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松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る 第9回

SIMロックフリーの恩恵を体感――b-mobile WiFi+L-05A

2010年06月10日 16時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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今週の1枚

【今週の1枚】b-mobile WiFiでiPhoneとiPadを接続しているところ。自分のいるところがWi-Fiポイントになる身軽さがある一方で、やはり公衆無線LANサービスのスピードの速さもまた体験することになる

 アップルがiPadのWi-Fi+3Gモデルをアナウンスした際、SIMロックフリーとしてリリースされるとスティーブ・ジョブズは語った。しかし日本で販売される製品に限ってはSIMロックがかかっていて、国内ではソフトバンク以外のSIMを使うことができない。ただ海外のキャリアのSIMは使えるとの話もあり、実質的にはNTTドコモに対するロックがかかった状態で出荷されたと言える。

 5月13日にジャーナリストの佐々木俊尚氏とソフトバンクの孫正義社長による「光の道」の対談の際、孫氏は交渉の結果アップルも納得の上で日本でSIMロックをかけた点を強調した。また「アップルとソフトバンクがエクスクルーシブな契約ではない」と語り、アップルとソフトバンクの関係を垣間見る結果となった。

 SIMロックの議論については、産業やビジネスの観点、利便性の観点など様々な角度から議論がされている。そして「SIMロックの義務づけ」方針に対する反発も強い。そこにきてiPadのSIMロックが明らかになったことで、SIMロックフリー化の実現性について、かげりが見え始めたのが今の局面と言える。

 現実問題として、高価格+付加価値のスマートフォンといった3G世代のケータイは、海外の多くのキャリアもSIMロックをかけた状態で販売奨励金を上積みすることでユーザーの手に入りやすい価格で販売している。先般アメリカでAndroid OS搭載のスマートフォンがiPhoneを超える出荷を記録したが、アメリカのキャリアであるベライゾンが「1台買ったらもう1台つける(Buy One Get One)」というキャンペーンを行なったことも大きいという。

キャンペーンでスマートフォンの契約者数を増やしたベライゾン。「1台買ったらもう1台つける(Buy One Get One)」はBOGOなどとも呼ばれ、アメリカのスーパーなどでは定番のフレーズだ

 孫氏はソフトバンクの2010年夏モデル発表会の場で「いくら商品力が優れていても、それだけでは売れる端末にはならない。我々キャリアが付加価値をつけることが必要だ」として、メーカーとキャリアの二人三脚で端末が世に受け入れられていくモデルを強調している。これは海外の事例を見ても事実だし、iPhoneもiPadも例外ではないだろう。

SIMロックのiPadで注目が集まった
SIMロックフリーのモバイル無線ルーター

 さてなにはともあれ、日本のiPadにはソフトバンクのSIMしか刺さらない。これまでドコモからは「iPad向けにSIMを提供したい」という山田社長によるコメントが報じられたが、今回もアップルのモバイルデバイスがドコモのSIMで動く姿は見られなかった。iPhoneにiPadと、僕を含むドコモユーザーは毎回社長のコメントに期待を寄せて、裏切られ続けている。戦略やユーザーとのコミュニケーションを考え直した方が良いと思う。

 それはとにかくとして、SIMが刺さらないなら別の方法が花開き始めている。それがモバイル無線ルーターで、この市場が急激に注目されるようになってきた。しかもSIMロックフリーという形も含まれている。これまでも人気があったイー・モバイルやソフトバンクの「Pocket Wi-Fi」に続き、モバイル無線ルーターの製品が広がりを見せているのだ。

 1つはバッファローが発売する「ポータブルWi-Fi」(関連記事)。NTTBPが昨年から実証実験を行なってきたものが製品化された製品だ。そしてもう一つは日本通信が発売する「b-mobile WiFi」。僕は現時点で手に入り、しかも本体だけなら価格も安いb-mobile WiFiを手に入れてみた。

バッファローの「ポータブルWi-Fi」。WAN側の回線を色々切り替えて利用できるなど、b-mobile WiFiと比べるとかなり高機能。そのぶん価格も3万円台半ばと1万9800円のb-mobile WiFiより高価になる

 b-mobile WiFiの特徴はSIMロックフリーで発売されている点。別途データ定額プランなどを契約しているSIMを用意する形になる。日本国内ではドコモ(MVNOによるサービスを含む)かソフトバンクのSIMに対応するほか、海外では現地のSIMを差して利用することも可能だ。

 モバイル無線ルーター自体を見てみると、バッテリーを内蔵したおおむね手のひらサイズの端末だ。ケータイ(3G)の電波を拾ってインターネットに接続し、さらに内蔵している無線ルーター機能によって、無線LAN基地局を作ることができる。つまり、ケータイの電波さえ入るエリアにいれば、手持ちの数台のWi-Fi対応機器をインターネットに接続することができるようになるのだ。

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