成されている訳ではない青少年健全育成審議会が刑罰法規に触れるかどうかを判断すること自体の問題点もある」とまとめた。

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